旅と暮らし

迫力の歌声で熱狂を届けるレゲエクイーンが
2018年の終わりをパワフルに締める

2018.11.30

写真・図版 内本順一

写真・図版

アレサ・フランクリンが亡くなって彼女の作品を聴き返していたとき、『アレサ・ナウ』(1968年)で取り上げた「小さな願い(I Say a Little Prayer)」(バート・バカラックとハル・デヴィッドの手による曲で、1967年にディオンヌ・ワーウィックが初めて歌ってヒット)をダイアナ・キングがカヴァーしていたことを思い出した。ダイアナは2ndアルバム『シンク・ライク・ア・ガール』(1997年)でその曲を取り上げ、それはジュリア・ロバーツ主演の映画『ベスト・フレンズ・ウェデング』で使われてサントラ盤にも収録。そういえばダイアナは幼少の頃からアレサに憧れていたと言っていたが、その死をどう受け止めたのだろう。そんなことをふと考えた。

「小さな願い(I Say a Little Prayer)」は映画の評判のよさもあって世界的なロングヒットとなったが、ダイアナ・キングの代表曲と言えば、それ以上にまずなんといっても「SHY GUY」だろう。レゲエのリズムとメロディアスなR&Bを融合させたトラックの上で、ダイアナの情熱的な歌唱とレゲエフロウのラップが迫力を伴って転がっていくその曲は、全米シングルチャートで13位、全英シングルチャートで2位を記録し、日本でも特大ヒットとなった(J-WAVE始め日本全国のラジオチャートで軒並み1位)。

因みにこの曲はウィル・スミスの初主演映画『BAD BOYS』のサントラ盤に収められたことで火がついたわけだが、そもそもダイアナの名が世に知られることとなったのはそれ以前に映画『クール・ラニングス』のサントラでボブ・マーリィのカヴァー「STIR IT UP」を歌っていたから。当時のSony Music(米Columbia Records)は映画のサントラ盤に続けてプッシュする方法でダイアナを売り、彼女はしっかりそれに応えて結果を出していったわけだ。

改めて書いておくと、ダイアナ・キングは1970年11月、ジャマイカ(スパニッシュタウンのゲットー)生まれ。5歳から教会でゴスペルを歌っていたが、「何しろ厳しい家庭だったので、私は反発して13歳のときに家をとび出したの」。そして「生活するためにクラブとかで歌い始めた。初めて自由を感じたわ。そのときにいろんな歌い方を試して、16~17歳のときにはもう私には歌しかないって思うようになっていた」。

ジャマイカの観光地オーチョ・リオスのホテルで歌手生活をしていたときは、観光客相手にポップスやR&Bの有名曲を歌っていた。「そこではレゲエは歌わせてもらえなかった。でもロスのクラブでレゲエを歌える仕事があればそっちに行って歌ったりしていたから、それに関するストレスは感じてなかったわ。私は歌うことそのものに喜びを感じていたから」。

歌唱力が評判となり、その後ダイアナはシティ・ヒート・バンドというレゲエグループに2年ほど参加。そのときにプロデューサーのハンデル・タッカー(マキシ・プリースト、フージーズほかの作品に関与)から誘われてソロとしてのデモ作りを始め、また1992年にはシャバ・ランクスの欧米ツアーにコーラスで参加したりもして、それが評価に繋がりレコード契約。前述の『クール・ラニングス』サントラ盤参加から本格的なキャリアがスタートした。

信念を貫き、自分らしさを表現に反映

筆者はダイアナに過去3回インタビューした。初めて会ったのは1995年。「SHY GUY」を収録した1stアルバム『タファー・ザン・ラヴ』をリリースしたタイミングで、そのときは上記の発言に加え、こんなことも言っていた。「私はいつだってほかのシンガーとは違う色を持っていたい。ほかの誰かが自分と比較されるのはいいけど、自分がほかの誰かと比較されるのは嫌」「いま一番気に入ってるアーティスト? ダイアナ・キングね」。

そんなふうに自信に満ちた女性だった。2度目に会ったのは1997年で、「SHY GUY」路線の「L-L-Lise(ライズ)」や「小さな願い(I Say a Little Prayer)」を収録した2ndアルバム『シンク・ライク・ア・ガール』を完成させたタイミング。「(1stアルバムが世界的にビッグヒットとなったことで)2ndアルバムに対してのプレッシャーがのしかかって眠れない夜が続いた」と言う一方、結婚して子供ができたことから「以前より責任感というものをちゃんと持つようになった」とも話していた。また音楽的には「いろんな音楽を混ぜながらも、改めて自分のルーツであるレゲエをしっかりやらなきゃと思うようになった」とも。

3度目に会ったのは少し間があいて2002年。マドンナが主宰し、アラニス・モリセット、ミシェル・ンデゲオチェロ、ミシェル・ブランチらが所属していたレーベル、マヴェリック(日本はワーナー)と契約して、5年ぶりの3rdアルバム『リスペクト』をリリースするときだった。そのときはもう離婚してふたりの子どものシングルマザーになっていたが、「マヴェリックという新しいホームに移り、新たな活動を始められることにワクワクしている。こうして第2章をスタートさせる機会を持てるアーティストは限られていると思うし、このチャンスを活かしてポジティブに前進していきたい」と話していた。アメリカでは結局発売されなかった『リスペクト』はしかし、メロディックなシングル「サマー・ブリージン」を始め、レゲエとR&Bの融合の仕方もより熟成されて確かな進化が見られた盤だった。

そこからまた少し時間をおいて、2007年からは自身のレーベル「ThinkLikeAgirl」で活動。2010年には4枚目のアルバム『ウォリアー・ガール』がワーナーから出て、その内容を少しばかり変更した『Agirlna meking』を2011年に自主で再リリース。インド音楽を大胆に取り入れた「Yu Dun Kno(feat.Gunjan)」に始まり、マイケル・ジャクソンに捧げた「MI-CHA-EL(for Michael Jackson)」までかなり多彩な内容となったそのアルバムが、今のところの最新作となる。

そんなダイアナは、2012年に自身の公式Facebookでレズビアンであることをカミングアウト。ジャマイカで初のLGBTアーティストとなった。ジャマイカは同性愛嫌悪の非常に強い国だが、それでも彼女は「そうすることが正しいと魂が感じているから」とFacebookに書いていた。また、ある時期からタトゥーも増えた。初めてインタビューしたときからそう思っていたが、やはり彼女は自分に正直に生き、誰にどう言われようが自分らしさを貫いて表現にもそれを反映させながら生きている女性なのだ。

さて、2011年発表作以降も定期的にアジアツアーを行ない、度々来日公演を行ってきたダイアナが、今年の終わりにはビルボードライブで公演を行なう。東京は12月29日。大阪は12月31日のカウントダウン公演だ。迫力あるヴォーカルは何度聴いてもやはり圧倒されるし、必ずや観客全員を椅子から立たせて躍らせるパフォーマンスは何度味わってもカラダが熱くなるもの。サービス精神も旺盛なシンガーであるゆえ、「SHY GUY」などみんなが聴きたい曲も必ずや歌ってくれるに違いない。楽しく踊って2018年を締めたければ、ぜひ。

プロフィル
内本順一(うちもと・じゅんいち)
エンタメ情報誌の編集者を経て、90年代半ばに音楽ライターとなる。一般誌や音楽ウェブサイトでCDレビュー、コラム、インタビュー記事を担当し、シンガーソングライター系を中心にライナーノーツも多数執筆。ブログ「怒るくらいなら泣いてやる」でライブ日記を更新中。

Diana King
ダイアナ・キング

【東京公演】
公演日/2018年12月29日(土)
1st stage Open 15:30 Start 16:30
2nd stage Open 18:30 Start 19:30
料金/サービスエリア 10,000円 カジュアルエリア 9,000円(カジュアルエリアのみワンドリンク付き)
問い合わせ/ 03-3405-1133
所在地/ 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガーデンテラス4階

【大阪公演】
公演日/2018年12月31日(月)
    1st stage Open 18:30 Start 19:30
    2nd stage Open 21:30 Start 22:30 ※2nd stageはカウントダウンショーです
料金/1st stage:サービスエリア 10,000円 カジュアルエリア 9,000円(カジュアルエリアのみワンドリンク付き)
   2nd stage:サービスエリア 12,500円 カジュアルエリア 11,500円 ※全席グラスシャンパン付

問い合わせ/ 06-6342-7722
所在地/ 大阪府大阪市北区梅田2-2-22 ハービスPLAZA ENT 地下2階

その他詳細は下記より
http://billboard-live.com/

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