接待と手土産
すべて実食! 自慢の手土産。#12
「銀座久兵衛」の太巻き
2018.12.17
受け取る側のテンションも上がる、一流寿司店の粋なお土産
ただ1回の贈り物で相手に印象付けるような一流の手土産には、センスが必要だ。値段云々ということではなく、気の利いた粋なものがよい。今回のおすすめは「寿司」。しかも「銀座久兵衛」と聞けば、そのワードだけでもかなりテンションの上がるセレクトだ。
「銀座久兵衛」といえば、北大路魯山人をはじめ、数多くの文化人や政財界人が足繁く通った鮨の名店。なかなか足を踏み入れづらいアッパーな店だ。その名店の味を気軽に味わえるとあって贈り物の達人たちの間では既に定番になりつつある。
おみやげ寿司は「穴子棒ずし」「太巻き」「ちらし」など。店舗によって多少異なるが、とりわけ人気なのが「太巻き」だ。ゆでた車エビ、香ばしい焼き穴子、芝エビのすり身入りの玉子焼き、板ずりきゅうり、甘辛く煮た椎茸とかんぴょうが入り、シャリは粘りのあるコシヒカリ。江戸前の技を尽くした最高のネタを、三重県桑名の風味豊かな焼のりでぐるりと巻く。
イクラの入った「特選太巻き」もあるが、ビジネス相手に贈るなら「太巻き」のほうがおすすめだ。適度な大きさで食べやすく、すべて火を通した具材という点も手土産には都合がいい。ひと口ほお張ると、最初にのりの風味が鼻を抜け、その後に具材が混然一体となった絶妙なうまみがやってくる。この究極の太巻きが3240円とは、価格的にも使いやすい。
寿司酢に砂糖を加えないのが久兵衛流だが、太巻き用には少しだけ砂糖を加えている。時間が経ってもふっくらとした食感とうまみが感じられるのだ。作り立てもおいしいが、寿司飯が落ち着いてまろやかさを増し、具材の味がほんの少しご飯に染みたころがさらにおすすめだそうだ。
日本人のソウルフードとも言うべき鮨は、きっと誰にでも喜ばれる。しかも1935年創業、80年以上も伝統を守りつづけてきた「銀座久兵衛」という特別感。奇をてらうことのないシンプルな外見で、筋の通った粋な感じもいい。あの人に贈ろうと思ったときから、受け取ったときの笑顔が想像できる名店の手土産を贈りたい。
銀座久兵衛 銀座本店
東京都中央区銀座8-7-6
営業時間/11:30~14:00・17:00~22:00
定休日/日曜・祝日・お盆・年末年始
価格/太巻き3240円 ※価格は税込み
問/03-3571-6523
http://www.kyubey.jp/
Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Styling:Keiko Katanozaka
Edit & Text:Mayo Morino