カジュアルウェア
ファッショントレンドスナップ51
6月のピッティで見つけた夏トレンド!!
第3回「ビンテージからモードタイプまでカーゴパンツがブレーク」
2019.08.14
10年くらい前に空前絶後のカーゴパンツブームが日本でありました。ちょうど「ちょいワル」という言葉が某ファッション誌でよく使われていたころです。
そもそもカーゴパンツは、足の太もものところにポケットがついたカジュアルパンツで、そのルーツは野戦服でした。日本の「ちょいワル」ブームのときに流行したのは、シルエットが細身でスタッズがついたりリゾート風のプリントがされたりと、かなりイタリアナイズされたものでした。
ところがそのブームは、2〜3年で収束してしまい、その後カーゴパンツは東京のセレクトショップや百貨店からほとんど消えてしまいました。そんなカーゴパンツがなんと今年の6月のピッティで復活。以前との違いは、そのデザインのバリエーションが増えたこと。
ビンテージ(古着)風の太めシルエットのものから、ミラノのブランドのエレガントなものまでスナップしていますので、その違いを見比べてみてください!!
この御仁は、ミラノのファッションブランド「イレブンティ」の方だけありスマートにカーゴパンツをコーディネートしています。グレーのVネックTシャツが、ライトブラウンのジャケットと白の下半身をうまくつないでいます。ここが、白Tシャツだとコーディネートにパンチがないし、茶系のシャツだときっちり感が出てしまい、下半身のスポーティーな雰囲気とマッチしません。
そして下半身を白で統一したことで、カーゴパンツのコテコテ感やミリタリー臭が出ていません。
カーゴパンツにスニーカーを合わせる場合は、このようにすそをクルクルっと巻いてくるぶしを見せて履くのがピッティ流。
一見キャンバスのスニーカーのようですが、実はスエード(起毛レザー)。ピッティに来ている20〜40歳の若手ならここをナイキやアディダスなどのスポーツ系にしがち。年配の方は、この御仁のようなシンプルな色使いのほうがカジュアルでありながら上品に見えるはずです。
この御仁も白カーゴパンツパンツにジャケットですが、先程のミラノの方とはイメージが少し変わって見えませんか?
そう、こちらのほうがよりイタリアンな押し出しが強く感じられますよね。ジャケットはWブレストでグレンチェック、着丈は短めという今年のトレンドど真ん中のもので、それに太いストライプのシャツを合わせています。この柄☓柄の組み合わせは、ファッションのプロでこそできるC難度の技なので、まねはしないほうがいいですね。日本でこの感じにトライするなら、無地の茶系シャツかグレーのポロシャツが個人的にはオススメです。
カーゴパンツはくるぶし見せが基本と言いましたが、これはかなり股下が短いですね。6月のピッティ会場内ではこのくらいの短丈はよく見かけるスタンダードなものなのですが、日本ではまだまだ市民権は得られていません。「洗濯して縮んだの?」と突っ込まれるのが関の山です。
靴は、クラシックな革靴のデザインですが、よくよく見ると靴ひもがありません。元々がこのようなデザインで、甲の裏側にゴムが付けているので歩いていて脱げることはありません。これはイタリア人ならではの、シャツの前ボタンをたくさん開けて着るのと同様のハズシ技です。
クールビズ期間なら日本でも「この御仁のような感じで出勤できるかも!?」と思わせてくれるコーディネート。この御仁に見習う点は、定番のB.D.シャツにカーゴパンツというカジュアルなアイティムに、ジレ(ベスト)できちんと感をプラスしているところ。
ジレの生地は、シャツに近い色を選ぶとこのように一体感が出ます。初めてジレにトライするときは、この辺を採り入れるとジレが悪目立ちしません。それにしてもシルバーグレーの髪→白シャツ→ベージュのジレ→ライトブラウンのカーゴパンツときれいなグラデーションですね。
カーゴパンツは、裾幅が狭いスキニーシルエット。きっとストレッチ素材でしょう。でないと、この細さでは座ったり立ったりするときに生地が突っ張ってヒザが曲げにくいはず。細いシルエットがお好きな方は、購入するときにストレッチかどうかのチェックをお忘れなく。
このパンツの特徴のヒザの横上にあるポケットですが、そもそもこのポケットには、マチが付いていて少し大きなものを入れるときに膨らむようになっているのが原形。アウトドアではありがたいのですが、日常街ばきしていると、そこが膨らんでスマートに見えません。そのため、イタリアブランドのカーゴパンツは、このようなマチをなくしたスッキリデザインが主流になっています。
こちらの御仁もカーゴパンツにジレスタイルですが、かなりカジュアル。デザイン系やIT系の会社でもこの格好で出勤するのは、かなり勇気がいりますね。
半袖Tシャツにジレは、イタリアではよく見かけるスタイルで男女ともに人気があります。実はピッティ会場内は、こうしたカジュアルスタイルのほうが大半で、ジャケットを着ているような(日本のファッション誌が取り上げる紳士)人はひと握りなのです。
この御仁のカーゴパンツは、ビンテージ調の迷彩柄。昔ちょいワルブームのときにはやったタイプですね。足元はお約束のスポーツ系スニーカー。ほかの三人にも共通していますが、すそはクルクル折り返しています。このロールアップの加減は、カーゴパンツの着こなしの最大のポイントです。
次回はこの夏トレンドも最終回。個人的に気になった細か〜な部分にフォーカスする予定。トレンドにはならないかもしれませんが、見過ごせないエッジーなスタイリングをセレクトしてみますね。乞うご期待!!
トレンドスナップのまとめはこちら
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi