カジュアルウェア
ファッショントレンドスナップ79
グッチがルーツと言われるビットローファーの人気再燃。
今年は価格がこなれてビジネスでも使える上品デザインが登場!
2020.08.31
ローファーの甲野部分に金属の金具がついたデザインの靴がビットローファー。この金具の原形は、馬具(ホースビット/あぶみ)でそれを靴につけられるようにアレンジしたもの。
1953年にグッチがホースビットローファーというネーミングで発売を開始。その後あっという間に世界中で大ブームとなり、プロレスラーのジャイアント馬場さんも愛用していたという超有名品となりました。
その後日本では80年代、2000年代周辺でブームが起こっていたと思います。流行は繰り返しやって来ると言われていますが、このビットローファーも今年人気が再燃の兆し。 初めて見る方には、どのような服で合わせればいいのか想像がなかなかつきにくいのでは。そこで、今回はビットローファーをどう履くか、そしてコスパの高い日本とイタリアの2ブランドを解説していきたいと思います。
トップバッターはこのジェントルマン。日本を代表するセレクトショップ<ビームス>のクリエイティブディレクターである中村達也さんです。2019年6月のピッティ ウオモ(フィレンツェで開催されるメンズウエアの展示会)でのスナップですが、すでにこのときからすでに足元はビットモカシン。 クラシックとモードの流行を見極め、それを日本でちゃんと使えるスタイルにアレンジする才能はこの方がダントツ。コーディネートはちょうどいまの時期にマネできるジャケットスタイルですね。猛暑が少し落ち着いてきたので、ジャケットを着て出社とか、ディナーに行くというときに参考になるのではないでしょうか。 仕事で白パンツはちょっと厳しい……という人には、グレー系のウールかコットンのパンツに替えればこの雰囲気を採り入れられるはずです。
ビットモカシン¥34,000/イルモカシーノ(ビームス 六本木ヒルズ 03-5775-1623)
中村さんが履いていたのがこのビットモカシン。ソールが白のラバー(スペリーソール)になっているので、単品で見るとかなりカジュアルに見えますがコーディネート次第では中村さんのようにシックにまとめることができます。
こちらのジェントルマンは、ジャケットと白シャツ、ジーンズという定番アイテムにビットモカシン。中村さんのビットモカシンとは違い、ソールが黒のレザーなのでビジネススタイルに採り入れるのが簡単です。 ビットモカシンを会社に履いて行って上司に何か言われないかと心配している方へ。実はこの金具付きのモカシンシューズは、昭和の中盤くらいから日本風にアレンジされかなり出まわったデザインで、街の靴屋さんでも売られるビジネス靴になっていました。なので、60歳以上の方にもビジネス靴の認識ができていますから、ご心配なく。
地域によってはまだまだ真夏日が続いていて秋冬の服はまだ着れない!という人にはこのスナップを。短パンにもビットモカシンが合うという一例。パンツ以外は王道のビジネスウエアです。
よく見ると短パンは、イカリのマークが刺しゅうされたアメリカンなチノパンをハサミでちょん切って切り口はそのまま。ビットモカシンは、グッチのクロコダイル革と下半身はかなりエッジが利いていました。さすがにこれをそのままマネしてくださいとは言いませんので……。 ここはシンプルなベージュの短パンに替えれば再現可能では。もちろん、このスタイルで出勤できる職種は限られますが。
ビットモカシン¥34,000/イルモカシーノ(ビームス 六本木ヒルズ 03-5775-1623)
今回はビットモカシンを2足厳選してみました。まずはイタリアのイルモカシーノというブランドのものから。こちらは、王道のデザイン&イタリア製で4万円でお釣りがくるというコスパの高いもの。 この価格で、革の質や縫い目も手抜きがないものを見つけるビームス(きっとかなり厳しい注文を工場にしているはず)には、頭が下がります。
スエード革のビットモカシン¥48,000/ダブルエイチ(オリエンタルシューズ 03-6804-3280)
こちらのダブルエイチは、ファッションディレクターの干場義雅さんとシューズデザイナーの坪内 浩さんの二人が立ち上げた日本生産の靴ブランド。履きやすさとトレンドをいち早く採り入れるセンスは国内の靴ブランドのなかで抜きん出ています。
上から見るとオーソドックスな作りですが、ソールは凹凸がついてグリップ力があるビブラム社の軽量タンクソールがついています。 一見ミスマッチとも思える組み合わせですが、これがいざ履くとほとんど気になりません。逆にいい具合にカジュアルな雰囲気になっている分、オンオフで履けて便利。どことなくSUVと言われる4WDの車を街乗りする感覚に近いと思います。どことなくお分かりいただけましたか?
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プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち) 数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi