カジュアルウェア
ファッショントレンドスナップ36
スーツの着こなしに異変あり!?
ピッティもカジュアル化が止まらない!?
2019.02.14
今回は1月に開催されたピッティでスーツはどうなっていたかを個人的な目線で切り取ってみました。まずは、大きな3つの流派がピティ会場で生まれていますので、そこを最初に押さえたうえで本題に。
①イタリアらしいサルト(仕立て屋)のスーツ を30~40歳代のバイヤーが再評価。コーディネートや素材には英国的要素を採り入れたアングロ イタリアン(イギリス✕イタリアのミックス)というスーツのリミックス版。
②趣味が高じてピッティに来る服オタク(会場内を歩き回り友達を作りインスタグラムにアップされるのが目的)のSNS映え狙いのコスプレ系スーツ スタイル。
③スニーカーブームやモードのトレンドをほどよく採り入れたピッティ流のスーツのドレスダウン スタイル。
以上のスーツスタイルのなかで最も少数派ではあるのですが、勢いがあり個人的に最も注目しているのが③。
このジェントルマンは③のカジュアルスーツの着こなしの好例。英国調の大柄チェックのスーツに大判ストールをラフにひと巻きしているところがポイント。ここをファッション雑誌に出てくるような手の込んだ巻き方にしてしまうとこのヌケ感は出ません。
スーツの下に着ているのは、丸首かVネックのセーターでしょうか? 白セーターはスーツをカジュアルに着るときに便利なアイティムで、清潔感&優しいイメージがあり女性の評価も高い優等生です。
足元は、白のランニング系のスニーカー。ソールが厚くコバが少し張り出しているデザインは、昨年から続くトレンドです。左のレディーとの色のバランスがいいですね。ナイスカップル!!
こちらのジェントルマンは、ツイード素材のスリーピースにタートルネックセーターというかなり斬新な組み合わせ。靴、タートルネックセーター、ポケットチーフの色をまとめることでブラウンのバランスをうまく取っていますね。
靴はトウキャップ(つま先のかぶせた革の部分)に飾り穴が空いているクラシックなデザイン。日本でこのスリーピース&タートルルネックにチャレンジするなら黒のレースアップシューズに白のタートルあたりが無難。
10年くらい前のピッティでは、クラシック系を取り扱うブランドのスタッフや世界から集まったバイヤーは夏冬限らずスーツにネクタイ着用というのが常識だったと聞きます。このジェントルマンもきっと数年前はネクタイをしてピッティ詣でをしていたのでしょう。
一見モードが好きな御仁に見えますが、ポケットチーフのたたみ方やネイビースーツに茶靴をコーディネートするあたりに、クラシックなイタリアファッションが好き!!というルーツが垣間見えます。
しかし、この生地も英国的なチョークストライプです。ただ、ストライプの間隔がやけに空いていますね。きっとイタリアの生地屋さんがアレンジした最新のものだと思われます。
Wスーツですが前のボタンは留めていませんね。これは、おなかが出て窮屈だから留めていないのではなく、イタリア流の着こなし方です。特にナポリなどの南部の方は、よく開けて(ノータイのときのシャツのボタンも3〜4個開けている)着ていますね。
余談ですが、イギリスの紳士はWスーツのボタンを全部はずして着ることはまずありません。第一次世界大戦以前の英国王室の写真を見ると、Wスーツのボタンを全部留めていたくらいですから。
スーツのトレンドについては1回では語り尽くせないので、何回かに分けてまた取り上げたいと思います。
乞うご期待!!
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プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi