スーツ
スーツに合うセーター選びのポイント
コーディネートに採り入れて冬を暖かく過ごそう
2022.09.16(最終更新:2023.09.21)
秋の深まりから冬の寒さを経た春の訪れまで、欠かせないのがセーター。セーターとスーツは長らくコーディネートされてきた組み合わせです。しかし、着こなしを間違えればやぼったい印象になってしまうことも。この記事では、スーツとセーターの合わせ方やカラーコーディネート、着こなしのテクニックなどを解説していきます。
セーターとニットの違い
セーターとニットの違いについて、正しく理解していない人は多いはず。ニットは一本の糸でループを作りながら編んだ生地のこと。そしてセーターは、ニット素材で仕上げたトップスのことをいいます。
スーツにセーターを合わせるのはアリ?
スーツとセーターのコーディネートに違和感を覚える人も少なくないでしょう。スーツのインナーにニットのセーターを着用すれば、ゴワゴワして動きにくそう、またはカジュアルすぎると感じたりするかもしれません。
取引先の式典など、フォーマルな要素があるビジネスシーンでは、スーツとセーターのコーディネートはあまりおすすめできません。また、ビジネスシーンでも契約や商談といった場面では、スーツとセーターの組み合わせを選択するのは望ましくないでしょう。
しかし、1990年代に採り入れられた「カジュアルフライデー」や近年推奨されている「ウォームビズ」においては、ビジネスシーンにカジュアル要素を採り入れるのは自然な流れとなっています。公務員の服装を見ていても、自然発生的にカジュアルな雰囲気の服装が採り入れられつつあります。IT関連企業をはじめとした企業では、動きやすくて効率のいいカジュアルファッションを積極的に採り入れているケースもあります。TPOに合わせてスーツとセーターを組み合わせれば問題ないと言っていいでしょう。
セーターの素材・ネックライン・形の種類
スーツとセーターを組み合わせるにあたって、どのようなセーターがあるのかを知っておくのがよいでしょう。そうすることでスーツのコーディネートの幅を広げることが可能です。ここでは、セーターの素材やネックラインなどの種類について紹介します。
素材
セーターの素材は大きく分けて天然繊維、動物繊維、化学繊維の3種類に分けられます。また、素材の長所を生かすための混紡繊維が普及しているのも現状です。
天然繊維には、春夏向けと秋冬向けがあって、春夏向けの代表的な素材が綿と麻です。ともに植物繊維で、吸湿性が高く肌触りがいい素材ですが、麻は綿より吸水発散性が良くベタつきにくい特性があります。デメリットは、洗濯で縮むこととシワになりやすいことですが、防縮加工や防シワ加工が施されているセーターを選べば軽減されます。
動物繊維では、ウールやカシミヤが代表的な繊維です。ともに保温性が高く、シワになりにくい特性がありますが、カシミヤはウールより手触りが良く高級とされています。デメリットは、虫に食われやすい点ですが、防虫加工や防虫剤で防ぐことが可能です。
セーターによく使われている化学繊維は、アクリル・ポリエステル・ナイロンです。化学繊維は、天然繊維に比べて価格が低い傾向にあります。また、天然繊維よりも強度が高いことが特徴です。耐久性が必要なセーターに採用されていますが、天然繊維と混紡されているケースが多く、お互いの長所を生かして作られています。例えば、肌触りのいいウールにアクリルを混紡して強度を上げているものもあります。
ネックライン
セーターのネックラインは、スーツとのコーディネートにおいて重要なポイントです。理由は、スーツの顔であるVゾーンに位置するからです。スーツとセーターの組み合わせでは、ネックライン次第で印象がガラリと変わります。
V ネックは、ネックラインがV字形になっているセーターです。V 字形なのでネクタイやワイシャツの襟と身頃が少し見えるので、重ね着ならではのコーディネートを楽しむことができます。クルーネックは、首のラインに沿ったデザインで丸首とも呼ばれています。クルーネックには首のラインにぴったり沿ったものと少しルーズなものがあり、ルーズなものほどカジュアルなイメージがあります。
タートルネックは、襟高が高く折り返すのが特徴のセーターです。タートルとは亀のことで、襟の折り返しと亀が首を出す様が似ていることから、タートルネックと名付けられたとされています。
種類
セーターにはさまざまな種類があります。スーツに適しているセーターはインナータイプで 、厚みのあるセーターなどはアウタータイプです。インナータイプは、ハイゲージやミドルゲージが主に使われていますが、アウタータイプはローゲージで作られています。 ミドルゲージのセーターは、秋ならばアウターとして着用できますし、冬ならばカジュアルなジャケットやコートのインナーとして活用できます。
アウターセーターも、着こなし次第ではビジネスシーンで活用できます。社内などでスーツのジャケットを脱いでアウターセーターに着替えれば、動きやすくて防寒性にも優れています。アウターセーターは、スーツのインナーとして着用できるものではありませんが、根強い人気を誇るものが3つあります。
ひとつは、カウチンセーターです。カウチンセーターはカナダのカウチン湖周辺で生まれたセーターであり、寒い地方特有の防寒性を誇ります。トナカイや雪の柄が特徴です。コマンドセーターは、耐久力の高いセーターとして古くから知られています。ハリスツイードなど頑丈な毛糸を強く編み込んでいるのが特徴です。また、肩や肘などの傷みやすい部分は別生地で補強されているものもあり、長く着ることができます。
国内で最もよく見かけるアウターセーターは、フィッシャーマンズセーターです。なかでもアランタイプは、アラン編みと呼ばれる編み方が有名で、しっかりとした厚みによる高い保温性が特徴です。ウォームビズが推奨されている社内では、エアコンの設定温度が低いのではないでしょうか。アウターセーターを上手に採り入れることで、社内の寒さ対策に効果的です。
スーツに合うセーターの選び方・着こなしのポイント
セーターは、アウターからインナーまで幅広いスタイルがあります。そのなかで、スーツに合うセーターはどのようなものか知らなければコーディネートが難しくなります。着こなしのポイントも合わせてここで解説します。
ゲージ
セーターは、網目によってハイゲージ、ミドルゲージ、ローゲージの3種類に分かれています。ハイゲージは網目の細かいセーターで、ミドルゲージは一般的なセーターです。ローゲージはざっくりとした編み目でアウターなどに用いられるケースが多いセーターです。
スーツに合わせるセーターは、網目の細かいハイゲージがいいでしょう。理由は、スーツのインナーとして着用してもごわつき感が少ないからです。網目が細かいということは、セーターとしては薄手です。ローゲージの分厚いセーターであれば、腕まわりなどが動かしにくくなり着膨れするので避けるほうがよいでしょう。
スーツとハイゲージセーターをコーディネートするデメリットとして静電気が挙げられます。一般的なスーツの裏地にはポリエステルが用いられているのです。ポリエステルとポリエステルが重なると静電気が非常に起こりやすい状態になります。また、ポリエステルとウールであっても静電気が起こりやすい状態なのです。乾燥している冬は特にその傾向が顕著に現れます。
ハイゲージセーターは、摩擦係数が大きくなりますので、スーツの裏地にはキュプラやシルクなどがおすすめです。また、帯電防止加工を施した裏地であれば、ポリエステルでも静電気を抑えることが可能です。静電気対策としては、スーツの裏地やセーターに静電気防止スプレーを吹き付けたり、静電気防止加工などをクリーニング店に依頼したりするとよいでしょう。
ハイゲージのセーターのなかで認知度が高いのはタートルネックセーターです。昭和の時代からタートルネックセーターは、スーツのコーディネートとして採り入れられることが多くありました。また、ポロシャツスタイルのポロセーターもハイゲージを使用しているケースが多いセーターです。
サイズ
スーツとセーターの組み合わせを上手に着こなすにはサイズが重要です。スーツは、時代によって、ゆったりめのサイズが流行したり、タイトなサイズが流行したりする傾向があります。もちろん、オーソドックスなサイズ感であればはやり廃れはありません。まずはスーツの正しいサイズ感の考え方を押さえておくことが大切です。
スーツの肩幅は、ジャケットを着用した状態で、両肩の肩パットの先から人さし指の幅程度の余裕があるといいでしょう。余りすぎていたり、逆に肩幅に対してタイトすぎたりすると、見た目にもバランスが悪く、着心地もよくありません。
次に胸囲ですが、ジャケットのボタンを留めた状態で、ラペルの下の部分が「く」の字になっているようでは窮屈です。目安としてはジャケットの間に手のひらがすっと入るくらいのゆとりがあるといいでしょう。
腹囲は、同じくジャケットのボタンを留めた状態で、ボタンとおなかの間に握りこぶしが入る程度が望ましいです。ボタンの両端にえくぼができている場合や背中にくびれが出ていないなら、オーソドックスなサイズといえません。近年は、ワンサイズ小さめのスーツが好まれる傾向がありますが、ビジネスシーンにおいては、はやり廃れのないオーソドックスなサイズを選択するほうが無難といえます。
そして、セーターもスーツと同様に大きすぎず小さすぎず、丁度いいオーソドックスなサイズのものを選びましょう。タイトなサイズだと脇や肩が窮屈になったり、腕にシワが寄ったりしてしまいます。また、摩擦によりセーターに毛玉ができやすくなります。逆に大きすぎるとスーツのジャケットのインナーとして着たときに中でごわつき、蒸れやすくなって着心地が損なわれます。同時に見た目としてもシルエットが不格好になってしまい、スマートではありません。
スーツと組み合わせて着ることを前提に、選ぶ時はシャツの上に試着してジャケットをはおり、袖丈や着丈、胴まわりを確認しましょう。
色・柄
メンズスーツに合わせるセーターのカラーは、ネックラインによって違いがあります。タートルネック、ハイネック、モックネックであれば、スーツと同系色のものを選ぶといいでしょう。同系色であれば統一感があって、ラフなイメージを抑えることが可能です。例えば、ブラックスーツには、ブラックのセーターや中間色のグレーがおすすめです。
濃紺のスーツには、ネイビーか臙脂(えんじ)色が良いでしょう。ネイビーなら統一感があり、まとまった印象になります。臙脂色は反対色ですが、濃紺との相性もいいです。
グレーのスーツの場合は、中間色のグレーを生かし、ブラックや臙脂色・ネイビーでコントラストをつけると、ビジネスシーンで映えるようになります。
また、V ネック、クルーネックの場合は、ワイシャツやネクタイの色ともコーディネートする必要があります。基本的にスーツと同系色を選ぶと無難ですが、ワイシャツとネクタイをスーツの同系色に合わせて、セーターをアクセントにするというコーディネートもビジネスシーンで活用できるテクニックです。また、カジュアルな要素を演出したいのであれば、ネックラインにかかわらずブラウンやブルーがおすすめです。ビジネスカラーからはみ出ることなく、バリエーションを広げることができます。
スーツに合わせるセーターは基本的に無地がおすすめです。しかし、無地ばかりだと変化がないので面白みに欠けるかもしれません。そこで、採り入れたいのがジャカードです。立体的なジャカード編みを用いることで、遠目では無地のように見えるのですが、近くでみれば柄がわかるセーターとなります。ジャカードならば、ビジネスでも活用できるでしょう。
遊び心やカジュアルを採り入れたい場合は、アーガイル、雪柄、チェック柄などのセーターがおすすめです。どれもセーターの定番柄ですが、スーツとのバランスを崩すことなくコーディネートの幅を広げることができます。
セーターのおすすめブランド
セーターはウォームビズの時代に欠かせないアイテム。さまざまなブランドが多種多様なセーターをラインアップしています。ここではセーターのおすすめブランドを3つ紹介します。
JOHN SMEDLEY(ジョン スメドレー)
JOHN SMEDLEY(ジョン スメドレー)は、1784年創業で230年以上にわたってセーターを作りつづけているブランドです。いい素材を使いこなして、ハイクオリティーなセーターをラインアップしています。
デザインは V ネック、クルーネック、タートルネックなどが多く、オーソドックスなスタイルを採用しているので、トレンドに関係なく長く愛用できます。ゲージは、スーツによく合うハイゲージが中心で、カラーは、無地のダークカラーやホワイトベージュが主流です。カラーもスーツとよく合うといえるでしょう。
素材は、秋冬物は上質なメリノウールを100%使っているものが多いです。春夏物はシーアイランドコットンといわれる良質な綿を100%使っている商品が目立ちます。古き良き伝統を継承しながら、時代のニーズを採り入れたこだわりのあるセーターを世に送り出しているブランドです。
GRAN SASSO(グランサッソ)
GRAN SASSO(グランサッソ)は、1952年にイタリアの小さな村で設立されたブランドです。すべての年齢層のユーザーを満足させるために、工夫を凝らせたアイテムを数多く送り出し、多くの人に受け入れられて評価を得ています。
ベースラインは、ベーシックなデザインのセーターで、カラーバリエーションはダークカラーやオフホワイト、ライトグレーなどです。ゲージも、インナー用にハイゲージのセーターをラインアップしているので、スーツとの相性もいいといえるでしょう。
秋冬ものの素材はウールが中心で、春夏物は綿と麻をバランスよく使いこなしています。スーツに合わせるネックラインとしては、クルーネックやタートルネック、モックネックがそろっています。ポロセーターも存在感があって魅力的です。
グランサッソではアウター用のニットも豊富にラインアップされています。特にニットブルゾンやアウター向けのカーディガンが魅力で、ウォームビズに適しているといえるでしょう。また、セーターを扱っているブランドでは珍しく、修理も依頼できるので安心して着用できます。
Cruciani(クルチアーニ)
クルチアーニは、イタリアのペルージャで1966年に創立されたマニタル社が展開するニットコレクションです。クルチアーニのセーターの基本的なシルエットはタイトで、着る人の身体にフィットするように仕上げられています。また、動きやすいことも特徴ですので、スーツに適しているセーターといえるでしょう。もちろんアウター向けのセーターやニット製品も充実しています。
インナー向けセーターの素材は、良質なウールがよく使われていて、ハイゲージを採用し薄手に仕上げています。伸びやすい袖口や裾を、あえて太めのリブにすることにより、フィット感を高め耐久性を向上させています。
クルチアーニの秋冬セーターは、きめ細やかな肌触りや心地よい温もりが特徴です。春夏向けのコットンセーターは、プリントによってさまざまな見え方がするものがラインアップされていて人気があります。インナーセーターだけでも一年を通して楽しめるコレクションと言えます。
まとめ
メンズスーツとセーターの合わせ方からサイズ・色の選び方などを解説してきました。スーツとセーターの組み合わせは、日本のビジネスの場において、以前はあまり浸透していなかったスタイルです。
しかし、現在ではオフィスのウォームビズやカジュアルの浸透によって、ビジネスシーンにおいてもスーツのインナーにセーターが選ばれるようになっています。この現象はトレンドではなく自然な流れですので、寒さを我慢せず暖かいセーターを採り入れるようにしましょう。