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『ペーパー・ハウス』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #6

2021.09.30

『ペーパー・ハウス』<br>いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #6

いま見始めればファイナルシーズンに間に合う!

この計画の中には強奪とは別に目的があった。それは世間を味方につけ、武力行使で鎮圧しようとする警察や政府を批判の対象にすること。信用を得るためには暴力など、血を流さずに事を進めていく必要がある。しかしどうしても計画を実行したい犯人と、どうしても逃げたい人質たちが長い時間正気を保っていられるわけがない。

この作品を観たときにある映画を思い出した。1971年アメリカのスタンフォード大学で実際に行われた実験を元にした『es』という作品。その実験とは大学の地下で“看守役”と“囚人役”に分け、2週間生活をするというものだ。最初は役を楽しんでいた者たちも、ささいないざこざから次第に対立が深まり、看守役は権力を振りかざしはじめ、死傷者が出るほどの惨劇に。『ペーパー・ハウス』においても、抵抗する人質たちを収めるためには、その“看守役”のように権力を示さなければならなくなってくる。そうなることも教授の想定の範囲内だったが、そううまくはいかない。集団心理、同調圧力は時に秩序すら崩壊させてしまう。計画とは違う問題が起こる度に、目が離せなくなってゆく……。

犯罪ドラマの中に、恋愛問題がしつこく絡んでくるのも本作の魅力。強烈なキャラクターぞろいの8人だが、語り手でもある“トーキョー”が特に魅力的。キレやすく危なっかしいが、美しさは一目瞭然。こんな美女が狭い空間に居ればそれはもう、恋が生まれる。これが本当のつり橋効果といったところか、ラテンの血がそうさせるのか、時にクライムサスペンスを忘れてしまうくらい情熱的な恋模様。

濃厚なストーリーが飽きさせることなくテンポよく進んでいき、まったく予想もつかない展開に停止ボタンが押せなくなるほど面白い。12月3日から最終シーズンの放送が決まっている。まだ観ていない人は、今から観ていけば間に合うだろう。歴史に残る大ヒット作、ぜひお見逃しなく!

Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo

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