紳士の雑学

レダが作り出すのは「生地」ではなく、「物語」である。

2019.06.10

レダが作り出すのは「生地」ではなく、「物語」である。
レダ社のCEOであるとともに、国際素材見本市ミラノ・ウニカの会長も務めるエルコレ・ボット・ポアーラ氏。レダ社は毎シーズン、テーマ性のある生地コレクションを展開していることで知られるが、今秋は来春のコレクションでは日本画家・伊藤若冲の絵画からインスパイアされた色合いのファブリックも展開している。他のメーカーとはひと味違うアプローチこそ、ポアーラ氏の手腕である。

高級服地の世界では、化繊の機能性素材はクラスが一段低いと認識される。イタリア生地の聖地・ビエラに本拠を構える多くの生地メーカーが、機能性より天然素材の風合いを第一義としているのはそのせいだ。

しかしレダ社は少し考え方が違う。高級ウールの上質な素材感を大切にしながら、生地表面の温度上昇を抑える「アイスセンス」や伸縮性、防シワ性に優れる「アクティブ」などの機能性をもつウール100%素材の開発に余念がない。化繊を用いれば安価に作ることができる機能性素材を、天然素材にこだわって開発するその姿勢が、どこから来るのかを尋ねてみると、その答えは意外な角度から返ってきた。

「伸縮性、速乾性、防汚性、接触冷感性といった昨今重用されるパフォーマンスは、もともとウールが持っているもの。ウールこそが本来の機能性素材なのです。化繊はあくまでウールの機能を代替するために作られたもので、化繊を使った機能性素材をウールでまねるというのは考え方が逆です。我々はウール本来のオリジナルの機能を追求したファブリックを開発していると考えています」

そう話すのはレダ社CEO、エルコレ・ボット・ポアーラ氏。紡績から染色、織布から最終整理まで一貫して行うことができる生地メーカーは少ないが、レダ社は原毛から生地まで一貫生産を行い、そのための技術開発と設備投資を積極的に行ってきた世界的にも希少な、しかも世界的に最大級規模の生地メーカー。その舵取りをする張本人が彼である。

「私たちは、ファブリックをセールスするというよりも、レダ社というストーリーを広めていきたいと考えています。ファンクションを追求することだけでなく、サスティナビリティやトレーサビリティなど、天然のウールに関わることすべてをユーザーと共有していきたいのです」

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https://www.barneys.co.jp/mens/from-the-fashion-office/summer-2019.html#weekend
「WEEKEND」カテゴリーをご覧ください。

そんなポアーラ氏の期待を具現化するプロジェクトが、この夏スタートした。「100% WOOL is SO COOL」とのキャッチコピーが示すそのプロジェクトとは、レダ社のウールを使った、バーニーズ ニューヨーク オリジナルのサマーコレクションである。デザイナーにはイタリアのビエラ出身で自身のブランド「カモ」を手がける、ステファノ・ウゲッティ氏を起用。Tシャツやポロシャツまでウール100%で仕立てることで、ウールがもつ機能も備えている。プロジェクトに関わったバーニーズ ニューヨーク メンズバイヤー、竹原宏平氏は言う。

「日本でレダ社のウールといえばスーツのイメージが強いと思いますが、じつはウールは着心地はもちろん機能性も備えたパーフェクトな生地です。カジュアル服にも無限の可能性を秘めています。今回のコレクションでは、ウールの可能性をさらに広げることができました」

スーパー120’sクラスウールを使ったTシャツは肌触りに優れ、ポロシャツはウールの鹿の子素材で吸汗速乾性にも優れる。アンコン仕立てのジャケットとセットアップのパンツ、ショーツまで、美しいドレープをまとったデザインウエアのカテゴリーでありながら、機能服としての顔をもつ。

「世の中で服地に求められる機能はウールに備わっています。ならば今回のコレクションはある意味すべてがユーティリティーウエアのコレクションと言えるでしょう。これ以上、新たな機能を開発したり求めたりする必要はないのです」

ポアーラ氏は自信たっぷりに述べてから、少し間をおいて、ひらめいたようにこう添えた。

「ひとつだけ新たな機能を付け加えたいとすれば、“ウールの価格を下げる機能”でしょうか。多くの方がウールを愛し、着ていただければ、スケールメリットを生かしたモノづくりができるはず。きっと皆さんに喜んでいただける“機能”となるはずです」

問/バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター 0120-137-007
バーニーズ ニューヨーク オンラインストア

Text:Yasuyuki Ikeda(04)
Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)

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