特別インタビュー
ヨーゼフ・ボイスに憧れて。
[渋谷直角 男が憧れる、男の持ち物。]
2020.05.22
多才でいてファッションフリーク、渋谷直角の愛用品からそのセンスを探ってみる──。
一昨年、吉祥寺パルコの地下にアップリンクの映画館ができたのをご存じですか。5つのスクリーンが入っているミニシアターで雰囲気もよく、デートにもオススメのスポットです。ターコイズブルーを基調としたポ ップな内装がカッコよくて、かかっている映画も少しマニアックなセレクション。背伸びして小難しい映画を観に行くのがオシャレだった90年代の単館系映画ブームを思い出しました。
僕がアップリンクで観たのはヨーゼフ・ボイスというドイツの現代アーティストのドキュメンタリー。ある年上の人にオススメされたのですが、コレがなかなか難解な内容で、内心(コレ……、ほんとに面白いのかなあ?)(コレがわかんないのは、俺がバカだからかな)などとグルグル。しまいには途中で寝てしまった。でも映画館を出たあと、同じく「?」マークをずっと顔に出していたお嫁さんに、「良かったね〜」などと強がって。その見えも含めて90年代デートっぽいかな、と思って。
とはいえ、ヨーゼフ・ボイスのベスト姿はカッコよくて強く印象に残りました。フェルトのハットと白シャツにジーンズ、そこに古着のフィッシングベストを合わせるのがボイスのスタイルで、80年代のトンガった若者はみんな彼の格好をマネしたそうです。僕もすぐに影響受けて、60年代のフィッシングベストを買いました。去年はさらに、新品のベストも2着購入。丸いおなかも隠せるし、ポケットに小物を入れればほぼ手ぶら。すっかりベストにハマりました。
ベストって、特別な気分になりません? シャツの上にベスト。ニットの上からはおってもいい。ベストがアイテムに加わるだけで、なんだかコーディネートの選択肢がすごく広がってウキウキしてくる。自分にとっては「オシャレをしているな」という興奮を味わえる魔法のワードローブです。
Photograph: Tetsuya Niikura(SIGNO)
Styling: Masahiro Tochigi(QUILT)