週末の過ごし方

20歳岩井千怜、17歳馬場咲希が快挙達成で、
女王の23歳稲見萌寧も危機感。
「若手がレベルを上げている」

2022.08.30

日本女子ゴルフ界は、話題が尽きない。8月21日、新人選手で双子姉妹の妹・岩井千怜(いわい・ちさと)が、史上3人目となるツアー初優勝からの2戦連続優勝を20歳47日の最年少で飾った。前週には17歳の馬場咲希(代々木高)が、日本人として37年ぶりに全米女子アマチュア選手権を制した。そのスケールの大きなプレーは、世界のゴルフファンに衝撃を与えた。馬場は9月から国内ツアーに出場予定。ほかにも有望な選手がおり、昨季賞金女王で今季2勝の稲見萌寧も危機感を高めている。

稲見は21日夜、インスタグラムを更新した。7位で終えたCATレディースを振り返り、「私の中では今年一番に、あ、これならいけると思えたショットの感覚でした。久しぶりにセカンドがピンに飛んでいきました」。そのうえで「どんどん若手選手がレベルを上げてきているので、私も負けじと危機感を持って圧倒的を目指して頑張ります!」とつづっている。

「圧倒的を目指して」とは、昨年から稲見が公言している「圧倒的に強い存在になりたい」を示したものだが、そうもいかない状況になってきた。理由は、国内で競い合っている1学年上の小祝さくら、勝みなみら「黄金世代」、1学年下の西村優菜、吉田優利ら「プレミア世代」、2学年下の西郷真央、山下美夢有ら「新世紀世代」だけでなく、2002年度生まれの岩井がツアー2連勝を飾ったからだ。

岩井は、NEC軽井沢72ゴルフトーナメント(8月12~14日)で、新人選手で第1号となるツアー初優勝を果たすと、翌週のCATレディース(同19~21日)も制した。安定したショット、勝負強いパットで、両大会とも実績のある先輩たちに競り勝っている。普通の選手は「緊張でなかなか力を出せなかった」と話すものだが、岩井は「緊張していましたが、その分、集中できていました。自分のゴルフをすることだけを考えていました」と振り返った。「私は見られていることが好きで、好きなことを一生懸命やって、皆さんに見てもらえるのは楽しいです」とも言った。だからこそ、パットを外しても笑顔でいられる。その姿がファンを魅了し、多くの拍手、声援を呼んでいる。

現在の国内ツアーでは、岩井だけでなく、2021年開催の最終プロテストに合格した選手が続々と上位に顔を出しはじめている。同年は、コロナ禍で延期された20年度分最終テストが6月に、21年度分最終テストが11月に行われた。岩井は姉の明愛(あきえ)とともに6月に合格。明愛も3度のトップ10入りがあり、パットの出来次第で優勝争いに絡む力を持っている。そのほか、同期合格組では、後藤未有、小倉彩愛、内田ことこ、桑木志帆らが優勝争いを経験。11月の最終テスト合格者では、佐藤心結、尾関彩美悠、櫻井心那が、ツアー大会の最終日最終組でプレーしており、優勝に近づいている。そんなルーキーたちの勢いが増す理由は、コースの厳しいセッティング、食事、移動も含めたツアープロの生活に慣れてきたこともあるだろう。

脅威の存在はアマチュア選手にもいる。馬場だ。175.3cmの身長から放つ平均飛距離270ヤードのドライバーショットは、5月のブリヂストンレディスでも披露し、同組選手をあ然とさせた。そのうえで、馬場にはキレのあるアイアンショット、秀逸のアプローチ、勝負強いパッティングがある。そして、快挙を果たした岩井と同様に「見られて注目されているほうが力を発揮できる」と公言している。そんな心技体を結集し、全米女子アマチュア選手権のマッチプレー決勝は、相手のモネ・チャンに9ホールを残す11アンド9で圧勝。国内ツアーには、9月の住友生命Vitalityレディス東海クラシックから参戦するが、いきなり優勝争いに加わることもあるだろう。それだけでなく、今後、日本女子ゴルフの歴史を全て塗り替えていくポテンシャルも感じさせている。

この状況下、稲見や現在のトップ選手がどんなプレーを見せていくのか。米女子ツアーを主戦場にする畑岡奈紗、笹生優花、古江彩佳、渋野日向子も、後輩たちの勢いを感じつつ、それぞれが進化を目指している。かつての韓国勢に似てきた群雄割拠の時代。日本女子ゴルフ界は今、希望に満ちている。

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