週末の過ごし方

ピリピリから相互リスペクトに……、
20年間で激変した国内女子ゴルフツアーの雰囲気。

2023.01.13

ピリピリから相互リスペクトに……、<br> 20年間で激変した国内女子ゴルフツアーの雰囲気。
上田桃子(左)と稲見萌寧(右)(写真:スポニチ/アフロ)

2023年に入り、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)会員のツアープロたちは、開幕試合のダイキンオーキッドレディス(3月2日~5日、沖縄・琉球GC)に向け、調整を進めている。今月中旬からは、シード選手の多くが国内外の温暖な地域で合宿に入る。そして、2月下旬に沖縄入り。ここからは、互いをリスペクトし、高め合う転戦生活となる。そこに年齢の壁はなし。国内女子ツアーでの人間関係と雰囲気は、20年前とは大きく変わっている。

1月3日、JLPGAの公式インスタグラムには、34歳の菊地絵理香が登場した。JLPGA関係者から「2022年、プライベートをいちばん一緒に過ごした選手は」と問われ、彼女は言った。

「吉田優利ちゃんです」

すると、22歳の吉田がピョンピョンと跳ねながら登場し、菊地の横でピースサイン。「今週も一緒にごはん食べた」と言い、くっついてみせた。菊地は「やだ~」と言いつつも、うれしそうに「なついてくるんですよ。あんまり、私になついてくれる選手はいなくて、唯一のレアものです」とし、二人はワチャワチャ感を出しつづけた。

そんな“年の差仲良しペア”はほかにもいる。33歳の金田久美子と25歳の脇元 華で、二人はそろってサウナーだ。ツアー転戦中は、なるべくサウナのあるホテルを探し、見つからなければ銭湯へと赴くという。金田は昨年10月末、樋口久子 三菱電機レディスでツアー史上最長ブランクとなる11年189日ぶりの優勝。この試合の初日を終えた後も、脇元と“整って”いた。

「銭湯に行って、サウナに入って、スッキリしてきました。何かフワ~ンとするのが気持ち良くて、疲れが取れて、昨日もすっと寝られましたね。私は8~10分(サウナに)入って、水風呂を1~2分、あとは外気浴をポケーっと気の済むままです。でも、華ちゃんは我慢して、サウナにいたがるんです。『あと1分、あと1分』って。でも、私はそこまで我慢できないので、サウナの中で言い争いになります(笑)」

社交的で“後輩力”のある脇元は、上田桃子、木戸 愛、菊地らほかの30代選手とも親しく、インスタグラムには一緒に撮ったほほ笑ましい写真をアップしている。

コース上でも、ベテランと若手の交流は頻繁に見られる。若手がベテランの技に関心を持ち、アドバイスを求める姿はもちろんのこと、ベテランが若手にアプローチ、パットのコツを聞き出そうとする場面もある。例えば、45歳で元賞金女王の大山志保は、2020-2021年賞金女王で23歳の稲見萌寧のことを「尊敬しています。スイングもパッティングも好きですし、歩き方もかっこいい」と公言。自身も元賞金女王だが、22歳下の選手から学んでいるのだ。その潔さは、ほかのベテラン勢に好影響を与え、上田、菊地、藤田さいき、テレサ・ルーらが、「今の若い選手は本当にうまい」と実感を込めて言うようになった。

この状況について、30代半ばで競技から離れたプロは「20年前では考えられないことです」と言う。当時は宮里 藍、横峯さくら、諸見里しのぶ、上田ら10代選手が台頭。若手がツアーを席巻する流れを作った時期だった。しかし、30代、40代選手の存在感はすさまじく、同プロは「一緒の組になっても最初にあいさつをした後は、ずっと言葉を交わしてくれない。そんな緊張感の中、『マークの位置がズレてるよ』と怒られたりもしました。正直、怖かったです」と振り返る。それだけ、ベテラン勢がピリピリしていたのだ。

時は流れ、国内女子ツアーの雰囲気は大きく変わった。昨年は8月に高校2年生の馬場咲希が全米女子アマチュア選手権を日本人選手としては37年ぶりに制し、ツアーにも参戦。一時的にフィーバー状態になったが、会場ではプロたちが「おめでとう」「すごいね」と声を掛け、馬場の緊張を和らげていた。そして、馬場も含めて多くの選手が日没まで、練習を続けていた。

認め合い、支え合い、競い合う……この“いい雰囲気”が続けば、ツアーのレベルはさらに上がることだろう。


>>衝撃の西郷真央「+35」“ゴルフの怖さ”を知る選手たちは、オフも練習の日々。

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