特別インタビュー
相手のリーバイスは、サムライの目線で見る。
[渋谷直角 男が憧れる、男の持ち物。]
2020.12.22
多才でいてファッションフリーク、渋谷直角の愛用品からそのセンスを探ってみる──。
ビンテージブームの時期とファッションに興味を持ちだす時期が直撃してしまった世代なので、ジーンズ、特にリーバイスに関してはいまでも「ビンテージ目線」という、厄介な病を抱えています。相手のはいているジーンズを、瞬時に「赤耳か」「レッドタブは大文字か」「ステッチの色は」などを、意識せずにサーチしてしまう。目視で確認できない場合でも、タテ落ちやハチノスの具合で「育ち具合」をつい見てしまう。
…… 興味ない人には「はあ?」でしょう。ビンテージのリーバイスにはそれだけ専門的な用語やディテールのチェック箇所が大量にあって、これは同世代のジーンズ好きには「あるある」なのです。もちろん、新品のリーバイスも買います。でもやはりビンテージ目線。レプリカやビンテージテイストのものを選びがち。いかにビンテージのように「育てられる」かが大事。
ジーンズに限らず、例えばマニアックなオモチャ屋さんのすご腕店員だと、入ってきたお客さんが手に取ったモノ、または目線の移動だけで、その人がどういう趣味で、どういうオモチャを過去に好きでいまに至るかの経歴、知識レベルはどのくらいか、が瞬時にわかるのだそうです。時代劇でよく見る、サムライの「ムッ、此奴、できる!」っていう、あの感覚。僕なんかマニアとは呼べないレベルですけど、それでもリーバイスに関してはそこそこ知識があるくらいには夢中なわけで。
正直、それは「ファッション」とは別のものだし、レアなジーンズだからといって、=オシャレではない。でもリーバイスがいまでもトップブランドとして君臨しているからこそ、歴史的探求や趣味性の追求が最高に楽しいのもまた事実なのです。スパイスカレーやキャンプ道具にこだわるのと同じように、リーバイスにも深い魔境が広がっている。その楽しさは沼のように、ハマるほど抜け出せないんですよねえ。でも幸せなのよ!
<<ネクタイの機会がないというジレンマ。 はこちら
Photograph: Tetsuya Niikura(SIGNO)
Styling: Masahiro Tochigi(QUILT)