週末の過ごし方
『ER緊急救命室』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #23
2022.04.28
色褪せない名作をご堪能あれ。
医療現場のリアルさや巧みなカメラワークはもちろん、『ER』のすごみはなんといっても登場人物のユニークさや人間臭さの部分だろう。医師とはいえ、ひとりの人間だ。医療現場では人命を救うヒーローでも、プライベートでは問題だらけの医師もいる。一刻一秒を争う命を預けられた責任のある仕事だからこそ、気持ちをしっかり持たなくてはならない。そんな彼らの葛藤が、視聴者の心をつかんだ。
運び込まれる患者も同様に、さまざまな事情を持つ。生と死が隣り合わせの医療現場は、尽きることのないドラマであふれている。
『ER』は15年という歴史のなかで、アメリカでその時々に起こっている社会問題をふんだんに織り交ぜ、問題提起をしてきた。不況、エイズ、家庭内暴力、医療保険制度、人種差別、麻薬問題……。そういったアメリカの、ひいては世界の課題を患者たちのバックボーンに織り交ぜ、より厚みのある作品に仕立てていった。
ジョージ・クルーニーの出世作としても有名だが、まだ有名になる前のスターを見ることができるのもロングラン作品ならではの楽しみ方のひとつ。ユアン・マクレガーやキルスティン・ダンスト、ダコタ・ファニングやルーシー・リュー、『プリズン・ブレイク』で一躍有名になったウェントワース・ミラーも出演している。
これほど濃厚、かつ丁寧に描かれた人間ドラマは、現代ではなかなか生まれにくいだろう。商業上の都合によりファーストインパクトを重視される作品があふれる昨今、そのテンポに違和感を覚える方も少なくないのでは? そんな方々にこそ、ぜひ『ER』に戻ってほしい。
純粋に命を救いたいと奮闘する医師や看護師たちの物語には、たくさんの愛があふれている。そして死と向き合わなくてはならない状況は、涙なしでは見られない。その後の医療ドラマに多大な影響を与えたドラマ『ER』は現在、huluにて配信中。何度観返しても色あせない名作を、ぜひ。
Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo