旬のおすすめ
この彼女(ひと)から、買いたい。
ナイジェル・ケーボン ウーマン 根石佳奈さん
2018.12.06
昨年の夏、某誌の取材でちょうどロンドンファッションウィークが開催されているロンドンに行って来た。フィレンツェで開催されているピッティウォモほどの派手さはないが、この時期のロンドンを歩いていると、街のそこかしこで開催されているロンドンコレクションや展示会の会場で日本から来ている業界人とお会いする。
コベントガーデンの「ナイジェル・ケーボン アーミージム ロンドン」で開かれていたナイジェル・ケーボンの展示会も、ショップの前の道路にまで人が溢れるほど大盛況で、顔見知りの日本の業界人と何人も挨拶を交わした。
ロンドンのナイジェル・ケーボンの展示会で、海外のなみいるおしゃれな業界人にまじってひときわ目立っていたのが、葡萄のツルで編んだ手提げバッグを持ち首からライカを下げて80sのアルマーニの麻のスーツを着こなしていたY氏であった。彼は「おしゃれ変態」という名誉ある褒め言葉がつくほどの服好きで有名なファッションエディターである。
帰国後、たまたまY氏のブログで「僕のベストドレッサー」という実に読みごたえのある記事を拝読した。ご自慢のアンティークのライカで撮った取材で巡った世界各国で見かけたファッショニスタたちを、独断と偏見で選んでベストテン形式で発表している。
さすがはファッション変態のY氏。これがそんじょそこいらのファッションスナップで撮られるような有名ファッショニスタ連中は上げておらず、ロンドンの街角でスナップした、いい塩梅にバラクータのG9を着こなしているタクシードライバーや、ミラノのスーパーマーケットで見かけたよれよれのコットンのスーツを着こなしているお爺さんなど、スコットシューマンも顔負けのハイレベルなセレクトなのだ。
そんなY氏がセレクトしたハイレベルな世界のベストドレッサーベストテンで、唯一、レディスで第8位に選ばれているのが「ナイジェルガール」だ。ロンドンのコベントガーデンの展示会場にいた、ナイジェル・ケーボンの女性スタッフたちである。
ちなみにこの「ナイジェルガール」という呼び方は筆者が名付けた。いやはやなんともグヤジイやら羨ましいやら、デザイナーのナイジェル・ケーボン氏はそのフレンドリーな人柄から、世界中どこへ行くにも若くて可愛くておしゃれな女性のスタッフや友人を同伴しており、ナイジェルのまわりはいつも素敵な美女たちで囲まれている。さながら彼女たちは007のボンドガールのようで、ナイジェルガールと名付けたのだ。
このナイジェルガールたちをさらに可愛く見せているのが、「ナイジェル・ケーボン ウーマン」の服だ。件のファッションエディターのY氏も「とっても無骨な服なのに(だからか?)、ナイジェルを着た女性は本当に可愛く見えます」と述べている。
そうなのだ、ナイジェル・ケーボンのコレクションはメンズもいいが、無骨なミリタリーティストのメンズのアイテムをアレンジしたウイメンズのコレクションはさらにいい。
そもそも筆者は、鈴木大器氏の「FWKバイエンジアドガーメンツ」もしかり、ゴリゴリのメンズブランドのデザイナーが手掛けるレディスはむしろメンズよりも格好いいと思っている。そうしてそれを着こなしている女性はさらに格好良くておしゃれで、もっと好き。ナイジェルガールはまさにその良いお手本だ。
さて、いささか前置きが長くなってしまったが、そんなおしゃれで可愛いナイジェルガールが日本にもいるのである。中目黒のナイジェル・ケーボン アーミージムから目と鼻の先にある目黒川沿いにオープンした「ナイジェル・ケーボン ウーマン アーミージム中目黒」に行けば、彼女たちといつでも会える。え、レディスのショップなんて入りづらいですか?
「ナイジェル・ケーボン アーミージムでメンズを見てから、そのあとこちらにいらっしゃるカップルのお客様も多いですから、全然大丈夫ですよ」
そう言って、チャーミングな笑顔でわれわれを安心させてくれたのは、根石佳奈さん。今シーズンの新作の1920年代の空軍のフライングスーツをベースにしたコットンサージのワンピースドレスがとっても似合う、笑うとえくぼか可愛い中目黒のナイジェルガールだ。
スタッフ募集の告知を見て、すぐに入社を決めたという佳奈さん。いまは毎日ショップに立って接客をするのが楽しくてしょうがないとか。
しかしナイジェル・ケーボンの服は、やれ第二次大戦で着ていた服からインスパイアされたデザインだとか、やれファブリックがどうしたのとか、どのアイテムにも蘊蓄(うんちく)とスペックの知識が必須であり、そこがまたこのブランドの魅力でもある。失礼ながら、佳奈ちゃん(またまたもうこう呼んじゃいます)はそれを詳しくお客さんに伝えることができるのであろうか。健気にナイジェル・ケーボンの無骨なアイテムをおしゃれに着こなしている小柄な彼女を見ると、オジサンの筆者はもう心配で心配でなりません。
「正直、毎日猛勉強しています(苦笑)。昔からナイジェルを着ていらっしゃる男性のお客様から逆にいろいろと教えていただいたりもします。英国製をメインにしたオーセンティックラインと、日本製をメインにしているメインラインがあるのですが、何年も着込んで古くなってからも素敵ですよね。私のように小柄な方はあえてオーバーサイズを着るのも可愛いと思います」
佳奈ちゃんの隣で、プレスの鈴木柊子さんがニコニコしながらそれを聞いている。もちろん彼女も、今シーズン大人気の1920~30年代のヴィンテージドレスをモチーフにしたデニムドレスをおしゃれに着こなしているキュートなナイジェルガールだ。
今シーズンのナイジェル・ケーボン メンズのお薦めコーディネートを教えてもらうと、コーデュロイのホスピタルジャケットとベストにメディカルパンツを合わせたスリーピースの着こなし。「ナイジェルをそんなふうに着こなしている方って素敵です」とのことです。
中目黒のナイジェルガールも、ロンドンのナイジェルガールに負けず劣らず可愛いのだ。それにしてもナイジェル・ケーボン氏がウラヤマジイ。筆者もオーバーオールにニット帽を被ろうかな。いや、さっそくコーデュロイのスリーピースを着こなそう。
文中にも出てきた、コーデュロイのホスピタルジャケットとベストに、メディカルパンツを合わせたスリーピースの着こなし。ホスピタルジャケット¥55,000、ホスピタルベスト¥32,000、メディカルパンツ¥36,000
レディスの乗馬用のライディングジャケットのディテールと、チェスターフィールドコートのシルエットをミックスしたデザインのコート。ウォッシャブルウール仕立て。ウーマンコート¥82,000
独自に開発した洗えるウール製のニット。オレンジの他4色。中に合わせているのは定番のブリティッシュ・オフィサーシャツ。メンズニット¥24,000、シャツ¥22,000
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
プロフィル
いであつし(いで・あつし)
数々の雑誌や広告で活躍するコラムニスト。綿谷画伯とのコンビによる共著『“ナウ”のトリセツ いであつし&綿谷画伯の勝手な流行事典 長い?短い?“イマどき”の賞味期限』(世界文化社)などで、業界関係者にファンが多い。
Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Styling:Tomohiro Saitoh(GLOVE)
Text:Atsushi Ide