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ファッショントレンドスナップ32
ピッティ初登場のシーズ。富裕層向けアウトドアウエア&地球に優しい
バイオ生地のミックスが世界中のバイヤーやプレスから大絶賛!!

2018.10.10

写真・図版 大西陽一

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今年の6月にフィレンツェで開催されたメンズウエアの国際見本市ピッティ(正式にはピッティ ウオモ)には、世界中から1240ものブランドが出展。沖縄のシャツブランドから世界中の有名百貨店と取引をするようなナポリの老舗スーツメーカーまで、さまざまな顔ぶれがそろっています。そのなかで初参加ながら、異彩を放っているブランドを発見しました。

シーズ(SEASE)というブランドで、ひと言で言えばアウトドアスポーツウエアのブランド。しかしそのコンセプトやウエアの作り込みは、日本人が想像する様なナイキやザ・ノース・フェイスなどとはまったく違うレベル。そのため目の肥えたバイヤーや有名な雑誌のエディターが次々とブースを訪れていました。

今回ピッティ会場で創業者であるフランコ・ロロ・ピアーナさんに日本のメディアでは初のインタビューが実現しました。

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インタビューを始める前に展示商品を目にした印象は「なぜ創業間もないブランドがこんな規模でやれるのだろう? それも商品を一瞬見た感じは、既存のアウトドアブランドとそれほど変わらない雰囲気なのに……」

ブースに現れたフランコ・ロロ・ピアーナさんからコンセプトやその製品のこだわりを聞くと、このブースのにぎわい方が納得でき、私の疑問もスッキリ解決。

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「私は、ロロ・ピアーナ家という歴史あるファミリーのもとで常に自然と接してきました。夏ならセーリング、冬ならスキーといったように。ただそこで着るウエアに満足ができませんでした。機能的であっても地球環境に負荷を与える化学繊維を使っていたり、天然素材で肌さわりはいいけれど、厳しい天候では機能に不安があったり耐久性に限界があったり。そのうえ、自然の中だけではなく都会の生活にも溶け込むデザインがほとんどありませんでした。そこで、このブランドを立ち上げたのです」

確かに、そうしたウエアはいままで私も見たことがないし、他に類を見ない斬新なコンセプトである。しかしそれを現実化すれば、有名ブランドと並ぶような高額商品になることは間違いないし、その価値を理解し購入でるのはひと握りの富裕層に限られるはず。その点をフランコ・ロロ・ピアーナさんに尋ねてみると。

「創業は2017年で、今回のピッティに初出展しました。この歴史がないブランドの斬新なコンセプトを理解できる販売店は世界でも限られていると思います。ただし、時代の流れは確実に変わってきています。新しい富裕層のなかには、従来のカシミヤやシルクといった高級繊維を使うのではなく、地球に優しい繊維を使うことに満足感を得る人が増えてきています」

なるほど、ハリウッドのセレブに排気量の大きい車よりハイブリッドな車のほうがスマートだという考えが浸透しているように、服の価値観も確実に変化していることを彼は言いたいのでしょう。

それに最近の車業界は、それまでSUV(多目的スポーツ車)とは無縁だったイギリスのロールスロイス「カリナン」、イタリアのランボルギーニ「ウルス」といったメーカーから2000万円超えの車が発売されています。いままでのSUVの車は、デザインや作りが質実剛健で4WDの特性を生かしてワイルドな自然の中を走るというコンセプトのものが中心でしたが、今話題になっている車は、大自然の中のキャンプから都会のパーティーにまで乗りこなす新世代のライフスタイルに合ったものになっています。こうした高級SUVの登場とこのブランドの創業は共に時代のニーズと言ってもよいのかもしれません。

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「シーズを代表するファブリックにサンライズというものがあります。この生地はウール70%、バイオ ベース ナイロン30%で透湿撥水機能をもたせています。生地を手に取って見ていただくとよくわかるのですが、ソラーロ(英語ではサン クロス)というイタリアの伝統的な織りです」とフランコ・ロロ・ピアーナさんが生地を手に取り解説していただいた。

バイオ ベース ナイロンは、植物原料から作られたナイロンのことで地球持続性を考えたエコ繊維。これとウールを使ってトレンチコートやスーツによく使われているソラーロに織り上げるという発想は、既存のアウトドアブランドにはできないもの。こうしたことができるのは、彼のファミリーが長らく高級織物業に携わっていたから。

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上のイラストは、服と一緒に展示されていたもの。 私はそれを見てすぐに、1990年代にカリフォルニアのパタゴニアの本社を訪れたときに見かけた、ペットボトルのリサイクルを説明したボードを思い出しました。同時に、シーズはパタゴニアが踏み出さなかったラグジュアリー ☓ エコロジーをミックスした新世代アウトドア スポーツの分野を目指していることが明快に伝わってきました。

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上の写真はカーボンフレームの自転車にシーズの服を着たシーズのスタッフ。こうしたシティーカジュアルもコーディネートできるのがこのブランドの真骨頂。

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こちらは、ステンカラーコート。表面はリネン素材で、その内側にアウトドアウエアで使われている機能フィルムが張られています。ちなみにこちらで1095ユーロ。1ユーロ140円で計算すると15万3300円。

現在シーズはミラノのおしゃれなエリアとして有名なブレラ地区とサルディーニャ島の高級リゾートに店舗があります。日本での発売は未定ですが、パタゴニアのようにブランドの規模を大きくすることなく物作りのコンセプトを貫けば、日本での販売の可能性もそう遠くはないはずです。

プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。

Photograph & Text:Yoichi Onishi

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