旅と暮らし

2018年イチ斬新な映像体験が、あなたのSNSに警告する
映画『search/サーチ』
[美しき映画ソムリエ]

2018.10.15

2018年イチ斬新な映像体験が、あなたのSNSに警告する<br>映画『search/サーチ』<br>[美しき映画ソムリエ]

自分の最大の理解者とは、果たして誰なのだろうか。

ひと昔前は、「本棚」をのぞけばその人がよく見えてくる、なんて表現があったけれど、いまや自分の分身とは間違いなくスマートフォンやPCであろう。就活や転職、人生のさまざまな局面で自己分析を求められた際も、まず分析すべきは、自分のパソコンの中かもしれない。

10月26日に公開される『search』は、すべてがPC画面の中で起きてしまう革新的な映画だ。とにかくパソコンの画面からひとときも離れないで物語が進行するダイナミックで発明的な映画なのだ。

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カリフォルニア州に住む主人公デビッドの愛娘が突然、失踪してしまう。緊急事態を迎えたデビッドは、初めて娘をパソコンで検索してみる。すると娘の生活スタイルは、父が認識していたものとはまったく違っていた。友達はいない。月謝を払っていた習い事もやめている。

──初めて知る、娘の闇。

SNSの中、ネットショッピングの記録、銀行口座、友人たちとの会話記録といったあらゆるPCでできることの要素のどこかに失踪の手がかりが残されているのではないかと父親は娘捜しに奔走する。

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「SNSを何もやっていない……」そんな人を見つけるのが難しい現代。これまでも人間の裏の顔がSNSの、フィルターを通して見えていく『白ゆき姫殺人事件』(2014)や『何者』(2016)、過激化するオンラインゲームの世界を描いた『nerve』(2017)、巨大なソーシャル・ネットワーキング・サービスの脅威を題材にした『ザ・サークル』(2017)。

どれも希薄化するコミュニケーション時代を反映し、私達に新時代の脅威と気持ち悪さを残し、話題をさらってきた作品群が存在してきた。

でも本作の圧倒的な見どころとは、そういったSNSの不気味さを押さえながらも、映像手法のすごみだ。革新的な見せ方こそが大いなる特徴であった。パソコンの画面だけで物語が展開し完結していくサマは、もはや快感さえ覚える。PC画面を蚊帳の外からのぞいているだけの状況にもかかわらず、説得力のあるストーリーが進行していくのだ。

例えば、スリープモードのpc画面にかかってくる着信音や、私たちも普段よく耳にするなんてことのないパソコンの起動音すらも緊迫感のエッセンスと化している。そういった細々とした演出にも感嘆とすると同時に、知らない人のパソコンをこっそりではなくじっくりとのぞいてしまった……。そんな新しい体験を味わうことができる。

SNSの広がりとともに、増えていった闇は多く存在する。今年はインスタ映えのために100万円の借金を作った女性、崖や足元の安定しない場所での写真撮影を決行し死亡事故につながった若者、また目の前のリアルな人物に向き合えずSNS内の「いいね」の数でしか承認欲求が満たされない人が存在することが明らかとなったり……。挙げようとすればするほど、ネガティブな話題が取り上げられ際立ってしまっていた。

でも、『search』を見ると思い出す。他人を理解することは難しいけれど、大事にしたい存在に歩み寄る方法もSNSにはあったことを。どれだけ対峙しても、すべてを分かり合えないことがあるのが人間だ。そんなときに一歩踏み込み、相手のSNSを研究することがひとつの得策だったことを思い出す。

食べ物の写真から好きそうな手みやげを選んだり、どんな本を読んでいるか知って会話のネタを見つけたり。仕事における話題作りにもいかに有効か。SNSが始まった当初の相手ありきのポジティブな使い方を思い出した。

最近のSNSの在り方は、すべての人に言えることではないけれど「自分を満たすもの」にシフトしすぎているように思える。自己顕示欲を満たすもの。満たされた自分をアピールするもの。そんな使い方からいったん、立ち止まることができるかもしれない。大事にしたい人を、より深く知るためのもの。この感覚を恥ずかしながら、私自身も久々に思い出したのである。

また、パソコンで使える機能の振り幅も参考になる。どんなことがPC画面でできるのかも同時に学べるのも見応えがあった。主人公のマウスの動きを通して改めて学習できるのだ。PC教室の体験授業を受けたかのようで、はからずもパソコンのスキルアップにもつながるかもしれない。

映画館のスクリーンが、世界でいちばん大きなパソコンの画面に変化する。そんな未知の体験を、この芸術の秋にこそしてみてはいかがでだろうか。

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『search/サーチ』
公開日:2018年10月26日(金)
原題:Searching
監督:アニーシュ・チャガンティ
製作:ティムール・ベクマンベトフ(『ウォンテッド』監督・『アンフレンデッド』製作)
脚本:アニーシュ・チャガンティ&セブ・オハニアン
出演:ジョン・チョー(『スター・トレック』シリーズ)/デブラ・メッシング(「SMASH」「ウィル&グレイス」)/ジョセフ・リー/ミシェル・ラー

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