紳士の雑学

ブルガリはどこへ向かう?
CEOが語る、日本、世界、地球への取り組み。

2019.12.26

ブルガリはどこへ向かう?<br>CEOが語る、日本、世界、地球への取り組み。

創造力、知性、才能にあふれ、多くの人々にインスピレーションを与える女性の功績や活動、生き方を称える「ブルガリ アウローラ アワード」。2016年に日本発の試みとしてスタートし、毎年10名の推薦者とともに10名の受賞者を選出してきた。

2019年12月10日には、第4回を迎えた『ブルガリ アウローラ アワード 2019』授賞式となるゴールデンカーペットセレモニーが、舞浜アンフィシアターにゲストセレブリティ、招待客、メディア関係者など約2000人を集め、これまで以上に大規模かつ華やかに開催された。これに合わせて来日したブルガリCEO、ジャン-クリストフ・ババン氏に、このアワードの意義や、ブランドの現在と今後の方向性などを訊(き)いた。

――『ブルガリ アウローラ アワード』は4回目を迎え、より華やかに、より影響力を持ったイベントになってきた印象を受けました。

ババン氏 このアワードは、日本の女性が情熱的に、ハードワークを重ね、それぞれの夢を実現できたことを称える賞です。まさに女性へのトリビュートであり、社会における女性の存在意義を示し、ジェンダー・イクオリティー(男女平等)を推進するものだと考えています。ブルガリは、女性社員の比率が55パーセントを占め、まさにジェンダー・イクオリティーを進めている企業だと自負しています。

――日本で始まったアワードですが、日本以外の国や地域にも広げていくお考えだとか?

ババン氏 回を重ねて充実度を増してきましたが、今回より多くのお客さまを招待したり、テレビ局にもご取材していただいたことで、パブリックにこのイベントの認知を広げることができました。これからも日本でこのアワードを継続していく一方、2019年には中国での開催も実現し、来年も継続する予定です。また、今後はヨーロッパ、アメリカなどグローバルな展開も計画中です。私たちにとって、このアワードは、女性推進におけるオスカー賞であると考えています。受賞した女性たちの姿が、すべての女性たちにとって、夢の実現を後押しするものになることを願っています。

――このアワードが日本から始まったことを、日本人として誇りに感じていますが、それはブルガリにとって、日本というマーケットの重要性とも関わりがあると思うのですが?

ババン氏 2つ意味があると思います。ひとつは、ブルガリが70年代に海外進出を始めたとき、イタリア以外で初の店舗をオープンしたのが日本でした。ですからブルガリとしては、日本をとても大切に考えているのです。また、日本はセールスにおいても最も重要な拠点のひとつであり、中国マーケットも含めた世界最大の市場でもあります。多くの観光客が日本に来て、日本で購入するという実態もあります。日本というマーケットが、今後も成長を続けていくものと考えています。

――2020年には東京でオリンピックが開催されますが、それに関しての期待感や企画などはありますか?

ババン氏 オリンピックは、主催国にスポットライトが当たる素晴らしい機会です。日本経済にも大きなプラスがもたらされるでしょう。インフラ投資も進み、経済も活況を呈し、日本のカスタマーの購買意欲も高まることが予想されます。それに加えて、オリンピックに向けて数百万人の人々が日本を訪れることになります。それは、ラグジュアリー・ブランドにとっても、非常にポジティブなものになるでしょう。積極的にアプローチしていきたいですね。

――ブルガリにはジュエリー、ウォッチ、バッグ、フレグランスなど多彩なカテゴリーがありますが、今後日本のマーケットに対して、どのカテゴリーで、どのような強化プランをお考えでしょうか?

ババン氏 これから注力していきたいのは、まずハイジュエリー、それからウォッチということになるかと思います。『アウローラ アワード 2019』のパーティーでも、受賞者の多くの方に、新コレクションの『フィオレヴァー』を装いのひとつにしていただきました。『フィオレヴァー』とは、イタリア語で花を意味する「フィオーレ」と、英語の「フォーエヴァー」を組み合わせた「永遠の花」を意味する言葉で、ダイヤモンドがセットされた花弁が動くようになっているのが特徴です。世界の最富裕層の顧客の中に日本の方も多くいらっしゃいますが、こうした皆様にアピールできるものだと思っています。

もうひとつ注力していきたいのは、『セルペンティ』のウォッチコレクションです。スネークがモチーフのアイコニックなデザインで、富裕層の方はもちろん、若い層から高齢の方まで、幅広く好評をいただいています。日本でのニーズにアジャストした『セルペンティ』も用意したいと思っています。ゴールドだけでなく、ゴールド&スティール、スティールなど、デイリーに使用できるタイプも提供していきます。

男性用ウォッチでは『オクト』が好調ですが、アーキテクトの安藤忠雄氏とコラボした『オクト』の限定モデルは、日本のカスタマーに興味を持っていただけるものではないでしょうか。

――ブルガリのウォッチ部門の責任者に、アントワーヌ・パン氏が就任したと伺っています。今後、ブルガリのウォッチをどういう方向に導いていこうというプランをお持ちでしょうか?

ババン氏 ウォッチ部門のトップとして、アントワーヌ・パン氏は、日本の市場を熟知している人物ですから、非常に心強い存在です。これからもウォッチ分野をさらに推進していきたいと思っていますので、これまでにない新しいアイデアを、まずは2020年1月、これまでのジュネーブでのウォッチ・フェアに代わるものとして、ドバイで開催されるLVMHウォッチ・エキシビションのなかで発表することになるでしょう。

――いま、多くの企業がエシカル、サステナブルなどの取り組みを求められる一方、Eコマース、SNSなどデジタル・プラットフォームへの対応も重要な時代になってきました。こうした部分に対してのお考えをお聞かせください。

ババン氏 まずデジタルに関して言うと、セールスやマーケティング、またコンシューマー・エクスペリエンスにおいても、既に21世紀のツールとして当たり前のものになったと捉えています。特に若い層にとって、デジタルはあって当然のもの、活用するべきものなのです。幸い日本においては、Eコマースは順調に推移しており、Eコマースを通じてブルガリを初めて知った方が、次は実質店舗に足を運ぶ動きにつながってきています。

エシカルについてですが、私たちは21世紀という時代のなかでのエシカルな在り方を模索してきました。現在より1世代前は、企業側は自分たちがエシカルであることを開示してこなかったのですが、いま、若い層を中心にカスタマーが知りたいのは、バックステージだと思います。どのようなバリューを創出し、どのような形でのモノづくりを進めているのか。また宝石の採掘ルート、サプライチェーンが適正なものなのかどうか。そうした部分に関心が向けられています。ブルガリは、それに対応するべく透明性を担保するとともに、率先してESG(環境、社会、ガバナンス)投資を行っているブランドであると思っています。

またCSR活動として、子どもたちを支援する民間・非営利の国際組織『セーブ・ザ・チルドレン』とパートナーシップを2009年から継続中で、『セーブ・ザ・チルドレン』ジュエリーの販売収益から、この10年間で8000万ドル以上をチャリティーに寄付してきました。貧困との闘い、緊急援助、教育など、世界33カ国150万人以上の子どもたちの、よりよい未来のために役立てられてきています。

また、エコロジカル・フットプリントについても、ロサンゼルスの店舗で初めてゼロフットプリントを達成しました。そういう意味では、エシカル、ESGに配慮しながら、ウォッチ&ジュエリーブランドとして、360度できる限りの展開に取り組んでいることをご理解いただけると思っています。

プロフィル
ジャン-クリストフ・ババン
ブルガリグループCEO。1959年、フランスの弁護士一家に生まれる。フランスのビジネススクールでMBA取得後、フランス海軍での兵役を経て、P&Gフランス支社、ボストンコンサルティンググループ、ヘンケルイタリア支社でキャリアを重ね、2000年末にLVMHウォッチ&ジュエリー部門のタグ・ホイヤーCEOに就任し、同社のブランド基盤強化を推進。2013年、同じくLVMHウォッチ&ジュエリー部門に加わったブルガリのCEOに就任。同社のジュエリー、時計、バッグ、香水、ホテルズ&リゾーツの全部門を統括する。

Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Text:Yasushi Matsuami

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