特別インタビュー

フレンチの巨匠、アラン・デュカス氏に聞く、
食文化から考えるソーシャルグッドな未来。

2022.11.16

フレンチの巨匠、アラン・デュカス氏に聞く、<br>食文化から考えるソーシャルグッドな未来。
東京・青山にある「ブノワ」にて、約3年ぶりに来日したフレンチの巨匠アラン・デュカス氏。

インタビュー会場である、東京・青山の「ブノワ」に到着すると、フレンチの巨匠は、ひと皿ずつメニューの試食をおこなっていた。氏がプロデュースを手がけるレストランは、自ら責任をもってテイスティングをし、味のチェックをする。今回、コロナ禍を経て、約3年ぶりの来日を果たしたアラン・デュカス氏。モナコ、ロンドンの三つ星をはじめ、世界中にレストランを展開する彼もまた、パンデミックによって世界を飛び回るワークスタイルから一転、フランス国内にとどまることを余儀なくされた。

「ロックダウンがいつ終わるのかが見えず、それでも絶対に動いていなければいけないと思っていたので、仕事は止めませんでした。たとえば、『ル・ショコラ・アラン・デュカス』に関する新しいプロジェクトについての準備や、2020年には京都・嵐山で『ムニ アラン デュカス』を遠隔でオープン。2021年はパリで新しいコンセプトのベジタリアンレストランもスタートしました。パンデミック前から長いあいだ準備していた日本酒(七賢 アラン・デュカス スパークリング サケ)も、ZOOM会議や発表会もオンラインでおこない、来日できないなかで発売までこぎつけました。レストラン業界は厳しいと言われていましたが、逆境でも歩みを止めずにとにかく前に進む。振り返ると、パンデミックがあったことで良いアイデアが湧き、より質の良いコンセプトがつくれたのではないかと感じています」

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デュカス氏は長い間、地球環境へ配慮した食材探しを通し、テロワールや自然と向き合ってきた。その一例が、肉をまったく出さず、持続可能な魚や穀物、野菜を中心にした三つ星レストランの提案。フランス料理界に大きな話題を呼んだソーシャルグッドな食のスタイルは、コロナ禍を経た今、世界的なの潮流になりつつあるのではないかと考察する。

「フレンチでありながら、健康にも環境にもやさしい植物性である、ということがこれまで以上に求められているように思います。私自身、どこで誰が生産している野菜なのかを重視し、常に良い素材を探し、知ることに力を注いでいます。面白いことにフランスでは一時期、野菜の種類が減っていたのですが、最近昔ながらの野菜を増やそうという動きが盛んです。エコなライフスタイルや、地球を守ることって、頭に入っていても、なかなか生活習慣を変えるのは難しいし、あまりよくわからないという人もいるかもしれません。マインドセットができている人が多いからこそ、このような食や農業の潮流からも、自然回帰の流れが少しずつ、進んでいくのかもしれません」

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Photo by Pierre Monetta

そんなデュカス氏の食材への審美眼と、パリの老舗レストランのエスプリが融合したブノワ。フランスのオーセンティックなビストロ料理に旬の食材を採り入れたモダンなメニューが、「ブノワ」や「ブノワ 京都」で楽しむことができる。

「ブノワのシェフがとても素晴らしく、フランスの伝統的な料理でありながら、ちょうどいいモダンなタッチをり入れている。フレンチの伝統的な料理はもう完成していますが、伝統に縛られていたら世界に遅れをとってしまう。伝統を理解しながらも、少しずつモダンに変えていくというところがブノワの良いところ。日本の皆さまにも、伝統的なビストロと日本の旬の素材を組み合わせた料理を楽しんでいただけるのではないかと思います」と話す。

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常に好奇心が尽きないデュカス氏。最後に、彼の好奇心は今、どんなことに向いているのかを尋ねると、10月にフランスで発売された著書について少し語ってくれた。

「新著『Une vie de goûts et de passions(味とパッションな人生)』では、今までやってきたシェフとしての人生のことを主にまとめていますが、今後やりたいことがまだまだたくさんあって、そのことについて常に調べていたいほど。好奇心に終わりはありません。新たに挑戦したいことも本に書いています。日本でまたサイン会ができる日がきましたら、みなさんにお知らせしたいです」

探究心と好奇心が尽きないフレンチの巨匠から、今後も目が離せない。

<BENOIT クリスマスディナー>
2022年12月23日(金)~25日(日)
ディナー17:00~23:00(L.O. 21:00)
※予約必須/2名様より予約受付中
金額:12月23日 ¥25,000(税サ込)、24・25日 28,000(税サ込)
内容:アミューズブーシュ、フォアグラのコンフィ 柑橘のコンディマン、帆立貝のポワレ ウニ風味 彩り野菜のアンサンブル、オマール海老とパイとキノコ ビスクソース、和牛フィレのロースト じゃがいものフォンダン 黒トリュフソース、ル・ショコラ・アラン・デュカスのショコラを使ったビュッシュ・ド・ノエル ブノワ風

ブノワ(BENOIT)
東京都渋谷区神宮前5-51-8 ラ・ポルト青山10階
03-6419-4181
www.benoit-tokyo.com
ランチ11:30〜15:30(L.O.14:00)
ディナー17:30〜22:30(L.O.20:30)
年中無休(年末年始を除く)

Photograph:Masahiro Shimazaki
Interview &Text:Ai Yoshida

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