カジュアルウェア
ファッショントレンドスナップ50
6月のピッティで見つけた夏トレンド!!
第2回「リゾート半袖シャツのイタリア流着こなし」
2019.08.05
日本では、夏になるとビジネスのときは半袖B.D.シャツ、休日は半袖Tシャツかポロシャツという男性が大半で「夏イコール半袖シャツ」という感じですが、ピッティでは半袖シャツを見かけることはほとんどありませんでした。
イタリアの夏は、日中は日本並みの猛暑になりながらも湿気が少ないのでカラっとしていて、しかも朝晩は冷え込むので長袖は夏でも欠かせないアイティムなのです。特にピッティに来ているクラシックスタイル原理主義者の方たちからすれば「半袖はエレガントではない。ビーチリゾートに行ったときに着るもので紳士が街で着るのではない!!」と考える人もいるくらいで、ポロシャツに至っては「テニスかゴルフのときに着るスポーツシャツ」とバッサリ切り捨てる人もいるくらいです。
しかしそんなピッティも、今年はカジュアル化の波が。若手だけでなくベテランまでもが半袖シャツを着るようになっていたのです。今回はそんなピッティに浸透してきたイタリア流の半袖カジュアルスタイルをリポート。
トップバッターは、アロハシャツのこの御仁。日本では、ハワイ愛好者からビンテージマニアまで幅広く着られている夏の定番ですが、イタリアではかなりの珍品。この御仁は、ハワイがどこにあるのか知っているか聞いてみると「どこの国の地名だったっけ……、そんなことと俺のファッションとなんの関係があるの?」と答える始末。彼にとっては、クール(格好いい)なプリントシャツを購入しただけで、その発祥の地がどこだろうと関係ないのでしょう。
ヘアスタイルは、見ようによってはGIカット(言葉が古い?)とかクルーカットと呼ばれアメリカの軍人によく見られるカット。念のため、今日本でも流行しているツーブロックとはちょっと違います。
全身はこんな感じで、とてもフレッシュな着こなし方です。アロハシャツに、色落ちしたミリタリーグリーンのパンツとカラフルなナイキのスニーカーを組み合わせるという発想は、日本ではなかなか思いつきませんね。王道の着こなしルールだと、上半身に色が多いのでパンツを白にして靴はコンバースですかね。この御仁はあえて足元もカラフルにすることで、トレンディーなストリートスタイルに仕上げています。
こちらの御仁の半袖シャツは、バンダナで用いられるような花柄やペイズリー柄を拡大してプリントした生地を使ったユニークなもの。生地の下地が黒なので、カジュアル感が消えどちらかと言えばモードな半袖シャツという感じです。シャツの見頃や袖幅もかなりタイトなデザインというのもそう見える要因ですね。
パンツは一見普通のデザインようですが、実は両サイドに側章と呼ばれる黒いテープがついている変わり種。
この側章は、元々はタキシードなどののフォーマルパンツに採り入れられているもので、普通はカジュアルパンツにはつけません。ですが、このパンツはあえて遊び心てつけています。靴は黒のローファーを素足履き。
シャツ、パンツ、靴とバランスよく黒が配置されているので、個々はゆるいアイティムでありながらも全体はシャープな雰囲気に見えます。これなら、高級リゾートホテルのバーで一杯やっても、先客の紳士淑女の方々から冷たい視線を浴びることはないはず。
ラストバッターの御仁は、ミラノの有名なブローガー。いつもはビシッとオーダーしたスーツやエレガントなジャケットを着こなしているイメージが強いのですが、今年はイメージチェンジ。
先述のふたりとは同じプリント半袖シャツでも、着こなし方がガラッと違いますね。最も大きい違いは、白Tシャツを着た上にボタンを留めずに柄の半袖シャツを着ているところ。そして頭にはパナマハットをかぶり、おなかにはクロコダイル革のウェスタンベルトを巻くというかなり難度の高い組み合わせ。胸元をよく見ると、首からターコイズのネックレスと鼻掛け式のクラシックなメガネを下げていますよ!!
かなりくどいアイティムを身に着けながらも全体で見るとこれはこれでありかも……と思わせるところがこの御仁ならでは。一歩間違うとコスプレ ジェントルマン(ピッティで急増中)になるのですが、この御仁は決してそうは見えないキャリアとテクニックをもっています。
とは言えこのスタイルがまとまるのは、エスプレッソなみに濃いこのキャラがあってこそできる荒業ですがね……。
いきなり終わっちゃいますが、次回も夏真っ盛りに使えるトレンドアイティムをピックアップする予定です。乞うご期待!!
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi