お酒
辛口リースリングの巨匠が醸すハイクオリティーな一本
ゲオルグ・ブロイヤー リースリング ソヴァージュ QT 2016
【今週の家飲みワイン】
2019.04.19
インターナショナルに活躍するソムリエの梁 世柱さんによる、ワイン指南。自宅で気軽に飲める、お手頃でいて本格派な一本を紹介する。今月は「ドイツ」のワインだ。
「ドイツリースリング=甘口という考え方は、もはや時代遅れです」と梁さんは断言する。
「素晴らしい辛口のリースリングを飲むと、リースリングの名産地、つまり、モーゼル、ラインガウ、ラインハッセンというリースリングにとっての聖地が、いかに偉大なものであるかがよくわかります。
南ドイツのライン川沿いにあるゲオルグ・ブロイヤー醸造所は辛口リースリングの生産者としては、大御所中の大御所。そのスタンダードラインがこの一本なのですが、スタンダードでこのクオリティーとは、本当に頭が下がります。アルコール度数が11.5%しかないのに、しっかり辛口でミネラルが感じられる。リースリングの最も端正な側面が普通に辛口を造ってこれだけ表れるというのはすごいことです」とも。
リースリングは、辛口から甘口までの幅広い味わいの要素を持ったぶどうだが、その素晴らしいポテンシャルをいかんなく発揮できる土壌は、世界的にもそう多くはない。ラインガウは寒いという気象条件に加え、硬いスレートを含む硬い岩の土壌が多く、その硬質なミネラル感をいかんなくぶどうの中に蓄えることができるのだ。結果、豊かな果実味とともに、爽やかさを残しつつも1本芯の通った造りに仕上がる。
実は、100年ほど前までは、ラインガウの辛口のリースリングは世界でも最も高価なワインと評されてきた。しかし、ドイツが輸出を強化する政策のなかで、甘口なほどクラスが上がるという格付けをしたがゆえに、ラインガウの辛口のリースリングは永らく不当な評価を受けることになってしまった。自国の法律の弊害に永らく苦しんできたのだ。ところがこの20年ほどで、リースリング・ルネッサンスと呼ばれる、復興のムーブメントが起こり、欧米諸国では覇権を取り戻しつつある。
その立役者となったのが、ゲオルグ・ブロイヤーの先代当主ベルンハルト・ブロイヤーなのだ。これまでのドイツの複雑なワイン法による格付けの廃止、徹底した低収量による畑名の意味付けなど、ドイツワインの原点に立ち返ろうという活動が実を結んだのである。現在、彼の遺志は、現当主である愛娘のテレーザへと引き継がれている。
「ラインガウの辛口リースリングの評価は、世界的にも大変に高いものになっていますが、日本では、まだまだ甘口のワインという認識から抜け切れていないようで大変に残念です。
なぜなら、数ある白ぶどうの品種のなかでも、リースリングは日本料理にとても合わせやすい品種だからです。ミネラル感は、海のミネラルにも通じるものがあり、その奥に潜むふくよかな甘さはだしをも受け止めてくれます。ぜひ、この機会に飲んでみてください」