特別インタビュー
1億円のコラボ作品も⋯⋯
多才なアーティスト・三浦大地、
自身初の個展を伊勢丹新宿店で開催中。
2022.07.29
浜崎あゆみの衣装デザイナーを手掛けたことで知られるほか、柴咲コウのライブイベントの衣装デザイン、さらには住居・カフェ・コスメなどのプロデュース、広告やイラストレーション制作など、デザイナーやアートディレクターといった肩書にとらわれず幅広く創作活動を行っている三浦大地氏。彼の初めての個展「DAICHI MIURA ART EXHIBITION“MODERATION”」が、東京・伊勢丹新宿店 本館6階にある催物場で開催中だ。これまでに数々のブランドとコラボレーションしている三浦氏の代表作であるイラストレーション「Josie’s RUNWAY(ジョシーズ ランウェイ)」の原画や、クリスタル(水晶)を使った現代アート作品など100点以上を展示販売している。
2つの異なる性質を持つ作品が交ざり合う
クリスタルを画材やモチーフとしてふんだんに使用した抽象画や立体作品は、三浦氏がこの1年間に新たに創作を始めたものだという。水晶は二酸化ケイ素の結晶(石英)において無職透明で六角形の自形結晶しているものを指し、浄化作用があるパワーストーンとして古くから世界中で愛されてきた。鉱物に造詣が深い三浦氏の手によってキャンバスや石膏像にちりばめられた無数のクリスタルは、悠久の時や自然の偉大さを感じさせ、ポップでオシャレな女の子のキャラクターとはまた別の、ある意味異質な存在感を漂わせている。
鉱物とファッション。それはあたかも「extreme(極端)」な印象を受けるが、本展のテーマは意外にも「MODERATION(中庸、片寄らず調和が取れていること)」。なぜそのようなテーマにしたのか。三浦氏は次のように語る。 「まったく全然違うテイストの作品が混在しているように見えるかもしれませんが、僕のなかには実際に存在している2つの性質なんです。女の子のキャラクターはショッピングが大好きで仕事や遊びで忙しい、いわば物質社会の象徴。クリスタルの作品は、言ってみれば悟りに近い精神世界。どちらも僕のなかにある。自分は何者か、人生はどうあるべきか、幸せとは何かを語るとき、どこかに固定させたいと考える人が多いのですが、『両方あってもよくない?』と僕は思うんです。たとえば旅もそう。僕は旅が好きだけど、たどり着きたい場所はまだ見つかっていません。たどり着かないことが心地いいし、そういう状態を許容したい。“どうあるべき”ではなく、どうしたらいいかわからずさまよっている状態を受け入れることができれば、『それもあっていいし、これもあっていい』と他人の多様性も尊重できるようになると思う」
「この一瞬」は、その場で見て体験しないとわからない
正解や結果までの最短距離を追い立てられがちな現代社会。目的地にたどり着かずさまよっている状態を受け入れる三浦氏の生き方や作品は、走りつづけて息切れした心を和らげるヒントとなるだろう。 「結果という概念は思い込みであって、本当はどれも経過。会社でよく言う『前年比』というのだって定まった結果ではなく、そのときの経過でしかない。結果をめざしたほうが頑張れることもあるので、『結果が大事』という考えも許容するけれど、あくまで過程であるということは頭にとどめておきたい。この個展も、もし実際に見ていただいて特に深い関心を持たなかったとしても、“見たこと”は人生の過程のひとつとして確実に蓄積されるはず。特にクリスタルのアートは画像だけでは受け取れないものがあるので、ぜひ来場して体験してみてほしいですね。鉱物としての力はもちろん、見るときの位置、角度によって異なる陰影や反射、輝きはそのとき、その場所にしかないもの。その一瞬をご自身のものにしていただければ」
同展ではパリのハイジュエリーメゾン「CHAUMET(ショーメ)」とコラボレーションした総額1億円の作品も展示している。具象と抽象、物質と精神。「自分がいまフィットしているフェーズがどこなのか、確認できるかもしれない」と三浦氏。あなたはどこに引き込まれるだろうか。
三浦大地(みうら・だいち)
ファッションやグラフィック、空間などのデザイン、ブランド、広告CMのディレクション、イラストレーションと幅広く活動。環境問題や地域活性など社会活動にも力を入れている。
オフィシャルサイト:DAICHIMIURA
インスタグラム:@daichi_1127
DAICHI MIURA ART EXHIBITION“MODERATION”
会場:伊勢丹新宿店 本館6階 催物場 住所:東京都新宿区新宿3-14-1
会期:開催中〜8月1日(月)まで
開場時間:10:00〜20:00(最終日は18:00まで)
入場料:無料
※7月29日(金)18:00〜(30分程度)、会場にて三浦大地によるライブペインティングを開催予定。
Photograph:Yuji Kawata(Riverta Inc.)
Text: Yukiko Anraku