お酒
ドイツ白ワインの実力を知らしめる1本
ベルンハルト・フーバー ヴァイサーブルグンダー2011
【今週の家飲みワイン】
2019.04.15
インターナショナルに活躍するソムリエの梁 世柱さんによる、ワイン指南。自宅で気軽に飲める、お手頃でいて本格派な一本を紹介する。今月は「ドイツ」のワインだ。
「ベルンハルト・フーバーという造り手は、ドイツ最南端のワイン産地バーデンという一地方にとどまらず、ドイツを代表する素晴らしい醸造家です。2008年には、ドイツで最も権威のあるワイン評論誌『ゴー・ミヨ』にて2008 年最優秀醸造家賞を受賞。残念ながら55歳の若さで早逝しましたが、今は息子さんがしっかりと意志を受け継いでいます」と梁さんは言う。
醸造所が位置するバーデンは、フランスとスイスの国境沿いにあるエリア。700年前にシトー派の僧侶が訪れた際、石灰岩の地層を見て、故郷のシャンボール・ミュジニィに酷似しているからと、ピノ・ノワールを植樹したと伝えられている。その後もピノ・ノワールの名産地として名を馳せたが、甘口の白ワインブームの陰で、永らく忘れ去られていた土地だった。そんな故郷に、ベルンハルト・フーバーが再び着目し、名産地として復活させたのだ。
「ヴァイサー・ブルグンダーとは、フランスのピノ・ブランのことです。アルザス発祥のぶどうで、アルザスやイタリアではスパークリングワインに使われることも多いですね。こうしたマイナー品種になると、熟成したすごくいい状態のものが、市場にぽんと出る可能性があるんですよ。この1本がまさにそれ。2011年、つまり8年も前のものですから。素晴らしい造り手がきちっと造ったワインがこの価格で買えるというのはお値打ち意外の何ものでもありません。ベルンハルト・フーバーは、ピノ・ノワールとリースリングでよく知られた造り手なのですが、この辺がドイツの職人気質なんですね。自社の中でもマイナー品種で高級ラインではないのに、決して手を抜かない。畑仕事を重んじて厳選したぶどうを、きっちりと樽をきかせて熟成させています。それが8年たって樽感もいい具合に落ち着いています。白い花のようなフローラルな香り、凜としたミネラル感、柔らかな酸、ほどよい凝縮感。本当によくできた美味しいワインです」と絶賛する。
彼が醸造を始めた1995年には、オーク素材の小さな新樽(バリック)で熟成させる人はほとんど見られなかったそう。そうした意味ではドイツワインの新世代を開く、パイオニアでもあったのだ。ドイツのワインというと、日本ではいまだ甘口のイメージが強いが、それは、完全に時代遅れの偏見だというのが、梁さんの見解だ。この1本を飲めば、誰しもドイツ白ワインの素晴らしさを思わずにはいられない。今後は、もっともっと注目していきたいエリアだ。
Photograph:Makiko Doi