特別インタビュー

人を魅了する「カリスマボイス」を獲得する
世界で恥をかかないために!
ビジネスマナー&イメージ戦略 第3回

2020.01.24

安積陽子

写真・図版

国際イメージコンサルタントとして国内外で活動する安積陽子が、世界を拠点に活躍するビジネスパーソンのリアルな声をもとに「国際化のいま、知っておきたいマナーやビジネスのヒント」について紹介していく──。

みなさんは、自分の声の印象について考えたことはあるでしょうか?

たとえば、オバマ前大統領とトランプ大統領が同じメッセージを伝えているシーンを思い浮かべてください。深く響き安定感のあるオバマ前大統領の声のほうが、メッセージが聞き手の心の奥深くへと届く気がしませんか? 「声」がもつパワーを理解している海外の政治家やエグゼクティブたちは、セルフブランディングのひとつとして、服装や立ち居振る舞いだけではなく「声」を磨きつづけてきました。相手が耳を傾けたくなるような魅力的な声がどれだけ人の心を動かせるか、その影響力を理解しているからです。

一方で、日本のビジネスパーソンには、「声」の存在をないがしろにしてしまっているケースが多いように感じます。私がエグゼクティブ向けに行っている印象管理のトレーニングでは毎回プレゼンの様子を撮影しますが、録音された自分の声を客観的に聞いて驚かれる方は意外と多いものです。ニューヨークの証券会社で活躍していたTさんも、そのひとり。童顔な顔立ちから、海外では実年齢よりもひと回り近く若くみられるTさんは、か細い声が商談の際に説得力に欠け、コミュニケーションの障壁となっていることを感じ、ボイストレーニングを受けはじめました。

硬直した身体では、発声に必要な空気を十分に身体へ取り込むことができません。トレーニングではまず、胸を大きく広げるための体操を実践し、固まった首や肩甲骨周辺の筋肉をやわらかくほぐします。身体の状態を整えたあとは、発声の練習。おなかの中に風船がある様子をイメージして、鼻から大きく吸った空気で、おなかの中を膨らまし、声を出すときにはおなかの張りを意識しながら、声で風船を潰すようなイメージで、声を響かせながら出していきます。

響かせるポイントは、口の中の空間をできるだけ大きくとること。ゆで卵をそのままのみ込むようなイメージで口の中をしっかりと開けて、「あーえーいーおーうー」と胸元を響かせながら発声してください。慣れてきたら、次は同じ手法で「あっ、えっ、いっ、おっ、うっ」と滑舌よく発声します。正しい発声法を2~3週間ほど徹底してトレーニングすれば、次第に声の通りがよくなっていきます。さらに1カ月ほど発声練習を続ければ咽頭腔、口腔、鼻腔をバランスよく響かせながら、相手や与えたい印象に合わせて声質も自由自在に変えられるようになります。

Mさんはボイストレーニングを受けることで、苦手だったアイコンタクトが自然にとれるようになりました。苦手を克服した理由は、「相手の目を見ることから、自分の言葉を語尾までしっかりと言い切ることに意識を移すようになったからだ」と彼は言います。安定した力強い声が自分の安心感につながり、自信と余裕を感じさせる振る舞いも生み出しているのです。

これまで世界各国で行われた研究でも、深みのある低音の声は、その人のリーダーシップやカリスマ性を高めるのにも有効であるという報告が多数存在します。例えば、アメリカの大統領選挙でも、1923年以降は常に声が低い候補者のほうが当選してきたというデータが発表されています。また、アメリカのデューク大学がCEO792人の「声」を分析した調査では、音程が低い声の人物ほど規模の大きな企業を経営し、より巨額の利益を生み出しているという研究結果も発表されているのです。声の低さは安心感を与えるだけでなく、男性ホルモンであるテストステロンが多いことも示すため、リーダーシップや権力などにも相関があると考えられるのかもしれません。

多くの研究結果からもわかるように、「声」はボディーランゲージや服装に匹敵するほど、パワフルなコミュニケーションツールと言えます。私もこれまで声を磨くことによって、Tさんのように表情までもが変化し、堂々としたたたずまいが自然と身につくケースをたくさん見てきました。まさに「声」を磨くことは、自信や品格を携えるための基本要素とも言えるのです。さて、いよいよ2020年が幕を開けました。人を魅了する「声」という武器を手に入れて、ご自身をさらに進化させてはいかがでしょうか?

安積陽子(あさか・ようこ)
アメリカのシカゴ生まれ。ニューヨーク州立大学でイメージコンサルティングの資格を取得。2005年、Image Resource Center of New York社で各界の著名人への自己演出トレーニングを開始。09年、同社の日本校代表に就任。16年、一般社団法人国際ボディランゲージ協会を設立、非言語コミュニケーションのセミナーや研修、コンサルティングを行う。著書に『CLASSACT(クラス・アクト)世界のビジネスエリートが必ず身につける「見た目」の教養』『NYとワシントンのアメリカ人がクスリと笑う日本人の洋服と仕草』がある。

Illustration: Michihiro Hori

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