腕時計
50TH ANNIVERSARY
1969年。なぜオメガは、
アポロに選ばれたのか!?
2019.07.11

人類が初めて月面に降り立った1969年から50年が経つ。オメガのスピードマスターが宇宙飛行士の相棒として、その瞬間を月面で刻んだことはあまりにも有名なエピソードである。
車のレースを計測するクロノグラフとして、初代スピードマスターが登場したのは1957年のこと。そしてマーキュリー・アトラス8号が宇宙を飛んだ1962年には、その視認性の良さから飛行士ウォルター・シラーが装着したという。ただ、それはNASA公式装備品ではなく、個人的な腕時計だった。
スピードマスターが公式腕時計となった陰の立役者は、NASAの航空宇宙工学者であったジム・ラーガンである。1964年から宇宙飛行士が使うクロノグラフの選定実験をスタート。
「対応した10社のうち、NASAの求める条件を満たして環境テストに進んだのは、3社の腕時計だった。しかも、そのうち2社は最初の実験で脱落。ただひとつ、スピードマスターだけが最後の実験まで突破した」とジムは言う。高温、低温、気圧、湿度、加速度、衝撃、振動などの11の過酷な実験。
「ランダムな振動と真空状態で故障しないかどうかが、分かれ目となった」
その結果、スピードマスターは1965年にジェミニ計画における宇宙飛行士の公式腕時計と認定され、その後、何度も宇宙に挑むことになったのである。
「なかでも、アポロ11号の月面着陸は特別だった。船外活動の飛行士はオメガの腕時計を完全に信頼していた。それが、あの歴史的な瞬間を生んだのだ」

Charles Duke Jr. Jim Ragan General Thomas P.Staffod
50周年を祝してケネディ宇宙センターで行われたイベントには、当時の立役者がそろった。アポロ10号の機長で、11号の計画や飛行士の選任を行ったトーマス・スタッフォード。腕時計をはじめ装備品の認定テストを行ったジム・ラーガン。11号のミッションで地上交信担当官を務めたチャールズ・デュークなどである。

現在スイスのオメガ社社長兼CEOを務めるのは、レイナルド・アッシェリマン氏である。50周年記念イベントの会場で、インタビューを行った。
Q. スピードマスターが月面に到達したことは、オメガに何をもたらしたか?
A. 歴史的なストーリーは、いまやブランドのDNAだ。故障の許されない瞬間に「月面で時を刻んだ時計」として、多くの人に語り継がれている。スピードマスターは時計業界にとどまらず、最もアイコニックなアイテムだと思う。
Q. マーケティング的な意味も大きい?
A. 歴史の遺産ではなく、誰でも買える高精度な時計としていまもある。それが、購入した方に夢を抱かせてくれる。スピードマスターは、オメガが大事にするパイオニア精神を表しているのだ。
Q. 新しい客層にどうアプローチする?
A. テクノロジーやムーブメントにおいても、常に最高水準を目指す。例えばマスター クロノメーター認定を商品に課すといった姿勢で、お客様にオメガのビジョンをしっかりと伝えている。
Q. 50周年記念 リミテッド エディション以外に限定モデルの予定はある?
A. 新しいゴールドとSSのコンビの限定モデルが予定されている。さらに今年の終わりには、キャリバー321を搭載したモデルの完成を見込んでいる。コラムホイール式クロノグラフで、NASAの実験で認定された腕時計に搭載されていた伝説のキャリバーの復刻となる。
Q. 世界中の企業が宇宙事業に進出しているが、それらの企業とビジネスの話をしているか?
A. もちろんしている。どの企業も、アポロ11号などの歴史的な偉業に敬意を払ってくれる。いつもスピードマスターの話題になる。
スピードマスターほどの歴史的エピソードを持つ腕時計は、ほかにはないだろう。オメガのCEOであるアッシェリマン氏は、その重みをしっかりと受け止めている。リーディングブランドとしての座は、揺るぎそうにない。そのうえで、さらなる進化を目指す。
プロフィル
President and CEO of OMEGA
Raynald Aeschlimann レイナルド・アッシェリマン
1970年生まれ。1996年にセールス&マーケティングのプロジェクトマネージャーとして入社。いくつかのブランドのマネージャーやスウォッチグループの要職を経て、2016年より現職。
問/オメガお客様センター 03-5952-4400
「アエラスタイルマガジンVOL.43 SUMMER 2019」より転載