週末の過ごし方

ファッション業界の課題を解決する日本の知恵とは?
山下徹也×山本晃弘 スペシャル対談[後編]

2022.12.02

写真・図版
ifs未来研究所 所長代行 山下徹也氏(写真右)、アエラスタイルマガジン エグゼクティブエディター 山本晃弘(写真左)

SDGs=サステイナブル・デベロップメント・ゴールズは、これからの世界が目指す旗印となっている。だが、環境への取り組みは単なる数値達成で終わるものではない。同時にカーボンフリーなどの技術的な施策にとどまらない。あらゆる産業のなかで環境負荷が2番目に高いと指摘されるファッション業界は、どこまで課題に向き合っているのか。アエラスタイルマガジン エグゼクティブエディター山本晃弘が、さまざまな課題をifs未来研究所の山下徹也氏と語り合う

<<前編はこちらから

天然素材の意外な弱点。より大きな環境負荷になる

山本 ファッション業界では素材が環境に与える負荷も指摘されています。こちらはどうでしょう。

山下 過剰在庫は量ですが、素材は質の問題となります。こちらも確かに大きいですが、素材にもいくつか分かれます。たとえば植物由来のコットンなどの繊維、石油由来の合成繊維、それから動物由来のウール、レザーなどですね。

山本 われわれメディア側は天然のものがいいと薦めてきましたが、コットンなどは、製造段階で出る大量の水など環境負荷の高さが指摘されています。

山下 素材には、さまざま背景があります。たとえばオーガニックコットンが使う水の量は普通のコットンの10分の1で済むので、世界全体で採り入れれば水不足の問題はかなり解決します。また、オーガニックの認証には労働環境も考慮されますから、児童労働の課題にもインパクトがあります。

山本 合成繊維はどうでしょう? 石油が元ということで問題視されやすいですが……。

山下 逆にリサイクルしやすいメリットがあります。ファイバー・トゥ・ファイバー、つまり繊維をそのまま加工して別のものにする水平リサイクルが可能ですから。

山本 負荷をかけるのは最初の製造時のみで、後はリサイクルで対応できるということですね。

山下 素材は進化していきますから、今は水溶性で生分解できる合繊が注目されています。むしろ天然素材と合繊などの混紡のほうが技術的に素材の分離が難しいため、リサイクルの採算性をとれないのが現状です。

山本 ウールやレザーはいかがでしょう? 動物のゲップから排出されるメタンガスが地球温暖化に影響を及ぼすと言われます。

山下 ウールについては、荒れた地で羊を飼うシルボパスチャー(林間放牧)だと、排出されるメタンガスが少ないという研究結果がありますし、人工的に排出量を減らす研究が進んでいます。

山本 メタンガスを出す量自体を減らすという考えなんですね。

山下 最近はサステイナブル以上に、リジェネラティブ(※2)という考え方が注目されています。環境再生と訳されますが、持続すること以上に、より良くしようとする姿勢を意味します。アウトドアブランドのパタゴニア(※3)がそのキーワードを使っていますね。

山本 パタゴニアは、商品のリペアにも力を入れています。

山下 所有することがゴールではない。買ってから体験が始まるという考え方から、アフターサービスにも力を入れています。

山本 買い物に行って、「本当にその商品が必要ですか」と言われたこともあります(笑)。

山下 「利益ではなく、自然を守ることが目的」と言い切っています。また面白いのが、社員自らがユーザーであること。実際に自社製品を着用し、そこで感じたことを商品づくりに生かしている。買ってからどう役に立つかを常に考えているからですね。

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