カジュアルウェア
ファッショントレンドスナップ48
ジャケパンスタイルの最先端と王道を徹底比較
2019.07.03
クールビズがスタートしはじめの1カ月くらいは、いきなりシャツ一枚にノータイというのがちょっときついと感じる方が多いと思います。かと言ってノータイにスーツは最近人気がなくなり、どちらかといえばジャケパンが初夏のビジネスシーンで市民権を得てきたのでは?
そうなってきた背景には、ユニクロから老舗百貨店まで様々なジャケットが並ぶようになったことがあります。1万円以下のストレッチ機能付きジャケットがあるかと思えば、イタリアの職人が手作業で仕立てた高級ジャケットまであり、東京は世界で一番ジャケットの種類が豊富!!だと言っても過言ではない状況。
しかし、買ったはいいけどいざそれを着るとなると、スーツとは違い、上下の組み合わせを考えたり、靴は……と悩んでしまう方が多いと聞きます。そこで今回は、対象的なジャケパンのスナップを取り上げ、お悩みを解消していきたいと思います。
こちらの御仁は、ピッティ ウオモの来場者の中でもかなりトレンディーな方。これをジャケパンスタイル初心者の方が見たら、逆に混乱したり諦めのため息をつくかも……。かなりユニークなコーディネート&ひげ顔ですからね。でもよくよく見ると、紺ジャケットの着こなしの基本をちゃんと抑えているのです。
それは、紺ジャケット×白パンツという鉄板ルール。この組み合わせは、清潔感があり涼しげに見えます。日本の女性ファッション誌でもこうした組み合わせは、マリンスタイルなどと呼ばれ好感度の高いものです。
この方が鉄板ルールを守っているのに、トレンディーに見えるのはWジャケットを着ているからです。日本ではバブルの時代にイタリアのルーズフィットのものが大ブームを起こしましたが、あの頃とはシルエットやディテールが完全に変わりました。
この御仁のWジャケットは、よくよく見るとトレンドがぎっしり詰まっているのです。まずは、かなりタイトなシルエットで着丈もかなり短め。すこし前ならトラッドな着丈は、腕をおろしたときの親指の先から第一関節までの間くらいがベストと言われていましたが、それよりも上ですね。
もうひとつ意外な部分が昔と変わっています。それは前身についている4つのボタンの間隔。かなり内側に入り、横の間隔も狭くなっています。昔のものよりマイナス1~2cmという感じでしょうか。数字ではほんのちょっとですが、これがWジャケットのイマージをガラッとかえるスパイスの役目をはたしています。
アップで見るとエリの幅も狭くなってます。ポケットチーフの入れ方は、かなり独特ですね。無造作に入れてるように見えますが、かなり緻密に考えられた畳み方です。縁取りがオレンジがかったイエローですが、この色は今年の夏のトレンドカラー。このへんのチョイスは、ファッションのプロならでは。サンブラスは、クラシックなボストン型。ブランドはレイバンですね。
しかしこのひげは圧巻ですね!! 日本の現代のビジネスマンには、さすがにこれは無理。でも、明治のころは日本人もひげを愛好していたのです。お札にのった板垣退助などは明治のひげ男の代表選手。実は、最近ロンドンやニューヨークの若者にひげブームがきているようで、その波がフィレンツェのピッティ ウオモにまで押し寄せていて、今回はかなりのひげ男と遭遇しました。
足元は、なんとナイキ。それもこの色です。唐突に見えるこの色は、実はポケットチーフの色と合わせていたのです。そしてナイキのマークは青ですが、これはWジャケットやネクタイのベースの色と合わせているのです。奇抜な足元だけど、全体で見ると違和感なく格好よく見えるのはそうした隠れたテクがあったからなのです。
こちらの御仁は、日本のビジネスマンの方も真似しやすい基本のジャケパンスタイル。紺ジャケ+白シャツ+デニムという誰もが持ってそうなアイテムで、キリッとしたビジネス感を漂わせています。
ノータイですが、ポケットに白いポケットチーフを横一文字で入れていますね。これがあるだけで格段スマートに見えますよ。まだまだポケットチーフは日本では市民権がありません。それはファッション雑誌たたみ方の複雑なものを紹介したり、目立つ入れ方をしたものを掲載しているらからではないでしょうか。この方のようにシンプルに入れれば会社で浮くことはないはずですし、ネクタイがなくても相手に対して敬意をあらわしているように見えます。
この方のメガネのフレームは、ボストンとラウンドのちょうど中間的なデザイン。正面フレームと横のテンプルの素材が違うというメガネのトレンドをおさえた一品。この御仁のひげなら日本のビジネスシーンでもOKですね。ちゃんと手入れされていて清潔感も感じます。ひげの上のライン(ほほ辺り)は、きちっとシェーバーでまっすぐに揃えていますね。
バッグは、北イタリアのハグス。レザーのトートバッグは、ナイロンやコットンのものと違いキチンと感が強く、品格を感じるのでクールビズに最適です。
靴は、Wモンクのホワイトラバー。よくよく見ると革の色はネイビーでした。日本では、黒が主流で、茶が若干数という感じですが、こうしたネイビーの靴は涼しげに見えるので個人的によくお薦めしています。ただし、今回のお二人のような素足履きだけは真似しなように。
次回は、6月のピッティ ウオモの速報を予定しています。
乞うご期待!!
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi