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FASHION VIEW
2019 AW PITTI IMMAGINE UOMO 95
イタリアン トラッドの現在。【スーツ編】
2019.03.28
第95回〝ピッティ・イマージネ・ウォモ〞(以下ピッティ)が、1月8日から11日にかけてイタリアのフィレンツェで開催された。会場であらためて感じたのは、イタリアファッションの豊饒さだ。同じ国であっても北と南ではスタイルが大きく異なる。どうして地域ごとの違いが生まれ、収斂(しゅうれん)することなく、共存共栄するのか。そうした多様性にこそ人々を惹きつけるイタリアファッションの魅力があるのではないか。
<NORTH>
BELVEST(ベルヴェスト)
イタリアの北、ヴェネト州パドヴァで創業したベルヴェストは、今年55周年を迎えた。代表作“ジャケット・イン・ザ・ボックス”は、芯地や肩パッド、裏地などを極力省き、その名のとおり“畳んで箱の中にも入る”ジャケットだ。ソフトにもかかわらず構築的なスタイルは、南イタリアのサルトリアが得意とするが、ベルヴェストはこれを20年近く前に既製服で実現した。現在のトラベルジャケットの先駆でもある。
「前身は40年前にできていました。簡単に見えても裏地がないと作業はむしろ難しくなります」と創業家3代目のリカルド・デラ・ピアッツァ氏。そして旅との関わりは、地元の生んだ偉人マルコ・ポーロにまでさかのぼった。
「マルコ・ポーロはヴェネツィアから世界を目指しました。私たちはそうした歴史を大切にし、前に進まなければいけません。一族経営を続けるには過去を思うこと。どこから私たちがやって来たかを知らなければ、どこに行けばいいのかもわかりません。それも含めて旅なんです」
実用的で無駄がないのが北のスタイルの特徴という。南を認めつつ、「でもベルヴェストにナポリテイストを入れたらお客さまは失望するでしょうね。求めるものが違うのですから」と笑う。
<SOUTH>
DE PETRILLO(デ ペトリロ)
「40年間仕事を続け、ブランド設立10周年という節目により成長させたいと思い、出展を決めました。私たちはナポリ発祥ですが、伝統的なナポリスタイルとは少し異なり、インターナショナルなマーケットに合わせたものです。スタイルというのは時とともに変わっていきますが、エレガンスは時間のないものであり、永遠に継続していくと思います。デペトリロはその象徴となり、常にワードローブに存在するものでありたいですね」
そこには自分らしさを大切にし、その心地よさがエレガンスにつながるという信念が込められる。それこそがナポリ気質なのかもしれない。
「サルトリアの発祥は南であり、本来の少量生産を北ではインダストリアルな量産体制に変えていきました。ただそれはフィロソフィーの違いであって、どちらがいい悪いではありません。ふたつの考え方です」と違いを説明する。
「品質を追求することでワンシーズンではなく、長く着ていただく。過去を大切にし、現在から未来につなげる。時間を超越し、それも含めてサスティナビリティということです」
Photograph:Yoshihiro Kawaguchi(STOIQUE)[Studio], Mitsuya T-Max Sada[Report]
Styling:Yoichi Onishi(RESPECT)
Hair & Make-up:Yurie Taniguchi
Text:Mitsuru Shibata
Coordinate:Shiho Sakai
※アエラスタイルマガジンVol.42からの転載です