週末の過ごし方
『THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これから』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #30
2022.09.01
時には立ち止まって、誰もが人生を見つめ直す。仕事のこと、家族のこと、恋人のこと……。そんなときにそっと寄り添ってくれるのが、ドラマ『THIS IS US』だ。これほどまで丁寧に「人生」を描いた作品が、かつてあっただろうか――?
物語は36歳を迎えた三つ子のケイト、ケヴィン、ランダルを中心に、現在~過去~未来を巡りながらどんな“出来事”が起きて、それぞれの人となりができてきたかを知りながら進んでゆく。まさに、人生はドラマである。
アクション要素やファンタジーなど一切なく、突き詰めたヒューマンドラマ。公開された2016年からファイナルシーズンを迎えた2021年まで、欠かさず毎年何かしらの賞を複数受賞している、評価の高い作品だ。
正統派ヒューマンドラマがなぜ、ここまで評価されたのか? それは、登場人物ひとりひとりを生い立ちから掘り下げ、人格形成の過程を丁寧に描写することで、誰もが誰かに感情移入できてしまうからだ。親や恋人との衝突、将来への焦り、仕事での不満、大切な人を失ったり、子どもを授かったり、さまざまな人生の場面を描くことによって、視聴者それぞれが自身の思い出と重ね合わせ、共感し、涙を誘う。
「より身近な作品に」という計らいか、本作は時代と共に変化するコミュニケーションの機微もないがしろにしない。舞台はアメリカで文化の違いはあれど、シーズン5ではパンデミックによるコミュニケーションの多様化が描かれた。コロナの影響で、人との距離感は確かに変わったのかもしれない。日々流れてくる緊迫感のあるニュースの数々に疲弊してゆき、パーソナルスペースを充実させる傾向がみられた。生活様式の変化、社会的なつながりの変化、時代はまさに変化の時なのだ。
しかし、人として、人は切り離せない存在だ。時代は変わろうが、支え合い生きてゆくことの重要性を『THIS IS US』は教えてくれる。閉鎖的なコミュニティーに身を置くことで、柔軟性を失い、自身では気づかないうちに偏った考えを持ってしまうかもしれない。そんなとき、気づくのは自分ではなく、家族や友人だ。