カジュアルウェア
ファッショントレンドスナップ35
チェックコートがピッティで増殖中!
ハードルの高いこのコートの着こなし方を解説
2019.01.31
ちょっと遅くなりましたが、今年のピッティ (正式にはpitti immagine uomo)で個人的に気になったスタイル&トレンドについてアップします。
ピッティスナップをインスタなどですでにチェックしている方々からは「いつもピッティは変わんないね……」「着こなしや色合わせがワンパターン」「コスプレ的な人が目立つ!!」という声もちらほら聞こえてきます。確かにピッティではパリコレの様な劇的なトレンドの打ち出しはありませんからね。
でも、よ〜く観察すると クラシックな着こなしに、ほんのちょっとトレンドのアイティムやカラーを取り入れながら進化をしています。
1月のピッティレポート第一弾は、突然変異!?したコートから。
年齢差のあるジェントルマンがしめし合わせた様にチェック柄のコートを着ています。ピッティ期間中にフィレンツェの老舗テーラー 、リベラーノ&リベラーノで開催されたパーティー(ヴィターレ・バルベリス・カノニコとのコラボ商品の発表)でスナップしたものですが、今年はこれが最旬!!と感じたワンカット。
左のご年配のジェントルマンはかなり大柄のチェックですね。それにしてもこんな大柄コート生地はどこで見つけるのでしょうか? どこかのブランドの別注生地としか考えられないですね。オーダーのときに見る一般的な生地見本帳(バンチと呼ばれ約13cm☓19cm)では柄の全体像が全くわからないという特殊なもの。
こんな大胆な柄も黒のマフラーとシャープな黒縁メガネのおかげでシャープにまとまっています。ちなみに靴は普通なら茶を選びそうですが、黒を選んだことで上半身の黒と上手くバランスが取れています。
右のジェントルマンはかなりクラシックな英国調チェック。デザインは、日本でステンカラーコートと呼ばれるもので、左の方と比べるとエリの形が違います。そでは、首元から大きくカーブを描くラグランスリーブと言われる仕様。日本ではレインコートのデザインでよく見かけますが、これをチェックのウールにしたものは日本では珍種。
余談ですがステンカラーという呼び方は和製英語なので海外では通用しません。バルマカーンコートという呼び方もあるようですがかなり専門的ですし、発音も厄介なので、ロンドンなどでのショッピングならラグランスリーブ オーバー コートくらいが通じやすよとイギリス在住の友人がブログで書いていました。
最初のスナップだけを見ると、「欧米の人ならチェックコートが似合うかもしれないが、日本人には難しいじゃないのかな?」という声が聞こえてきそうですので、ここで救世主を。ビームスの大番頭の中村達也さんの今年の1月のピッティでのスナップを御覧ください。
コートは英国調のチェック、見事に着こなしてますよね。これで日本人でもチェックコートあり!!だとご納得いただけましたでしょうか。
ただし、ジャケットは英国的なヘリンボーン柄で、ネクタイはストライプの間隔が空いている変則レジメンタルタイというかなり難度の高い組み合わせ。よ〜く見るとシャツは、シャンブレー(またはダンガリー?)生地のタブカラーというカジュアル生地✕フォーマルデザインという超変化球。
このスタイルを完全コピーするのは素人には危険なので、ジャケットをネイビーの無地、シャツをブルーのレギュラーシャツかB.D.シャツ、ネクタイを茶系の無地タイか手持ちのレジメンタイという定番服で同じテイストが再現できます。
ちなみに全身はこの様な感じです。中村さんの足元は、王道の茶のタッセルスリッポン。ジャケットをネイビー無地に変えたい方なら、黒のウィングチップかローファーに変えても良いとおもいます。
とりはこのジェントルマン。かなりお年をめしていらっしゃいますが、このコーディネイトなら若い方にも無理なく似合うはず。というか、若い方のほうが違和感なくコーディネイトできます。
コートの生地は大柄のヘリンボーン。伝統的な黒✕白(グレー)の生地で同じデザインに仕立てたら全く違うビンテージな感じになりますね。生地の色選びで雰囲気はガラッと変わるという良い例です。
足元に、黄色のスニーカーを選ぶことで、全体をクラシックに見せず若々しいポップな感じにまとめています。勿論ここを白スニーカーにしてもOK。そのくらいが日本ではちょうど良いかも……。
次回のイタリアレポートは、スーツを予定しています!! アップをサボらないで早めに書きま〜す。
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi