お酒
ドイツのピノ・ノワールの最高峰を4000円台で
エンデルレ・ウント・モル / ピノ・ノワール リエゾン [2016]
【今週の家飲みワイン】
2019.04.05
ドイツは古くからワイン大国であるが、近年そのレベルが飛躍的に上がったと言われる。いちばんの要因は、ピノ・ノワールの品質が劇的に向上したことだそうだ。その理由のひとつは栽培や醸造のレベルが上がったこと、もうひとつが温暖化により、これまでは熟度が足りないぶどうが少なくなかったのが、十分に成熟してからぶどうを収穫できるようになったこと。この両方向からの進化が理由だそうだ。しかしながら価格はまだまだ控えめという、ドイツのピノ・ノワールは、いま、まさに知っておくべき注目ワインなのだ。
「ドイツのピノ・ノワールは、もともとはシュペートブルグンダーと言います。シュペートは遅い、ブルグンダーはブルゴーニュの、という形容詞ですから、遅く熟すブルゴーニュのものという意味です。その名産地と言われるのが、南ドイツのバーデンとファルツ。エンデルレ・ウント・モルのそれはバーデン産です。バーデンといえば温泉でも有名な観光地で、地元ではこれまで樽塾のシュペートブルグンダーが人気でした。ブルゴーニュ以外のピノ・ノワールの名産地である、カナダのオンタリオやニューヨーク州などのピノ・ノワール栽培の限界地のワイン同様、香りも味も充実しつつアルコール度数が低い仕上がりになっています。しかも、よりナチュラルな造りで、明るい酸味や明るい果実感が、樽で抑え込まれた感じがしがない、無理のない造りなんです。醸造の工程であれこれ手を出さないと、こういううまさになるんだ、ということがすごくわかるワインですね。ドイツのピノのいちばんピュアな姿が見えてくる一本。個人的にもいちばん好きな、ドイツのピノの造り手です。繊細ながら、ドイツらしいミネラル感を備えた、一本筋が通ったような味わいが魅力です」と梁さん。
「エンデルレ・ウント・モル」ワイナリーは、カイザーシュトゥールの醸造学校に通っていたスヴェン・エンデルレとフロリアン・モルのふたりが2007年に設立したワイナリー。畑のテロワールを直接的にワインに表現するために、醸造過程での清澄や、フィルター濾過を行わず、中古のバリック樽で12~15カ月間熟成しているあいだも、澱(おり)引きしたり移し替えたりしない。そうしたナチュラルな造りも、ここ10年、15年でぐっと品質がよくなったピノ・ノワールがあって、初めて実現できたことと言えそうだ。自然派のワイン造りにおいては、どちらかと言えば遅れを取っていたドイツワイン界において、彼らのワインがまたたくまにスターダムにのし上がったことは言うまでもない。4000円前後という買いやすい価格でこれだけのクオリティーの高さ。ピノ好きならぜひ、飲んでみるべき一本だ。
Photograph:Makiko Doi