お酒
シチリア自然派ワインを牽引する「グルフィ」が造る
エレガントなネロ・ダーヴォラ「ネロイブレオ グルフィ」
【今週の家飲みワイン】
2019.07.26
インターナショナルに活躍するソムリエの梁 世柱さんによる、ワイン指南。自宅で気軽に飲める、お手頃でいて本格派な一本を紹介する。今月は「イタリア」のワインだ。
「シチリアの平野部で、もうひとつ重要なぶどう品種がネロ・ダーヴォラです。グルフィのこの一本は、まさにシチリアのワインと言える名品。芳醇でボリューム感があり、肉料理に合わせるのにぴったりです」と梁さん。
ネロ・ダーヴォラは、数百年前からシチリア島の南東にある小さなアヴォッラ村で栽培されてきたそうで、品種名は村名に由来する。温暖で乾燥した気候を好む品種で、この村から徐々に島全体に広がり、他の地域でも栽培されるようになった。長い間、主に安価なブレンドワイン用に栽培されていたが、近年ではこの品種100%の高品質ワインが生産され、評価を高めている。そのひとつが、まさに「グルフィ」なのである。
ワイナリーの創業は2000年と新進だが、世界的にも高い評価を得ている。創業者の故ヴィト・カターニャ氏は、シチリア生まれのパリ育ち。ワインとは無関係の事業を行っていたが、故郷に帰るにあたり、オリーブ栽培ではイタリア屈指の故郷、モンテキアーノでオリーブ園の開業を志した。ところが、ネロ・ダーヴォラとの運命的な出合いがあり、ワイン造りへと舵を切ったのである。
ブルゴーニュワインをこよなく愛していたカターニャ氏は、シチリアの土地とブルゴーニュの土地が似ていることに気づき、ブルゴーニュのワイン造りである、フランス的なクリュの概念(テロワールを意味する畑)を採り入れ、量ではなく品質にこだわったワイン造りを行った。結果、ぶどう本来の生命力、そして各畑のテロワールを強く感じるワインを生み出すことに成功。ぶどうも、アルベッロという昔ながらの株仕立てで育てることで、不必要に農薬の散布をしない有機農法を実現するなど、好循環をもたらしている。
「ドライチェリーやフレッシュハーブのニュアンスを持ちながら、余韻が長く、うま味と塩味を感じる、しっかりと飲みごたえがある一本です。オークチップを利かせて、いかにもという味だけれど、それがボリュームを増して、なんともいいんですね。これで2000円台というのは驚くほどリーズナブル。シチリアにはとにかく安くておいしいワインがたくさんあります。コスパから見ると、世界最強レベルです。ガッツリとステーキや肉の煮込みに合わせて、存分にその持ち味を楽しんでください」
Photograph:Makiko Doi