紳士の雑学

イタリアのキッチンブランドが提案、軽さがつくりだす豊かなライフスタイル。

2019.04.09

イタリアのキッチンブランドが提案、軽さがつくりだす豊かなライフスタイル。

イタリアでは軽さが重視される。これは比喩ではない。

イギリスからもたらされた紳士服は、生地の芯を抜くことで身体に添う柔らかな着心地となった。また堅牢なつくりのグッドイヤー製法ではなく、より薄い底のマッケイ製法の靴がスタンダード。ひとつの型に合わせる窮屈さより、身につけたものを意識させないエアリーな存在感が尊ばれるようだ。

この嗜好は「住」にも通じる。家具にガラスやプラスチックが使われる割合は他国に比べて圧倒的に多く、華奢なフォルムが好まれる。空間のアクセントになっても、視界で過剰に自己主張しない名作が多い。こうしたイタリアらしさを備えたモデルをつくるキッチンブランドが“Valcucine(ヴァルクッチーネ)”だ。

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ジル・サンダー、バーバリー、ジョルジオ アルマーニなどの有名ファッションブランドでキャリアを重ねた後、インテリアの分野に転身。2018年3月にヴァルクッチーネのほか、ドリアデ(家具)、フォンタナアルテ(照明)、トスカクアトロ(バス)を統括するイタリアンクリエーショングループのCEOに就任。ファッションで培われた審美眼と経営戦略で、新しいライフスタイルのフェーズづくりに意欲を燃やしている。

「イタリアでは35年以上の歴史を持ち、高い評価をいただいています」とCEOのジュゼッペ・ディ・ヌッチョ氏は語る。

「90年代からアルミニウム素材などを積極的に活用し、一貫してスリムなデザインを開発してきました」

新作のロジカ・チェラータも好例だろう。レンジ、シンク、調理スペースが一体となったオープンキッチンは驚くほど薄く仕上げられており、細身のフレームと相まって宙に浮いているような無重力性を感じさせる。壁側の収納ユニットを覆う面材はガラス。整然としたグリッド、取っ手を一切つけない仕様はシンプルの極みだ。

「調理を行う中央の作業スペースは、上下にスライドするドアでカバーできます。食事の時間以外は閉じることで、あたかも家具のように見えます」

洗練されたデザインは同時に、使いやすさも申し分ない。たとえばスライドするドアも、簡単に触れるだけで流れるように開き、閉じる。ハイテクの仕掛けはなく、すべて昔ながらのテコの原理を応用したものだという。「私たちは常に美しさと共に、実用性を考えたものづくりをしています」とヌッチョ氏は自負する。

イタリア人が目指す軽さに安易はない。使う人にとっての快適性は何かをつきつめるチャレンジスピリットがそこに隠れている。キッチン自体はもちろん、使う人までもスタイリッシュに見せるストイックな美しさ。ヴァルクッチーネに息づく哲学は、私たちの暮らしにも多くの示唆を与えてくれそうだ。

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2019年ミラノ・サローネで発表の新作ロジカ・チェラータ。“隠されたロジック”という意味だけあって幾何学的な完成度を保ちつつ、人が集いたくなるような開放感も兼ね備える。
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ユニットの面材はガラス。会社がある北イタリアはヴェネツィアに代表されるガラス工芸が盛ん。歴史に培われた技術をモダンにリファインし、割れにくい硬度を実現した。再生可能な素材を使うことでサスティナビリティも意識している。
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人気モデルのジーニアス・ロッシ。随所にライトや引き出しが備わるなど、機能性も考え抜かれている。素材はパーツごとに木、チタン、ガラス、石などが豊富にそろい、好みに合わせてカスタマイズが可能。

Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Text:Mitsuhide Sako(KATANA)

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