旅と暮らし

北欧の“鉄旅”が楽しすぎる!
第5回:サウナ大国でエクストラコールドの水風呂を体験

2019.09.13

大石智子 大石智子

北欧の“鉄旅”が楽しすぎる!<br>第5回:サウナ大国でエクストラコールドの水風呂を体験

第4回:夜遊びなしにはオスロを去れない。北欧屈指のバーはうわさどおりカクテルの楽園だった! はこちら

ストックホルムで鉄旅終了! 船でヘルシンキへ向かう

北欧6日目、ストックホルムから最後の目的地であるヘルシンキへ向かう。“鉄旅”がテーマのこの連載だけれど、実はもう鉄道は終わってしまった! ヘルシンキへは「バイキングライン」というフェリーで向かうのだ。ただ、今回利用している北欧4カ国鉄道乗り放題のユーレイル・スカンジナビアパスが再び活躍。このパスを持っていれば最大50%割引でフェリーに乗ることができる。

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「バイキングライン」はフィンランドの船会社。環境に配慮した船として国際的なサステナビリティ賞を多数受賞している。

16時30分ストックホルム発、ヘルシンキ10時着の海路は480km。この船旅でいちばん好きだった景色は、出発直後に現れた。運河を進む船から、中世の街並みのような水上都市を眺められたのだ。

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運河越しに「Danvikshem」を望む。

出発して5分経ったころ、ひと際高い塔をもつ宮殿のような建物が見えてきた。豊かな緑に囲まれ部屋数も多く、王様が住んでいそうな風貌だ。のちにGoogleマップでこの建物を調べると、なんと老人ホーム! 「Danvikshem」というもとは1551年に建てられた歴史建築。FBを見てみると、お年寄りが庭や応接間で余生を楽しんでいる写真がたくさん出てくる。さすが高福祉の国、スウェーデン。

スウェーデンの高齢者は親族の介護を受ける人が非常に少なく、それでいて寝たきりの高齢者もほぼいないとか。その理由については興味ある方は検索していただくとして、やはり旅は学ぶことが多いと再認識。「バイキングライン」に乗ってあの宮殿老人ホームを見なかったら、さまざまな情報を調べて読むまではしなかったはず。

船はどんどんスカンジナビア半島を進んで行き、夕暮れどきには再び美しい空を見ることに。船旅は空の変化で時間を感じられるのがよい。

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小さな島々に沈んでいく夕日。

「バイキングライン」は11階建ての大型船で、船内には6つのバー&レストラン、カジノ、カラオケステージやサウナなど、なんでも用意。それでいてストックホルム〜ヘルシンキ間での乗船&客室利用は€88〜と、ホテル1泊より安いほどだ。

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    シャワー&トイレ付のシングルルーム€88〜(季節により変動あり)
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    スポットライト付きのカラオケバー。

食事はディナーも朝食もビュッフェで食べたが、ディナーの品数は200以上あったかと思われる。個人的には魚卵でお酒を飲むのがお楽しみだ。結果、カラオケの誘いに乗れず客室で爆睡。早起きして朝日を拝み、その3時間後にはヘルシンキに到着した。

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3種の魚卵、ニシン、海老、クラブケーキ、サーモンなど、ディナービュッフェは魚介尽くし。

はしごするなら、「HIMKOK」から徒歩1分の「Torggata Botaniske」もおすすめだ。Botanisuke(植物の)と店名につくように緑の葉が張り巡らされた店内がフォトジェニック! こちらも地元の果実やハーブを使ったカクテルが豊富で、どれも安定したおいしさ。

港を望むユースホステルにチェックイン

「バイキングライン」を降りてほんの5分で、この日の宿「ヘルシンキ ユーロホステル」チェックイン。ここは船で来る旅人に楽すぎるロケーションで、トラムの駅も近く、サウナ施設も中心街も徒歩圏内。乗り物好きにうれしいのは、客室の窓から船とトラムの両方が見えることだ。

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「ヘルシンキ ユーロホステル」は手前にトラム、後ろに「バイキングライン」が見えるベストポジション!

ユースホステルに属す宿ながら、大半がシングルベッドの個室で、イメージとしてはお手頃な3つ星ホテル。ビジネス利用の多い3〜4つ星ホテルは無機質な雰囲気のところもあるが、こちらは可愛くて優しい空気感だ。特にパブリックスペースがいい。レセプション前のラウンジにはブランコや北欧らしいウッドチェアが置かれ、チェックイン時に歓迎された気持ちになる温かさが漂っている。

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可愛らしい家具の並ぶレセプション前のラウンジ。

ホテルでもそうだけれど、支配人がステキな人、または自分と趣味の合う人であれば気に入る率が高い。「ヘルシンキ ユーロホステル」の支配人・キョスティさんもとても雰囲気のよい人だった。まずヘルシンキ愛にあふれている。ヘルシンキを好きになってほしいという気持ちがあり、結果的にヘルシンキの地元情報を宿でたくさん見聞きすることができる。また、支配人だけれど、パブリックスペースにちょくちょく顔を出し、ゲストとコミュニケーションを取る姿も好印象だった。

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    シングルルーム一泊約€42〜。バスとトイレは共用。
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    厚切りのスモークサーモンを食べたくてスウェーデンの市場で買ってしまった切り身をキッチンでカット。後ろにあるのはフィンランドのクラフトビール「KARHU」。旅でキッチンを使えるのもユースホステルならでは。

サウナ大国は水風呂の冷たさが尋常じゃなかった

実は筆者、大のサウナ好きだが、今回初めてとなるサウナ体験があった。めちゃくちゃ冷たい5℃の水風呂である。

サウナ好きにはおなじみだが、サウナとは、サウナ→水風呂→リラックスタイムが1セットになったもの。水風呂を経てのリラックスタイムが極みであり、その時間は“サウナトランス”と呼ばれたりもする。

通常、水風呂は15〜20℃。サウナ好きほど冷たい水風呂を好んだりするが、個人的には18℃くらいでもいい。マッサージに好みがあるように、理想のサウナも人それぞれ。体躯体質によってサウナトランスまでの到達の仕方も変わるはず。

ちなみに日本人のサウナー(※サウナ好きの人)は水風呂に非常にストイックだ。そのため、海外で水風呂に地蔵のように入っていると、「おまえすごいな」と賞賛を得ることが多々ある(個人談)。

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バルト海に面する「Allas Sea Pool」のプール。水風呂は30mほど奥に設置されている。

さて、話は戻るがヘルシンキの「Allas Sea Pool」というサウナの複合施設では、水風呂がなんと5℃だった。ここは屋内に男女別各2種類のサウナがあり、屋外にプール、水風呂、リラクゼーションスペースを備える。水風呂は外気温まかせの温度となるので、まだ肌寒い4月は5℃。未知のゾーンだが行かないわけがない。

サウナは中央にロウリュ(※熱したサウナストーンに水をかけて水蒸気を発生させる)を設置。カラカラに乾いたサウナが苦手だが、ここは定期的にいる何人かの主(地元の女性)がロウリュを頻繁にかけることもあって湿度も十分。10分後にいよいよエクストラコールドを初体験だ。5℃というと居酒屋のビールくらいの冷たさ。

恐る恐る入水すると、冷たさからの刺激はあるが、10秒後には快感が! これがいけなかった。気持ちよさについ水風呂に長居してしまい、水風呂から上がると目が回った。快感のなかで星が回る。同行者2名の前でろれつが回らないまましゃべってしまったのは失態。エクストラコールドでは入水時間を短くしなければいけないと学び、2回目からはうまくチューイング。肌をなでる風も相まって、最高に整った時間を得ることができた。

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もう一度サウナにトライしようとして翌日行ったのが「Loyly」。サウナは残念ながら休業だったので、併設レストランでイメトレ。2016年にできたサウナで、サウナ後にバルト海に漬かることができる。

コンパクトなヘルシンキは自転車移動がおすすめ

ここからはヘルシンキのその他スポットをさくっと紹介。夕方までは地元民が自転車でヘルシンキを案内してくれるツアー「Helsinki Bike Tours」に参加。まずランチで向かったのは「Kauppahalli Saluhall」。フードコートと食料品店、雑貨店が合わさった施設で、屋外にはアンティークの青空市場が並ぶ。

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ショップのスタッフがそろって穏やかな雰囲気。

フードコートで必食なのが、フィンランドの国民食である“LOHIKEITTO(ロヒケイット)”というサーモンのスープだ。スープのだしは鮭の頭と骨をじっくり煮込んでとっているとのことで、とても優しい味わい。だしをどんどん濃くするために、うま味成分の強い素材を入れたり調味料を使うのではなく、少し控えめに仕上げるのがフィンランド的。

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    サーモンスープの控えめな味わいが、ガツガツしてない街のイメージと一致する。ロヒケイットは3〜4店舗で提供。
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    豪快にサーモンの身が盛られたサラダ。
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    「Kauppahalli Saluhall」には約70軒のショップが並ぶ。
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    市場内でポーランド産の器を購入。

食後に向かったのは2018年12月に誕生した「ヘルシンキ中央図書館OODI」。1万8000平方メートル、3階建ての館内には多彩な居場所がある。仕事のできるデスク、ミシンが並ぶ裁縫スペース、子どもが遊べる場所、レストランに映画ホール、サウナまでそろう! 本のための図書館というより、ヘルシンキ市民のリビングといった印象だ。

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アイコンはアーティスティックならせん階段。

最新建築としても必見。544の応募からコンペを勝ち抜いたALA Architectsが造った建物は、木材が基本素材となり、気持ちのいい光が入る窓と緩やかな曲線により長居しやすい空間となっている。

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階段がベンチの役割を果たし天井のカーブも面白い。

近代建築を見たあとは歴史建物へ。街のシンボルとも言えるヘルシンキ大聖堂とウスペンスキー寺院が2大名所だ。

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ヘルシンキ大聖堂は1852年に現在の姿に改装された。
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北欧最大のロシア正教の教会、ウスペンスキー寺院。赤レンガ内部は圧巻のきらびやかな装飾が施されている。

自転車でのツアーはここまでで終了。そして、ディナーは「The Cock」という日本でいうところのビストロへ。市民のオールデイダイニングといった場所で、昼夜通しで営業(ヘルシンキは本当に共有リビングのような場所が多い!)。

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    「The Cock」は内装が面白く、地下のトイレに降りると、トイレ前に謎のくつろぎスペースが!
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    メインディッシュの鴨のコンフィ。下にトリュフリゾットが敷かれボリューム満点。

ここでは鴨のコンフィもよかったけれど、隣の方からひと口いただいたクラブトーストがかなりおいしい。「あのクラブトーストを食べながら白ワインをちびちび飲むんだ!」と翌日昼に再訪するとランチにはオンメニューされていなかった(泣)。

ディナー後はタップのクラフトビールを多数そろえるビアバー「Bier-Bier」で締め。

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    重厚でムードのある内装も必見。
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    5種類のビール飲み比べセットもあり。この店で人生で最も酸っぱいビール(左端)にハマる。

明けて翌日は買い物とお茶をしたくらいで、ヘルシンキ1泊2日はあっという間に終了。同時に北欧4カ国の旅もここで終わり。

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    可愛い服や雑貨がそろう「Kaarna Living」。
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    コーヒーショップも併設するショップ「KahVilla」では最近日本でも注目されはじめているオーガニックショットを購入。

8泊10日、2680km。飛行機を使えばもっと都市で過ごせる時間をもてただろうけど、今回は鉄道と船での移動自体がアクティビティとなった旅。北欧4カ国乗り放題のユーレイル・スカンジナビアパス(一カ月有効。一等€347)で巡り、お得なのはもちろん、それよりプライスレスな経験をもてたことが一番だった。

最近はなんでも便利になって効率化が進むけれど、だからこそ、鉄道や船に揺られて、時にWiFiも制限され、可能な限りいまの瞬間を楽しむ旅がぐっと心に残る。

2019年、ユーレイルパスの加盟国に英国、リトアニア、マケドニアが加わり
計31カ国となった。それを聞いて、「リトアニアって何?」という気持ちが芽生え、いつか鉄道で入国したいと考え中。そう思えるのも、今回の北欧4カ国の鉄旅が発見と刺激に満ちていたからだろう。

バイキングライン
ヘルシンキ ユーロホステル

ユーレイル・スカンジナビアパスについて
ユースホステルメンバーシップについて
取材協力:ユーレイルグループ
一般財団法人日本ユースホステル協会

第4回:夜遊びなしにはオスロを去れない。北欧屈指のバーはうわさどおりカクテルの楽園だった!

プロフィル
大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、年に10回は海外に渡航。タイ、スペイン、南米に行く頻度が高い。最近のお気に入りホテルはバルセロナの「COTTON HOUSE HOTEL」。Instagramでも海外情報を発信中。

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