週末の過ごし方
復活V目指す25歳の永井花奈、
怖い物知らずのルーキーをうらやまなくなった理由。
2022.10.14
国内女子ゴルフツアーは、今季も若手が活躍している。スタンレーレディスホンダまでの31戦中22戦で、1998年度生まれ「黄金世代」以下の選手が優勝。8月のNEC軽井沢72ゴルフトーナメントからはツアールーキーが勝ちはじめ、20歳の岩井千怜が2連勝、9月には19歳の川崎春花、尾関彩美悠が優勝。その流れのなか「黄金世代」前の25歳、永井花奈が存在感を見せている。アマチュア時代から注目されたエリートゴルファーは、年下選手に追い越されてきた現実を受け止めながら再生。勝利を渇望している。
スタンレーレディスホンダ最終日。永井は、復活優勝への執念を見せた。首位から3打差の4位からスタートし、8番パー5までに3バーディーを奪い、小祝さくら、上田桃子をとらえて首位に立った。9番パー4をボギーにするも、15番パー4、16番パー3を連続バーディー。この時点でも小祝、菅沼菜々、西郷真央と並んで首位。17番パー4では第1打を大きく左に曲げるも、隣の18番パー5から2オンに成功してパーをセーブした。そして、最終18番パー5では、第3打をピン2.5メートルに。気持ち込めて放ったバーディーパットは、カップ右を通り過ぎた。
優勝は17番パー4でバーディーを奪い、混戦を抜けた小祝の手に渡った。永井は悔しさを押し殺しながら言った。
「惜しかったです。でも、ここまで来られたのは、自分を褒めてあげたいなと思います」
永井は6歳でゴルフを始め、中学時代から各大会で優勝を重ねた。高校時代はナショナルチームに入り、高2の17歳で出場した2014年日本女子オープンは3位。ローアマのタイトルを獲得した。高校卒業後に初受験した16年プロテストではトップ合格。17年10月、樋口久子 三菱電機レディスでツアー初優勝を飾った。
同年は「黄金世代」の勝 みなみ、新垣比菜、小祝らがテストに合格したばかり。アマ時代に16年日本女子オープンを制し、プロとして17年同大会も制した畑岡奈紗は別格だったが、渋野日向子、原 英莉花は合格できず、ツアーに出場できる状況になかった。同世代選手の台頭は18年、19年で、1学年上の永井は、文字どおり「期待の星」だった。
翌18年シーズンも上位争いを続け、10度のトップ10入りで賞金ランキング22位。19年シーズンは5度のトップ10入りで同36位だった。だが、勝利には届かなかった。20―21年シーズンには「黄金世代」の1学年下、稲見萌寧(99年度生まれ)が8勝を飾り、その下の古江彩佳、西村優菜、吉田優利ら「プラチナ世代」(00年度生まれ)、笹生優花、西郷真央、山下美夢有ら「新世紀世代」(01年度生まれ)が席巻し、永井は賞金ランキング70位でシード落ちとなった。
厳しい現実だった。復活を期した永井は、21年秋には前コーチとの契約を解消し、青山 充コーチに師事した。速くなっていたスイングテンポ、ボールを見すぎることを見直した。今年5月には、持ち球のドローをフェードに変更。シーズン中のスイング改造にはリスクを伴うが、前進するために取り組んだという。予選落ちを喫すると、日曜日は試合中継を見て研究。「優勝争いをする選手は(ミスを)誘うピン位置でも狙ってくる」と思い、より攻めの意識を高めたという。
自身を磨くなか、ルーキーたちの「勢い」も冷静に受け止めている。スタンレーレディスホンダ第2日を終えると、「私がルーキーのときより、技術もあって勢いもあるから優勝できるのかなと思うんですけど、そこはもう戻れないものと思っています」と言った。そのうえで「怖く思ってしまって、打てなくなったショットもどんどん蓄積されているのはしようがない。若い子たちは『何も怖くなくて、いいな』ではなく、今はそれを他人事のように見ています。そういうことを乗り越えて、また優勝争いだったり、優勝をできるように頑張りたいなと思います」と言った。
ゴルフは、「失敗」が「成功」よりも強く記憶に残る側面がある。ルーキーの頃、強気で打てたショット、パットが、ミスの蓄積で手や体が思うように動かなくなったりもする。永井は勝利から遠ざかった5年間で、そういったことも経験しつつ、年下選手の活躍も目の当たりにしてきた。だからこそ、「今は短縮でも何でもいいから優勝したいです」と言った。初優勝時は最終日が荒天で中止。短縮競技になったことで、「今度は3日間、4日間のプレーで完全燃焼の優勝をします」と話していたが、もう、そんなこだわりは捨て去った。幸い、今季は5度のトップ10入り、住友生命Vitalityレディス東海クラシック4位、スタンレーレディスホンダ2位などで、来季のシード復帰を確定させている。より、アグレッシブにプレーできる今、永井は「今度こそ」の思いで頂点を目指す。