旅と暮らし

世界遺産の街で、中世からの歴史を紡ぐホテルに泊まる

2018.11.30

大石智子 大石智子

世界遺産の街で、中世からの歴史を紡ぐホテルに泊まる

Hotel Copernicus(ホテル コペルニクス)
ポーランド/クラクフ

ポーランドの古都クラクフは、散歩するのに理想の街

ポーランドで絶対に行ってみたかったのが、古都クラクフだ。そこはポーランドで最も歴史ある都市のひとつであり、11世紀半ばからは約550年にわたり首都であった地。

街を歩けば、クラクフの長い歴史を感じられる。お城も教会も中世のころのままで、ポーランドで初めてできた大学もある。旧市街はユネスコの世界遺産にも登録され、中央広場に出れば周囲の建物がすべて美しい! 小ぢんまりしたカフェも趣があって、のんびり散歩するのに理想の街なのだ。

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通りの先に見えるのは、“ポーランドで最も美しい教会”と言われる聖マリア教会。
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ハイテクと対極にある写真屋さんや本屋さんがあるのも新鮮。建物の古さもいい。

なぜクラクフに古い建物が多く残っているかといえば、第二次世界大戦中にドイツ軍の司令部が置かれ、皮肉にもドイツ軍からの攻撃を免れたから。そういうわけで、一度壊滅して再生したワルシャワとは異なる街並みとなっている。

そして、クラクフはアウシュビッツを目指す人の拠点ともなる。私もクラクフに滞在しているあいだに、バスで1時間半かけてアウシュビッツを訪れた。ちなみにアウシュビッツに行く予定がある人は、唯一の日本人公認ガイド、中谷 剛(なかたに・たけし)さんの予約を入れるのがおすすめ(検索で探した中谷さんのアドレスに直接メールで依頼をした)。中谷さんのガイドがあるかないかで、体験は大きく変わっていたといまも感じている。

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クラクフ旧市街を囲むように広がるプランティ公園。30もの小さな庭からなる、緑豊かな市民憩いの場。

「前置きが長くなったが、私はクラクフが好きなのだ。そんな街でどこに泊まったかといえば、「ホテル コペルニクス」。以前、ルレ・エ・シャトーのブックを見ていた際に、ポーランドに行く気でマークしていたホテルである。

ルレ・エ・シャトーはフランスで設立された、世界各国の一流のホテルとレストランのみが加盟できる組織。「ホテル コペルニクス」は、ポーランドで初めてルレ・エ・シャトーに加盟したホテルだ。

あの天文学者も、かつて泊まったことのある建物へ

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「ホテル コペルニクス」は修築ののち、2000年にオープン。

古都の宿とするにふさわしく、「ホテル コペルニクス」の歴史も深い。もとをたどれば15世紀に司教たちの住居として使われていた建物。なんと、地動説を唱えたポーランドの天文学者、ニコラウス・コペルニクス(1473〜1543年)が宿泊したこともある。だから、この名前だったのか!

ロケーションは、旧市街のなかでもひと際クラシカルな雰囲気が漂うカノニチャ通り。レンガ造りのエレガントなたたずまいと、ルレ・エ・シャトーの旗がホテルの目印だ。エントランスをくぐると、小さく愛らしいレセプションがあり、その先は吹き抜けが気持ちいいダイニング。

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3階の廊下から見下ろす1階のダイニング。
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1階のダイニングから見上げた柱と天井が、ちょっと『天空の城ラピュタ』っぽい。

中世から続く建物は緑が多くしつらえられ、ガラスの天窓からは太陽の光が気持ちよく降り注ぐ。ジブリの世界に出てきそうな小城ともいえ、宿泊すれば、パブリックスペースをリビングのように使うことができる。

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    客室には書斎のようなデスクもあった。
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    扉の中は、少々変わった形をした大理石のバスルーム。

客室は計29室という小さなホテル。どの部屋も前述の吹き抜けに面し、朝に窓を開くと1階からショパンが聴こえてきたのが、いい思い出。その曲を耳にしながらベッドで二度寝したのは至福の時だった。

壁には他のクラシックホテルでも見たことのないようなフレスコ画が描かれ、ここは本気で中世のままだと実感する。また、ベッドフレームも年代もので、しびれる渋さ! 世界遺産の街クラクフなのだから、こうでなくちゃという内装だ。

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古風な艶っぽさを放つ廊下。
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屋上のテラスに出れば、クラクフのシンボルであるヴァヴェル城を眺められる。

地下のプールは、かつてワインセラーとして使われていたこともあったとか。中へ入ると、レンガのアーチにむき出しのパイプ、少し暗めのライティングやキャンドルがあり、異世界に迷い込んだ気分になる。天井のレンガを見つめてただ浮かべば、まさに心が静まる。

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プールは決して広くはないが、泊まった際は常に貸し切り状態だった。
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プール横のリラクゼーションスペースも、渋い岩壁でステキ。

「ホテル コペルニクス」は“クラクフのなかでは”いちばん高級なホテルであり、私はそのバランスがツボだった。クラクフとは、落ち着いた歴史都市で、すべてがなんとも慎ましい。そんな街に溶け込む5つ星ホテルでは、静かなラグジュアリーを感じることができる。1泊2万円代からという価格帯も無理がなくてよかった。

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朝はホテルから徒歩1分の大衆食堂「Bar Mleczny Pod Temida」でスープを味わった。実はポーランドはスープ大国で、この店は朝9時からスープを提供。

時にはトレンドに縛られず、歴史を感じる旅が、かえって刺激的だ。そういうテンションを感じると思う人は、クラクフを目指していただきたい。その旅のなかで、ホテルでの時間にもこだわるのなら、ぜひ「ホテル コペルニクス」へ。そこでは、過去の趣のなかでのんびりくつろぐことができる。それはとてもぜいたくなことだと、過ぎたあとに実感が増している。

Hotel Copernicus
www.relais.com/copernicus
ルレ・エ・シャトー日本予約センター
0800-888-3326

プロフィル
大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、年に10回は海外に渡航。タイ、スペイン、南米に行く頻度が高い。最近のお気に入りホテルはバルセロナの「COTTON HOUSE HOTEL」。Instagramでも海外情報を発信中。

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