旅と暮らし

トム・ミッシュらとの交流でUKの音楽シーンに新しい風を吹かせる
未来的ソウルのシンガー・ソングライターがコットンクラブに再登場

2019.08.09

内本順一 内本順一

トム・ミッシュらとの交流でUKの音楽シーンに新しい風を吹かせる<br>未来的ソウルのシンガー・ソングライターがコットンクラブに再登場

昨年1月のブルーノート東京公演から1年8カ月ぶり。3rdアルバム『オリジン』を携えて、ジョーダン・ラカイが来日する。場所は丸の内のコットンクラブ。同会場で彼がライブをするのは2017年3月の初来日公演以来だ。

ジョーダン・ラカイはニュージーランドで生まれてオーストラリアはブリスベンに育ち、2015年からロンドンを拠点として活動しているマルチ・プレイヤー/シンガー・ソングライター。10代のころにアメリカのソウルミュージックやオールドスクールのヒップホップを聴きまくっていたゆえ、彼は無理なく息を吐くようにソウルミュージックを表現することができる。とりわけスティーヴィー・ワンダーが大好きで、新作でもスティーヴィーの曲構成を参考にしたりしたそうだ。オーストラリア出身といえば、先頃のフジロックにおけるパフォーマンスも評判を呼んだハイエイタス・カイヨーテというフューチャー・ソウル・ユニットがあるが、ジョーダンのソウルもまた未来的である。

言い換えるなら、ソウルミュージックではあるけれど、黒くて濃厚なものではない。ジャジーと言える曲もあるし、軽やかに踊れる曲もあるし、とても洗練されていて、ポップとも言える。とりわけ新作の『オリジン』は解放感があって、カラフルで、ポップの度合が高まっている。歌声はシルキーで、汗くささがないゆえ、こういう言い方もなんだがカフェで流れていたらとても気持ちよく聴ける。わかりやすく書くなら、(現代ジャズ的な要素も含む)ネオソウルの流れをくんでいながら、UKの旬のポップ・シーンで輝くことのできるシンガー・ソングライター。こう書いて、5月の再来日公演が評判を呼んで日本での人気もグンと高まったトム・ミッシュをイメージする人がいるかもしれないが、トム・ミッシュはジョーダンがロンドンに移り住んだころからの友達だ。

ほかにもジョーダンは交友関係が広く、いろんなミュージシャンと積極的に共演活動を行っている。そのようなフットワークの軽さも彼の強みだ。例えば2014年には今年のサマーソニックで再来日するフランスのシンガー/多楽器奏者/プロデューサー、FKJの曲に客演し、それは彼の転機となった。ロンドンに移住した2015年には先のトム・ミッシュやディスクロージャーの作品に客演して、より注目度が高まった。ホセ・ジェイムズとの共演などで知られるドラマー、リチャード・スペイヴンの2017年作品『ザ・セルフ』では3曲でフィーチャーされ、続くリチャードの2018年作『リアル・タイム』では4曲でフィーチャーされた。トム・ミッシュを介して仲良くなったというUKのラッパー、ロイル・カーナーが今年発表した2作目にもジョルジャ・スミスやサンファと並んで参加した。また7月のブルーノート東京公演も素晴らしかったUKのジャズ・ピアニスト、アルファ・ミストとは同じスタジオをシェアする仲。このように、彼の交友関係と動向からUKのシーンの現在が見えてきさえするようだ。

3作目『オリジン』はカラフルで解放的
力強さの増したボーカル表現にも注目

そんなジョーダン・ラカイが6月にリリースしたアルバム3作目『オリジン』には、先のリチャード・スペイヴンやピアニストのサム・クロウら多数のミュージシャンが参加。彼はひとりで多くの楽器を演奏してサウンドを作れるマルチ・プレイヤーだが、数々の共演を経ていまはいろんなミュージシャンたちと音を鳴らし、人間らしい感情や生命力をサウンドに吹き込むことに重きを置いている。

2017年の2ndアルバム『ウォールフラワー』はネオソウルの色合いが濃く、ダウンテンポ主体の内省的なシンガー・ソングライター作品と言えるものだったが、新作『オリジン』は先述したようにカラフルで解放的。「Rolling Into One」ほかブギーやファンクにアプローチした踊れる曲もあって、気分が上がったりもする。こうした曲は今回のコットンクラブ公演でも盛り上がりを生むことだろう。そのようにフィジカルに訴えかけてくる部分がありながら、曲構成の練り具合にオリジナリティーが強く感じられもする。スティーヴィー・ワンダーからの影響を先に書いたが、ほかにスティーリー・ダン、ジョニ・ミッチェルの楽曲構成の影響があったそうだ。

また、ボーカル自体がこれまでよりも力強くなり、表現力もうんと増した印象。そう、『オリジン』は何より彼の歌そのものにグッとくるアルバムなのだ。それはロンドンに移り住んでたくさんの仲間や同志ができ、自信を得たことの表れでもあるかもしれない。よって、今回の来日公演はこれまでより開かれていて、クールななかにも力強さを感じさせるものになるだろう。彼を含む5人編成のバンドライブ。楽しみだ。

プロフィル
内本順一(うちもと・じゅんいち)
エンタメ情報誌の編集者を経て、90年代半ばに音楽ライターとなる。一般誌や音楽ウェブサイトでCDレビュー、コラム、インタビュー記事を担当し、シンガーソングライター系を中心にライナーノーツも多数執筆。Note(ノート)でライブ日記などを更新中。

公演情報
JORDAN RAKEI
ジョーダン・ラカイ

公演日/2019年9月3日(火)・4日(水)・5日(木)
会場/COTTON CLUB
所在地/〒100-6402 東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルTOKIA 2階
問/03-3215-1555

その他詳細についてはオフィシャルウェブサイトにて

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