特別インタビュー
日本のビジネスパーソンは歯や口臭に無頓着?
世界で恥をかかないために!
ビジネスマナー&イメージ戦略 第4回
2020.03.05
国際イメージコンサルタントとして国内外で活動する安積陽子が、世界を拠点に活躍するビジネスパーソンのリアルな声をもとに「国際化のいま、知っておきたいマナーやビジネスのヒント」について紹介していく──。
「日本のビジネスパーソンは、なぜ歯や口臭に対して、あんなに無頓着なのか」
都内でビジネスに特化した英会話教室を経営しているAさんは、外国人講師からよくこのような声を聞くといいます。「いや、私の口元は大丈夫」そう思われる方は、普段のコミュニケーションの際、相手の顔のどこへ視線を向けながら話しているでしょうか?
英国のグラスゴー大学が欧米人と東洋人を対象に、コミュニケーションの際に相手の顔のどの部分に注目するかを研究しました。被験者の眼球の動きを追ったところ、欧米人は口元と目元に注目するのに対して、東洋人は目の表情に視線を向け、口元をあまり見ない傾向があることが分かりました。
欧米では、あいさつのときにハグをしたり、頰をすり寄せ合ったりする文化があるため、他人の歯並びや歯の白さ、口臭にも非常に敏感になるのでしょう。「一般の人はおろか、日本を代表する企業のトップや政治家の歯が黄ばんでいるのは考えられない」と外国人の英会話講師たちは厳しく指摘します。
歯のケアを怠っている人は他人の歯にも無頓着ですが、しっかりとメンテナスを行っている人は、人の歯茎の色にまで目がいってしまうもの。「自分はしっかり歯を磨いているから清潔だ」と考えがちですが、“歯を磨いている=口元が清潔に見える”とは限りません。日本人の35歳以上のなんと8割が歯周病に掛かっているデータを知れば「毎食後、歯ブラシでしっかり磨いているから大丈夫」とも言っていられないでしょう。どれだけ丁寧に歯を磨いても、歯垢や歯石は自分では落としきれないものですから、3ヵ月に一度は、歯科医院で専門的なクリーニングを習慣にしたいものです。
「白シャツを着ると歯の黄ばみが目立つ」にならないために
今回は、歯を美しく保つための簡単に取り組めるデンタルケアを2つご紹介しましょう。
1つ目は、「歯ブラシ&フロスのW使い」です。歯と歯の間にすき間がある方は、隙間に食べ残しが入り込み、細菌が繁殖しやすい口内環境ができてしまいます。細菌が繁殖すればニオイが発生します。どんなにブラッシングを頑張っても、歯ブラシで落ちる汚れは6割程度。歯の表面をしっかり磨いても、歯と歯の間に歯垢がたまれば全体的に黄色く不衛生な印象につながります。
デンタルフロスを使用し、歯のすき間に挟まった食べ残しをきれいに除去したうえで、デンタルリンスや舌ブラシで口の中をクリアにすれば、食後のオーラルケアはバッチリです。手間が掛かるように思われるかもしれませんが、慣れればたった1分でできるデンタルケアです。
2つ目は、口内乾燥対策として「水分をしっかりとる」ことです。人前で話をしたり、商談をするときなどは、緊張感で口が渇きやすいもの。口内の渇きは口臭の原因になります。水分を毎日1・5リットルから2リットルほどとることを習慣づけ、口内を乾かさないよう意識しておくと良いでしょう。また、口呼吸がくせになっている方は、口内が乾いた状態になります。口元が緩みがちな方は、口周りの筋肉を鍛えて対策を行えば、口内環境が今よりも改善されるでしょう。
この2つのポイントは、口内を清潔な状態に保つための基本的な対策です。しかしどれだけ口の中を綺麗に保つ習慣を身につけても、口内に虫歯や病気があれば口のトラブルはなくなりません。特に日本人には、歯周病、歯槽膿漏にかかっているケースが多いと言われていますので、これらの対策には専門の医師による治療が必要です。しばらく歯科医院を訪れていない方は、検診を受けることからスタートし、治療と同時進行でデンタルケアの習慣も身につけると良いでしょう。
デキるビジネスパーソンはデンタルケアを惜しまない
私が主催している非言語コミュニケーショントレーニングには、中国や韓国、台湾からも受講生が参加しますが、表情トレーニングを行いながら彼らの口元に視線を向けると、ビジネスシャツの白さに匹敵するほど歯の白さが際立っています。近年ではこのように、アジア諸国のビジネスパーソンも、マウスケアに投資を惜しまない傾向がみられます。
歯を綺麗に保つことは、ビジネスにおいて「自己管理ができている、清潔、信頼」とイメージにつながるだけでなく、周りの人々に対する繊細な心遣いも伝わります。歯のメンテナスは、取り組んだだけ確実に効果が現れる費用対効果の高い自己投資のひとつ。身なりを整えるために美容室へ行くのと同じような感覚で、デンタルケアの予約も入れてみてはいかがでしょうか?
安積陽子(あさか・ようこ)
アメリカのシカゴ生まれ。ニューヨーク州立大学でイメージコンサルティングの資格を取得。2005年、Image Resource Center of New York社で各界の著名人への自己演出トレーニングを開始。09年、同社の日本校代表に就任。16年、一般社団法人国際ボディランゲージ協会を設立、非言語コミュニケーションのセミナーや研修、コンサルティングを行う。著書に『CLASSACT(クラス・アクト)世界のビジネスエリートが必ず身につける「見た目」の教養』『NYとワシントンのアメリカ人がクスリと笑う日本人の洋服と仕草』がある。
Illustration: Michihiro Hori