カジュアルウェア
ファッショントレンドスナップ52
6月のピッティで見つけた夏トレンド!!
第4回「インナーをTシャツにしたWジャケットがトレンドに!!」
2019.08.27
個人的にWジャケットが好きなので、毎回ピッティに来るとついつ着ている人を無条件で撮影してしまうのですが、今年は例年に比べてスナップの数が急増。猛暑ということもありましたが、Wジャケットを今までにないカジュアルなコーディネイトで着こなしていた人が特に目立ちました。
日本では、Wのジャケットが流行ったのは確か1980年代の後半。「渋カジ」ブームが渋谷を中心に起こった時に、金ボタンのついたWジャケット(ブレザー)が大人気になりました。当時の代表的なスタイリングは、ネイビーのWブレザーに、ポロ ラルフ ローレンのボタンダウンシャツ、パンツはベージュのチノパンか大柄チェックパンツで、靴はアメリカのティンバーランドのモカシンシューズ(デッキシューズのようなデザイン)というのが鉄板でした。
その後は、イタリアのサルトリアスタイルが好きなマニアの方々の間で、WスーツやWジャケットが注目されましたが、ざわついた程度でトレンドに返り咲いたという感じではありませんでした。
さてさて、そんなWジャケットがイタリアのフィレンツェで復活を遂げていたのです。昔の渋カジ体験をした人も、初めてWジャケットにトライしてみたい方にも楽しんでもらえるスタイリングを厳選してみましたので、ずずずい〜とご覧ください。
30歳代と思しきこのお二人は揃いも揃ってWジャケットを着用していますが、雰囲気がかなり違いますね。
左の御仁はブラックのWジャケットにインナーをブラックのTシャツというミラノ流のモードスタイルで、方やお隣の御仁はえりの幅がやたらと広いネイビーのWジャケット(ブレザー)にサックスブルーのシャツというナポリ流のトラッドスタイル。同じWジャケットでもこれだけ雰囲気を変えて着こなせるという良いお手本ですね。
個人的には、左の御仁の着こなしが刺さりました。なにげにネックレスをして、ポケットチーフをするというカジュアルとフォーマルをミックスした絶品コーディネイトだったのです。これこそ常に新しいスタイルを生み出す、ピッティの真骨頂と言えるもの。
全身はこの様な感じです。パンツの色のチョイスでイメージがかなり変わるのがよく分かると思います。靴はお二人ともスリッポンタイプ(ひもなし)の革靴を素足履きで、パンツの丈は、くるぶしが見えるくらいの短丈。イタリアは夏になると、このくらいのすそ丈の方がほとんどなので、短いという意識は彼れらにはまったくないと思いますが……。
こちらの御仁は、Wジャケットに迷彩柄のWジレ、白Tシャツというなかなか難度の高いスタイリング。
ジャケットのボタンはヴィンテージ加工がされてメタルボタンですね。このジャケットは襟の幅がワイドで着丈はショートという斬新なデザイン。日本でもファンの多いガブリエレ パジーニのものですね。左えりの先についているドクロのラペルピンはこのブランドのアイコンなので間違いありません。\
しかし、パンツの丈が最初のお二人よりも短いですね!! この御仁も革靴を素足履き。日本では数年前に俳優の石田純一さんが同じことをTVに出ている時にしていて、かなり異端視されていましたが、最近は日本でもかなり認知されてきました。
注意したいのは、どの様な革靴でも素足履きしていいわけではなく、革靴の中でもカジュアルシューズに限るということ。この御仁の靴は、元々はイギリスのクラシックなデザインで、ゴルフなどの時に使われていたスポーティな靴がオリジナルなので素足履きもギリギリセーフ。
とりでは、日本人にもWジャケットが似合う!!という証拠をお見せいたします。それも王道ネイビーではなく、キャメルという日本人の黒髪と肌の色には似合わないと言われ続けていたカラーを見事に着こなしているのです!!
この高難度のWジャケットを見事に着こなしていた御仁は、実はビームスのドレス部ディレクターの吉田周平さん。今年のトレンドカラーのマスタードカラーのTシャツをインナーに持ってきて、パンツはベーシックなコットンチノパン。こうすることで色のトーンを上手くまとめています。
ちょっぴり日焼けしてるのもポイント。この日焼けがなければ、ここまでWジャケットが馴染んでなかったと思います。
それにしても、全身の色のグラデーションがきれいですね。
靴は、ヴァンプと呼ばれる靴で、高の部分にローファーのような帯がついていないスリッポンシューズ。長らく日本では店頭でお目にかかっていませんでしたが、ビームスがイギリスの靴工場に別注を掛けて復活させたそうです。吉田さんも革靴を素足履き(見えないソックスを履いているかも?)。
最後に皆さんに質問。
今回ピックアップした達人の着ここなしに共通するものがもう一つあります。どこかおわかりでしょうか?
答えは、4人ともWジャケットのボタンをとめて着ていないところ。ここが実は大切なポイント。Wジャケットを新しく買ってみたいという方は、ボタンをとめたのと、とめないで着たのを必ずチェックしてみてください。ここで手を抜くとスナップのような絶妙なカジュアル感やヌケ感は出せません。
6月のピッティスナップも次回が最終回の予定。目の保養になる女性のスナップアップしま〜す。乞うご期待を!!
トレンドスナップのまとめはこちら
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi