特別インタビュー
伊勢丹新宿店 メンズ館1階
オーダーシャツ スタイリスト 大野健太さん
この人から買いたい、この一品
2021.03.26
僕と同世代の人たちにドレスアップの楽しさを伝えたい
4人きょうだいの末っ子なのですが、上3人は姉なんです。ファッションの入り口は3番目の姉が好きだったヒップホップ。音楽やカルチャーに興味を持ったことがきっかけでした。姉とその友達が読んでいたヒップホップ系の雑誌を見ながら、ファッションの楽しさを知っていったのだと思います。いまの自分があるのは、姉のおかげなんです。
ヒップホップから入ったファッションですが、その後はデザイナーズモードへ移行して、コム デ ギャルソンなど王道をひと通り着てきました。スーツに興味が出てきたころに卒業を迎えたので、「就職するならスーツで働けるところ」と希望して伊勢丹に入社しました。ビジネスカジュアルが浸透している時代ということもありますが、スーツ姿で働いてる同級生は、あまりいないですね。
今日はサルトリア パルテノペアのジャケットに、イセタンメンズのオーダーシャツ、ネクタイはルイジ ボレッリです。20代前半の僕ですが、あえて背伸びした服を着ているのも勉強の一貫です。プレーンノットにディンプルを2つ入れたり、さりげなくジャケットやネクタイの色を靴下にもってきたり、細かいところを意識してコーディネートするように心掛けています。先輩スタイリストにはおしゃれな方が多いので、日々勉強させていただいています。
コロナ禍で在宅勤務が増えましたが、男性にとってスーツは決して廃れることのない正装です。これから社会にでるフレッシャーズはもちろん、普段スーツを着ない若い人にもドレスの楽しさを伝えるお手本になりたいと思っています。カジュアル出社でも、ときにドレスアップすることで気分が変わることがあります。服の選び方や着方、ネクタイの結び方など、なんでも気軽に相談していただきたいです。
高校は体育科のある都立で、サッカーを専攻していました。見えないかもしれませんが(笑)こう見えて、スポーツは結構得意です。いまはフットサルをメインに、ボルダリングやスノーボードなど密を避けられるスポーツを楽しんでいます。そのころから制服もユニフォームも、いかにルールのなかで個性を出せるかということを常に意識していたので、いまメンズクラシックに携わっているのも、着こなしのルールのなかでいかに遊ぶかというミッションは同じですよね。
大野さんおすすめの一品
ウルトゥラーレのガルザタイ
ウルトゥラーレは、もともとナポリのサルトリアがネクタイだけ独立したブランドとして設立したブランドです。ナポリ人が愛する優美で伝統的なスタイルが多く、1本ずつハンドメイドで作られているのでとてもやわらかく繊細なんです。「ガルザ」とはガーゼのように透けていて、織り目が立体的に浮き上がる素材のことです。剣先の三ッ巻など、熟練した職人の技術の高さがよくわかります。結んでみるとVゾーンに軽やかにひるがえるので、春らしくて爽やかな印象です。光沢あるシルクタイよりもカジュアルな印象ですが、品格がちゃんと備わっているのでビジネスにもお使いいただけます。
問/伊勢丹新宿店 03-3352-1111
Photograph:Hiroyuki Matsuzaki (INTO THE LIGHT)
Text:Yasuyuki Ikeda