お酒
貴島明日香さんと行く、ニューノーマル時代の“一人飲み”案内。
第2回 チェアリング
2022.11.09
誰かに気兼ねすることなく、のんびりとお酒をたしなめる“一人飲み”。何を注文しようが、何軒ハシゴしようが構わない自分だけの世界は、黙食にも有用とあって時流にかなっています。そこで、一人つつましく飲酒できる都内のお店やスポットを、お酒が大好きと語るモデルおよび女優の貴島明日香さんを誘って一緒に巡るとしましょう。
連載第2回は、本企画の案内役を務める酒場ライターのパリッコさんが提唱し、今や雑誌、テレビなどでも話題の“ゆる飲み”アクティビティ「チェアリング」に挑戦します。
そもそも「チェアリング」とは何か? パリッコさんと、「酒の穴」という飲酒ユニットを組むライターのスズキナオさんのふたりが始めた遊びで、「アウトドア用の椅子を持って屋外へ行き、公園や水辺などの好きな場所に置いて、そこでひととき、お酒を飲んだりリラックスして過ごす行為」(『つつまし酒』[光文社]より)のこと。椅子(チェアー)に「〜している」という意味の“ing”を掛け合わせた造語で、ハイキングやトレッキングなどのアウトドアっぽいイメージから名付けられました。
このあえて何も足さない、何も引かない、ミニマルテクノ的な戯れを体験すべく今回訪れたのは、杉並区にある和田堀公園。広大な敷地の中で、四方を緑地に囲まれた池のほとりという絶好のポジションに椅子を下ろした貴島さん。プラカップに入った冷たいハイボールを、喉の音が聞こえそうなほどゴクゴクとおいしそうに飲み始めます。
「実はアウトドアにはほとんど縁がないのですが、こうやって外の空気を吸いながら飲むお酒の味は本当に格別ですね」
最近はモデル業に加えて、ドラマやバラエティー番組出演などテレビで見ない日はないほど活躍の幅を広げる彼女。撮影前日も深夜2時近くまでW杯特番の生放送に出演し、この日も午前中から撮影というハードスケジュールでしたが、大好きなお酒の力を借りて徐々にリラックスしていく様子が見てとれます。
今回、初体験となるチェアリングについても、「トランプとか本を持ち込んでも楽しいかも」と言う貴島さんに対して、「そうそう。チェアリングに決まった定義やルールはないので、他人の迷惑にならない範囲で自分の好きなことをすればいいと思いますよ」と、メンターとして心構えを伝えるパリッコさん。氏によると、キャンプやバーベキューといったアウトドアに寄りすぎないことを意識し、おつまみも現地付近で手に入る手軽なものが望ましいとのこと。その結果、たどり着いた最適解がシウマイ、海苔巻き、サンドイッチとあって、この日も近所で購入したサンドイッチをつまみにお酒を楽しみます。
また、屋外ということもあり、友達同士で行ってもソーシャルディスタンスを保てるのは時勢柄、うれしいポイント。何より、圧倒的なハードルの低さとその奥にある無限の楽しみ方こそ、チェアリングの醍醐味(だいごみ)と言えるでしょう。
眼前に広がる美しい自然や、じかに体に感じるそよ風や日差しの心地よさ、そして土の感触や地面との近さは、心身をじんわりと解きほぐす癒やし効果も。遠くで子どもたちの遊び声が響き渡る牧歌的なシチュエーションも手伝ってか、初対面となるふたりの会話も自然と弾みます。
貴島さんの地元でもある神戸のご当地グルメ、味噌ダレ餃子が大好きだと語るパリッコさん。貴島さんも「おいしいですよね! 私も帰省した際に時間があるとフラっとひとりで行って、必ず餃子とお酒を頼むんです」と、プライベートでの意外な素顔を教えてくれました。
思わず、「おひとりでどこでも行けるタイプですか?」と尋ねると、「ひとり焼肉やヒトカラだって全然行けますよ。ただ、バーとかスナックはまだ挑戦したことがないので、今度ひとりで行ってみたいなと思っているんです」
そのフットワーク軽めの行動力も含めて、お酒に関してはもはや有段者の佇まいすら感じさせます。近い将来、スナックで名物ママと丁々発止のやりとりを繰り広げたり、デンモク(電子目次本)片手にカラオケを歌い上げる貴島さんの姿を見かけることがあるかもしれません。
〈貴島明日香(きじま・あすか)〉
1996年2月15日生まれ。兵庫県出身。高校在学時にモデル活動をスタートし、神戸コレクションやガールズアワードなどで活躍。2017年に『ZIP!』(日本テレビ)の第7代お天気キャスターに就任すると、ORICON NEWSの「好きなお天気キャスターランキング」で1位を獲得。2022年3月に同番組を卒業するまでおよそ5年間勤め上げ、歴代在任最長記録を更新する。現在は、『non-no』(集英社)で専属モデルを務める傍ら、ドラマ出演やABEMA公式アナウンサーとして活動するなど、多方面で活躍。ゲーム配信や愛猫家としての素顔を見ることができる自身のYouTubeチャンネル『あすかさんち。』は、登録者数45万人を誇る。
〈パリッコ〉
1978年東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター、他。2000年代後半より、お酒と酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌やWEBサイト、テレビ番組などさまざまな媒体で活躍。著書に『酒場っ子』『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(共にスタンド・ブックス)、『晩酌わくわく!アイデアレシピ』(ele-king books)など多数。最新刊となるスズキナオ氏との共著『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』(スタンド・ブックス)が現在、好評発売中。
〈訪れた場所〉
和田堀公園
上流の白山前橋から下流の武蔵野橋まで、善福寺川にかかる12の橋にまたがった大型公園。約26万㎡(東京ドーム約5個分)という広大な敷地には、2つの競技場と野球場、杉並区博物館、バーベキュー広場などの施設が設けられている。今回、チェアリングを行った和田堀池は、都内ではあまり見かけることのない珍しい野鳥がすんでおり、バードウォッチングを楽しむこともできる。
東京都杉並区大宮1・2丁目、成田東1・2丁目、成田西1丁目、堀ノ内1・2丁目、松ノ木1丁目
TEL:03-3313-4247(善福寺川緑地サービスセンター)
開園日:常時開園
入場料:無料(一部有料施設あり)
※サービスセンターおよび各施設は年末年始は休業となります。
※各施設の営業時間等はサービスセンターへお問い合わせください。
〈パリッコのここがおすすめ〉
「特に公園の中心にある『和田堀池』周辺はチェアリングのベストスポット。静かにゆらめく水面や、そこに反射した日差しがゆらゆらと木々に映る様子は、忙しい日常を忘れさせてくれます」
Photograph:Satoru Tada(Rooster)
Styling / Hair & Make-up:Yusuke Hashimoto(TRAPEZISTE)
Text:Tetsuya Sato