週末の過ごし方
命と食を学ぶ旅。「星のや富士」の
ソーシャルグッドなジビエ狩猟体験ツアー。
2023.01.06
社会によりよい取り組みを行うソーシャルグッドなホテルを、トラベルエディター伊澤慶一が紹介。今回は河口湖を望む丘陵に立つ、日本初のグランピングリゾート「星のや富士」へ。クラウドテラスで大自然を満喫した翌日、ジビエの狩猟・解体現場を見学する「命と食を学ぶ狩猟体験ツアー」に参加。地元の猟師と共に、富士山麓の森へと向かった。
※本記事には狩猟の様子の画像を掲載しています。
星のや富士が提唱する「グランピング(グラマラスなキャンピング)」は、私が想像していた以上に本格的だった。敷地の広さはおよそ6ヘクタールで、これは東京ドームの面積よりも大きい。キャビンと呼ばれる客室棟からウッドデッキが何層にも重なるクラウドテラスまでは斜面を階段で上っていくのだが、その高低差は約100mにも及ぶ。息を切らせながら上がると、香ばしい香りと共に焚(た)き火の爆(は)ぜる音が出迎えてくれて、ちょっとしたトレッキングのような達成感さえある。
赤松の森に囲まれたクラウドテラスでは、好みのウッドチップを選んで季節の食材を燻製に仕上げたり、焚き火で豆を焙煎し煮出すようにコーヒーを抽出したり、木漏れ日の中で柔らかな布に包まれてストレッチをしたり、さまざまなアクティビティを体験できる。不思議なもので、自然を身近に感じながらだと、どれもが非常においしく、心地よく感じられる。「五感が研ぎ澄まされる」という表現も、これだけ素晴らしい自然環境を目の前にしたら決して大げさではないだろう。
アウトドア体験に興味はあるが、道具をそろえたり準備したりするのは面倒という私のような人間にとっても、ここではグランピングマスターと呼ばれるスタッフがお膳立てから片付けまで至れり尽くせりサポートしてくれるからありがたい。夜になると出現する「焚き火BAR」で、満天の星を眺めながら味わったワインやウイスキーも最高だった。ついつい飲みすぎてしまっても、焚き火の後始末を心配する必要もないのだから。「なんてグラマラス!」。その語源どおり、ここは魅力に満ちたキャンプがかなう、究極に快適なリゾートなのである。
そんな星のや富士には、数ある星野リゾートのホテルアクティビティのなかで「最も尖っている」とうわさされるものが存在する。毎年秋から冬にかけて開催される「命と食を学ぶ狩猟体験ツアー」だ。これは地元の猟師と共に、本栖湖周辺の森で罠(わな)を使用したジビエ猟に同行。野生動物をその場で仕留め、ナイフでさばく一連の工程を見学するというものだ。2日目の朝、ホテルまで迎えに来てくれた猟師の古屋永輔さんと共に、私は生まれて初めて狩猟の現場へと出発した。
山梨県内では毎年11月になるとニホンジカやイノシシの狩猟が解禁される。ジビエの季節の到来である。(エサの少なくなる)冬に備えて栄養を蓄えはじめた野生動物は、この時期が最も脂肪分が豊富になり、文字通り“脂が乗った”状態になるのだという。
※次ページから狩猟の様子の画像を掲載しています。ご注意ください。