調べ・見立て(見立て)

車離れ、活字離れ、映画離れってホントなの!?
編集長の「見立て」。#41

2021.03.17

山本 晃弘 山本 晃弘

ライフスタイル01

前回の見立て記事で、休日の過ごし方の変化を書きました。今回はそこからもう一歩踏み込んで、レジャーや趣味についての「調べ・見立て」をしてみましょう。昨今よく言われている「車離れ、活字離れ、映画離れ」は、果たして現実に起こっているのでしょうか?

まずは、車の所有について尋ねました。結果は、「持っている」84%、「持っていないが欲しいと思っている」5%。加えると、9割近いビジネスマン読者が「車離れ」していません。「リースカーを検討している」2%や「カーシェアやレンタカーで十分」5%といった具合で、車との新しい付き合い方をしている人たちもいます。ただ、「必要ない、免許がない」と答えた読者は4%に過ぎず、この調査に限って言えば「車離れ」は進んでいないのです。

自動車検査登録情報協会のデータによると、自動車保有台数は2016年8090万730台、2017年8126万206台、2018年8156万3101台、2019年8178万9318台、2020年8184万9782台と減少していません。過去50年さかのぼってみても、リーマンショックが起こった2008年~2011年の4年間だけが前年比で減少していますが、自動車の保有台数はずっと右肩上がりで推移しています。この台数にはトラックやタクシーといった商業車も含まれていますから、個人の所有、なかでも都市圏の若年層に車離れが起こっているという指摘は的外れではないでしょう。ただ、今回のアエラスタイルマガジンの調査では、「車」への興味がまだまだ高いことがわかりました。コロナ禍の影響で、レジャーの在り方に変化が起こるのは必至。そうしたときに、車を所有する意味が再び高まるかもしれません。

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次に、「活字離れ」を検証していきましょう。スマホで読むニュースやSNS、それに仕事で読むメールやスラックなども勘案すると、ビジネスマンが読む活字(文字)が減っているわけではありません。逆に、それらに費やす時間が本を読む頻度を減らしている可能性はあります。それでも、今回の調査では「月に5冊以上」読んでいると回答した人が27%に上りました。「1冊程度」19%、「2~3冊程度」26%、「4~5冊程度」14%を加えると、86%の読者が本を読んでいるのがわかります。

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しかも、ビジネスマンが呼んでいる本が必ずビジネス本であるとは限りません。よく読む本のジャンルは、「小説・物語」48%、「ノンフィクション・エッセイ」24%と、「ビジネス書」12%を上回っているのです。そして、「本を読むときは何で読むことが多いですか?」という質問に対する回答は、「紙の本」73%が圧倒的。スマホ、タブレット、キンドルといった電子機器は、読書のツールとしては思ったほどは定着していません。「もしいま紙が発明されたとしたら、最高のモバイルツールとして歓迎されるはず」と思想家の内田 樹氏が指摘したとおり、紙の本の威力はまだまだ健在です。

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映画については、昨年公開された劇場版「鬼滅の刃」が「千と千尋の神隠し」を抜いて歴代の興行収入トップになったニュースが話題になりました。劇場のにぎわいはそういったヒット作品の有無に左右されますし、加えて、コロナ禍の影響も大きく受けています。アエラスタイルマガジンの調査でも、「映画は映画館で見るものだ」と回答した読者は25%にとどまりました。「映像配信を利用することが多い」50%や「映像配信でしか映画は観ない」8%といったアンケート結果を見ると、映像配信への転換が大きな流れです。

複数の映像配信会社がありますが、Netflixだけを見ても、2020年9月時点での日本の有料会員数は500万人を突破しており、2019年9月から1年間で200万人以上も増加。いまでは配信作品がアカデミー賞候補に挙げられることもあり、作品がより多くの視聴者に届くのを考えれば、映画業界にとっても悪い流ればかりとは言えません。

車、本、映画。これらを巡る状況がどのように変わったとしても、「いい車、いい本、いい映画」が望まれていることに変わりはありません。コンテンツをつくる業界にいる者として、時代を見据えながらも、その一点は忘れずにいたいと思います。

プロフィル
山本晃弘(やまもと・てるひろ)
AERA STYLE MAGAZINE
WEB編集長 兼 エグゼクティブエディター

「MEN’S CLUB」「GQ JAPAN」などを経て、2008年に編集長として「アエラスタイルマガジン」を創刊。ファッションやライフスタイルに関するコラムを執筆する傍ら、幅広いブランドのカタログや動画コンテンツを制作している。トークイベントで、ビジネスマンや就活生にスーツの着こなしを指南するアドバイザーとしても活動中。2019年4月にヤマモトカンパニーを設立し、現職に就任。執筆書籍に、「仕事ができる人は、小さめのスーツを着ている。」がある。

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