紳士の雑学

パートナーシップと「褒め」の技術
世界で恥をかかないために!
ビジネスマナー&イメージ戦略 第1回

2019.12.17

安積陽子

写真・図版

国際的な社交の場において、日本人の「謙遜」は意図が伝わらないことがある。イメージコンサルタントとして国内外で活動する安積陽子が、世界を拠点に活躍するビジネスパーソンのリアルな声をもとに「国際化のいま、知っておきたいマナーやビジネスのヒント」について紹介していく─

国際的な場面では、ビジネスに限らずプライベートでも、夫婦単位での行動を求められることが少なくありません。パートナーとの関係性から、相手の人格や価値観を推し量る文化が存在することは、向かい合うべき現実と言えます。オーストラリアで20年にわたり自動車部品会社を経営するMさんは、「自分の妻だけでなく、周囲にいる女性に対しての言動や振る舞いを通して、力量や品格が推し量られる可能性があることを忘れてはいけない」と言います。

謙遜を美徳とする日本人にとって、身近な存在であればあるほど、褒めることを苦手とする方は多いはず。ご自身のパートナーを、より魅力的に紹介することができるマインドやスキルを身に付けることは、ビジネスの観点に置いても大切な要素でもあるのです。

もちろん夫側の男性だけでなく、妻としての女性もまた、パーティーでの言動や振る舞いが夫の評価につながります。謙遜文化の代名詞とも言える「愚夫」や「愚妻」といった表現は、外国人とのコミュニケーションでは、意図が伝わらない場合がほとんど。パートナーとしてお互いが共に尊敬し合い、尊重し合う関係性を、率直な言葉や振る舞いで示すことは、国際的な社交の場において意識したい要素です。また、パートナーとの共通の趣味や、ボランティアのような社会貢献活動を行っていれば、初対面の方との話題になるだけでなく、パートナーやご自身の信頼性を示すことにも役立つでしょう。

しかし、社交の場で自分のパートナーを紹介したり、異性の相手を褒めたりする際には、とっさに気の利いた褒め言葉は生まれにくいもの。また、自国語以外の言葉であれば、気の利いたウィットに富んだ表現は、よりいっそう難易度が高くなります。思考をフル回転させていては、料理の味すら感じられなくなってしまうことも。自分が場を楽しむことも、品格のひとつ。パートナーを紹介するシーンや、相手のパートナーを褒める言葉など、事前にいくつか気の利いたフレーズを用意しておくと、洗練された品格を示すことができるでしょう。

国際的なシーンでは「褒める」気持ちを示す場合、少し注意が必要。感覚を身に付けるため、ちょっと面白い事例を2つ紹介します。

以前、米国大統領のトランプ氏が、フランスの大統領マクロン氏の妻、ブリジット夫人と初対面した際、メラニア夫人の横で「あなたは良い体形ですね」と褒めて、国際的に批判を浴びました。本人は褒めたつもりでも、セクハラ問題に対する意識が高まっている現代では、女性の身体的特徴に言及するのは、避けたほうがいいポイントです。また、複数人の女性と会話する場面で、特定の人の容姿や体型を露骨に褒める(セクシーなど)のは、他の女性への気遣いに欠ける、失礼な行為と感じられることも。外国人の容姿への憧れから、つい日本人が言ってしまう「肌が白くて奇麗ですね」や「鼻が高いですね」という褒め言葉も、人種差別的な表現と捉えられないよう言及するのが、国際的なマナーと言えます。

オバマ元大統領の例では、何げない褒め言葉が発端となり、価値観を断定される騒動もありました。それは、当時のカリフォルニア州司法長官カマラ・ハリス氏の容姿を「彼女は抜群に美人だ」と褒めた言葉。日本人の感覚では最高の褒め言葉ですが、「オバマは女性を容姿で判断する」「能力ある女性の容姿に言及するなんて、セクハラだ」と物議を醸したのです。政治的ゴシップの側面もありますが、国際的な社交の場でも例外ではありません。

褒める際は、その人の能力や実績・具体的な行動など本質的な部分(内面性)にフォーカスを当てて話すのがポイント。女性の「容姿」ではなく「人格」を讃える、すてきな語彙(ごい)をストックしておくのが最善と言えます。

「褒める」言動は、ポジティブで愛情ある感情です。しかし、相手に気持ちを伝えることも目的であるとすると、意図が伝わるよう、適切な褒め方で気持ちを示すことも同じく大切だと言えます。欧米のビジネススクールでは、夫婦としての言動や振る舞いを学ぶソーシャルグレイスプログラムが用意されているほど、ビジネスにおけるパートナーの重要度は増しています。まさに夫婦は運命共同体。まずは、ご自身の大切なパートナーをより魅力的に表現する「褒める」スキルを身に付け、共に成功への歩みを進めてください。

安積陽子(あさか・ようこ)
アメリカのシカゴ生まれ。ニューヨーク州立大学でイメージコンサルティングの資格を取得。2005年、Image Resource Center of New York社で各界の著名人への自己演出トレーニングを開始。09年、同社の日本校代表に就任。16年、一般社団法人国際ボディランゲージ協会を設立、非言語コミュニケーションのセミナーや研修、コンサルティングを行う。著書に『CLASSACT(クラス・アクト)世界のビジネスエリートが必ず身につける「見た目」の教養』『NYとワシントンのアメリカ人がクスリと笑う日本人の洋服と仕草』がある。

Illustration: Michihiro Hori

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