特別インタビュー

新たな一歩を踏み出す勇気をくれる。
そんなアイテムが、いま欲しい。

2020.12.23

写真・図版 山本 晃弘

写真・図版

STYLE & VIEWS FOR MEN

 この秋は、ギフトを贈る機会が続きました。結婚した会社の後輩のために購入したのは、ハトの絵がグラフィカルに描かれたパスタ用のプレートと幸せの色といわれるブルーのサラダプレート。もちろん、2枚ずつです。食べることが大好きな彼女は、胃に見つかった大きな病を乗り越える途上。支え続けた彼と新しいテーブルについて幸せな食事をする日は、すぐそこまで来ています。

 家族で10年間暮らしたハワイから帰国した友人には、写真立てを贈りました。30年以上も前に同じ編集部で働いたときに撮影した、彼と私のモノクロ写真を入れて。心ならずも日本でリスタートすることになったのですが、若き日に携えていた情熱はいまも残っているはず。家族思いの彼には大人の知恵が加わっているのですから、新しい生活もきっと大丈夫。

 もちろん、自分自身のために購入したものもあります。素足で履いても気持ちのいい、グレーのスニーカーです。以前はよく通っていた原宿のスポーツショップは、久しぶりに訪れてみると、ビルごとリニューアルされてすっかり様変わり。ゆっくりと店内を見ていると、丸っこいトウが少し反り返ったようなデザインのスニーカーが、目に留まりました。名前だけ聞いたことがあった、スイスの新しいブランド。「自粛期間中に、このスニーカーで走りはじめた方も多かったですね」。店舗のスタッフがそう教えてくれて、すぐに購入を決めました。

 まさに、私にとって「新しい時代に欲しいもの」だったのです。

 人にギフトを贈るときも、自分自身で何かを購入するときも、イメージするのは、贈る人や自分の手もとにそれが届いたときに、人生がどう変わるのかということ。上質でクラシックなコートを買って、ひとり旅をしたくなったり。お気に入りのリュックが見つかって、自転車通勤を始めたり。復刻デザインの腕時計で、父親を思い出したり。色の鮮やかな名刺入れがきっかけで、転職したり。

 そんな出合いがあるから、ファッションは楽しいのです。ブランドだから、高額なものだからといって、必ずしもそれがラグジュアリーであるとは限りません。次のステージに進む勇気がもらえる、そんなアイテムこそが、ラグジュアリーであるのだと思います。いくつになっても、また新たな人生が送れるとしたら、これほどの贅沢はないでしょう。

 読者の皆さんが、ワクワクする一歩を踏み出せますように。この特集で、そんな逸品が見つかることを願っています。

写真・図版

服飾ジャーナリスト 山本晃弘(ヤマカン)
AERA STYLE MAGAZINE創刊編集長。現エグゼクティブエディター兼WEB編集長。現在は服飾ジャーナリストとして、ビジネスマンのリアルな視点に応える執筆活動を行っている。2019年4月にヤマモトカンパニーを設立。執筆書籍に、「仕事ができる人は、小さめのスーツを着ている。」がある。

「アエラスタイルマガジンVOL.48 WINTER 2020」より転載

illustration:Michiharu Saotome

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