カジュアルウェア
ファッショントレンドスナップ84
令和はバーシティジャケット、昭和はスタジャン。
ルイ・ヴィトンが新作で発表し人気再燃中のアウター登場!
2020.11.04
1985年リリースのA-haの「Take On Me(テイク・オン・ミー)」をオマージュした曲が大ヒットしたり、昭和歌謡が再評価されている音楽業界。こうした傾向はファッション業界にも共通していて、80年代〜90年代にはやった柄やアイテムを、個々のデザイナーによってアレンジされたものがかなり出ていて人気に火がついています。今回は、そのなかでもニッチなアウターで返り咲いているものを取り上げてみたいと思います。
それはスタジャンです!!
ベースボールジャケットとも呼ばれているスポーツ系ブルゾンで、スタジャンは和製英語。もともとはアメリカの野球選手のためのものだったそうで、身頃がメルトン(ウール)でそでが色違いのレザー、胸にはチームのエンブレムが付くのがオリジナル。日本では80年代に大学のスポーツサークルを中心に流行し、その後、渋カジブームでファッションアイテムに昇格。
この名作アウターが、今年の秋冬にトレンドアイテムとして完全復活。その火付け役は、ルイ・ヴィトン。今季は1モデルだけではなく複数展開するなど、その気合の入れ方は半端ではありません。ルイ・ヴィトンではバーシティジャケットと呼んでいるようです。ちなみにバーシティとは代表チームといった意味合いがあるそうです。
今回のジェントルマンは、袖と身頃が同じ素材の変則パターンを着用。そのうえチャコールグレーなので、スポーツ感が完全に消えていますね。
こちらのジェントルマンは身頃がメルトンで袖がレザーでワッペン付きというベーシックなものですが、真っ黒に統一しモード感とラグジュアリー感をアップさせています。
実はこの御仁、先に出た方と同じ方で、これは2019年1月のスナップ。イタリアのファッション関係者(メンズファッションの祭典「pittti uomo(ピッティウオモ)」系)のあいだでは知らない人がいないというくらい有名なAlberto Scaccioni(アルベルト・スカッチョーニ)さんでした。彼のファッションセンスは、ピッティウオモの会場でも際立っていて、世界中のファッションブローガーが彼をスナップしています。
そんなスカッチョーニさんが2年にもわたりピッティウオモ期間中に愛用していたのがスタジャン、もといバーシティジャケットだったのです。彼のトレンドを先取りする感覚に敬服。ちなみに2回ともパンツは白パンを合わせています。ポイントは、モノトーンに差し色をどこかに入れたこと。
2019年のスナップでは、首元に巻いたスカーフのオレンジとブーツのブラウンが利いていますね。王道コーディネートなら、靴はブラックのブーツかホワイトのスニーカーですが、あえてのこの色のブーツというのは斬新。実は、ブラックアウターに茶系下半身というのは、今年レディースでトレンドの組み合わせ。それをいち早くメンズにアレンジしたものだったのです。さすが! スカッチョーニさん。トレンドの採り入れ方がうまい。
今回のコーディネートの再現はこちら。昔はアメリカのブランドの「BUTWIN(バトウィン)」「Golden Bear(ゴールデンベア)」「Champion(チャンピオン)」などが人気で、いまもファンは多いのですが「作りがしっかりしすぎて体になじむのに時間がかかる」「アメリカ的な太めのシルエットが気になる……」という声が出ていたのも事実。
その辺をイタリア的に改善アップデートしたものが今季ハイブランドからレザー専業メーカーまでかなり発表されていますが、なかでも抜きん出ているのがこのエンメティ。
袖はやわらかい羊革で身頃はカシミヤ100%のジャケット¥160,000/エンメティ、シルク×カシミヤのスカーフ¥35,000/アリアンナ、コーデュロイのパンツ¥34,000/ピーティー トリノ、菅原靴店 × Nano Universeの共同別注のスエードのブーツ¥52,000/ダブルエイチ(以上菅原靴店 https://sugawara-ltd.com/)
エンメティは1975年にイタリアのフィレンツェ近郊のレザー生産地区で有名な街で創業したファクトリーブランド。日本のセレクトショップではここのライダースが爆発的な人気になっていて、入荷するとすぐに完売するほど。
今回のスタジャンは菅原靴店の完全別注品。要するにこれは、ここでしか買えません。
その詳しい内容は菅原靴店ホームページを参照してください。
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに
通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こな
しを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi