旅と暮らし

幅広い声域と豊かな感情表現で聴くものを圧倒するジャズ・ディーヴァ、
著しい進化を示した2ndアルバムを携え、初来日公演をコットンクラブで。

2019.11.26

写真・図版 内本順一

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いま、新世代の女性ジャズ・シンガーのなかで最も歌唱表現力が高いと言われているのは、以前このコーナーでも取り上げたセシル・マクロリン・サルヴァント。だが、セシルに次いで注目を集めているジャズメイア・ホーンの歌唱っぷりも負けじと素晴らしい。

フランスの音楽院でクラシックとバロックの声楽を学んだセシルが抑制した表現に優れた女優的なシンガーだとするなら、フェィクやシャウトも織り交ぜ、ときに奔放かつ大胆に歌ったりするジャズメイアは、自身の感情を解放し、聴く者を圧倒するシンガーと言えるかもしれない。そのジャズメイアが先頃リリースした2ndアルバム『ラヴ・アンド・リベレーション』を携え、12月5日(木)から7日(土)までコットンクラブで初来日公演を行う。

ジャズメイア・ホーン。ジャズという言葉が名前に入った彼女は、1991年4月、テキサス州ダラスの生まれ(セシルより2つ下で、まだ28歳だ)。祖父は教会の牧師で、祖母は合唱団のオルガンおよびピアノ弾き。ジャズメイアと命名したのは祖母だそうだ。

中学でジャズに関心を持った彼女は、ノラ・ジョーンズ、エリカ・バドゥ、ロイ・ハーグローヴらが在籍した故郷ダラスの名門芸術高校ブッカーT・ワシントン・ハイスクール・フォー・ザ・パフォーミング・アンド・ヴィジュアル・アーツに入学。その後、ニューヨークのニュー・スクール大学でジャズと現代音楽を学びながら、ライブ活動を行うようになった。2013年にはサラ・ヴォーン国際ジャズ・コンペティションで優勝し、2015年にはセロニアス・モンク・インスティテュート・コンペティションでも優勝。いくつかの客演を経て、2017年にはプレスティッジからデビュー・アルバム『A Social Call』を発表した。

メアリー・J.ブライジのカバー版でもよく知られるローズ・ロイスの「アイム・ゴーイング・ダウン」、エリカ・バドゥも歌ったモンゴ・サンタマリアの持ち曲「アフロ・ブルー」、ベティ・カーターの「タイト」やアート・ブレイキーの「モーニン」などを取り上げたデビュー作『A Social Call』は、グラミー賞の最優秀ベスト・ジャズ・ボーカル・アルバムにノミネートされ、ジャズ好きの間で評判になった。確かな実力とセンスが光る若くて魅力的なシンガーの登場を喜んだ人は多かったことだろう。だが、今年9月に日本でリリースされたばかりの2ndアルバム『ラヴ・アンド・リベレーション』を聴くと、これこそジャズメイアの本領発揮作であることがよくわかる。「私は進化した」と彼女自身が述べているとおり、1作目から格段の成長・進化を見せていることに驚かされるのだ。

“愛と解放”をテーマにした濃密な歌詞と、
エモーショナルな歌唱が一体となった新作

コンコード・レーベルからのリリースで、日本デビュー作でもある『ラヴ・アンド・リベレーション』。全12曲のうち8曲がジャズメイアの手によるオリジナル曲なのだが、まずはソングライターとしての一段の進境がそこに示されている。アップテンポの4ビート、ムーディーなスロー、ブルース、さらにはデュオでのスポークン・ワードと、作風を使い分けながらもジャズ・シンガーとしての自身の個性をしかと伝えられる楽曲に仕上げるそのスキルに感心させられるのだ。歌詞がまた素晴らしい。愛と人間関係。テーマは普遍的でも彼女の視点には同時代性があり、美しさと深さがある。自身の経験から書かれているため、彼女の熱さ、真剣さが伝わってくる。アルバム・タイトルを“ラヴ・アンド・リベレーション”……“愛と解放”としたことの意味が理解でき、そのことについて改めて考えてみたくもなる。

そして歌いっぷり。歌詞は濃密でも、歌声は前作より快活で、むしろ若返ったような印象を受ける。アップテンポめの曲には歌い出しから勢いがあって、すぐにつかまれる。すごいのはオリジナル曲「アウト・ザ・ウィンドウ」や「サーチン」のスキャットで、そこには爆発力がある。「レッグス・アンド・アームズ」では“気持ちを抑えるようにしよう”と歌いながらも抑えられない気持ちがにじみ出る。ビリー・ホリデイやフランク・シナトラも歌ったスタンダード「アイ・ソート・アバウト・ユー」でスキャットも持ち込みながら歌うさまは実にエモーショナル。口を大きく開いて歌っているのが目に浮かぶようだ。

このような2ndアルバム『ラヴ・アンド・リベレーション』を聴けば、ジャズメイアが感情の解放表現で魅了するシンガー、つまりはライブでこそ個性と力を最大に発揮するシンガーであることがよくわかる。至近距離でその歌を体感できる日まで、あともう少しだ。

プロフィル
内本順一(うちもと・じゅんいち)
エンタメ情報誌の編集者を経て、90年代半ばに音楽ライターとなる。一般誌や音楽ウェブサイトでCDレビュー、コラム、インタビュー記事を担当し、シンガーソングライター系を中心にライナーノーツも多数執筆。Note(ノート) https://note.mu/junjunpaでライブ日記などを更新中。

公演情報
JAZZMEIA HORN
ジャズメイア・ホーン

公演日/2019年12月5日(木)・6日(金)・7日(土)
12月5日(木)・6日(金)
1st.show open 17:00 / start 18:30
2nd.show open20:00 / start 21:00
12月7日(土)
1st.show open 16:00 / start 17:00
2nd.show open18:30 / start 20:00
会場/COTTON CLUB
所在地/〒100-6402 東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルTOKIA 2階
問/03-3215-1555

その他詳細についてはオフィシャルウェブサイトにて

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