週末の過ごし方

真冬の非日常。
奥入瀬渓流ホテルで過ごす、現代のぜいたく

2023.01.27

1050_【奥入瀬渓流ホテル】氷瀑ライトアップツアー

雪景色の奥入瀬は、都会暮らしの旅人を高ぶらせる。深雪と氷が織りなす白銀の景観は、この地で名高い新緑と紅葉に劣らない。その幻想的な美に浸る旅を、ここでは紹介したい。

向かったのは、星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル。十和田八幡平国立公園を流れる奥入瀬渓流沿いに立つ、唯一のリゾートホテルだ。掲げるコンセプトは「渓流スローライフ」で、文字どおり渓流を眺めながら過ごすゆったりとした時間が、都会暮らしの疲れを洗い流してくれる。

1050_【奥入瀬渓流ホテル】冬の滞在イメージ(2)
ロビーに据えられた大暖炉「森の神話」。作者は故・岡本太郎。

今回のお目当ては「氷瀑」。この時期(12月中旬~3月中旬)は、冬季限定の「氷瀑ライトアップツアー」が行われ、参加すれば冒頭の写真のような神秘的な景色を拝むことができる。

こちらのツアーは、2018年から市政と奥入瀬渓流ホテルが中心となった官民連携体制で運営をスタート。それまでは、あまりの雪深さで観光客が減少し、ホテルを閉鎖していたところを、発想の転換で自然環境に新たな価値を付加。グッドデザイン賞やジャパン・ツーリズム・アワードを受賞するほどの、名実ともにヒットコンテンツへと育った。

  • 1050_【奥入瀬渓流ホテル】-馬門岩
    明るい時間帯の氷瀑も圧巻。
  • 1050_【奥入瀬渓流ホテル】苔氷
    雪や氷をルーペでのぞけば、その神秘に驚く。

白銀の世界の美しさは日中もしかり。レンタルのスノーブーツに履き替え、ネイチャーガイドの案内で巡る「冬の奥入瀬氷さんぽ」では、苔を閉じ込め連なる氷や、繊細な華を思わせる水しぶきの氷、つららに雪がかぶさったクラゲ氷などを間近で見て触れることが可能。それはまるで、唯一無二のアートを探すトレジャーハント。ルーペ越しにのぞく繊細なミクロの世界が、無邪気な童心と知的な好奇心をくすぐる。

  • 1050_【奥入瀬渓流ホテル】渓流スイートルーム-
    渓流スイートルームのコンセプトは「渓流と過ごす、ごほうび」。
  • 1050_【奥入瀬渓流ホテル】氷瀑の湯_女湯-夜
    冬季限定の露天風呂「氷瀑の湯」も自慢。

ホテルの施設やサービスも秀逸だ。昨年末に誕生した「渓流スイートルーム」は、120㎡を誇るラグジュアリーな一室。渓流を見下ろす広々とした客室温泉と、自然との調和が工夫されたこだわりの意匠の数々が、旅人を魅惑の「おこもり」へといざなう。

  • 1050_【奥入瀬渓流ホテル】冬の渓流アペロ
    食事は渓流沿いの半円型のドームから。当然、温かく快適。
  • 1050_【奥入瀬渓流ホテル】Sonore_ワインセラー
    取り揃えるワインのラインナップは、通もうなる。

フレンチレストラン「Sonore(ソノール)」にも驚かされる。渓流沿いの「かまくら(ドーム)」でのアペリティフから始まり、室内に移ってからの複雑なペアリングの数々。組み合わせは、料理とワインだけではなく、使われる素材、環境と音、そのすべてに意外性と心地のいい調和が宿る。

1050_【奥入瀬渓流ホテル】フレンチレストラン「Sonore」_2022-23年冬_鮪_ペアリング
冬の限定メニューから「鮪」。鮪、いぶりがっこ、ゆり根などが絶妙に調和する。

料理へのこだわりを尋ねるも、料理長の岡 亮佑は自身の料理に対しては存外に口数が少ない。ただ、それは雄弁なひと皿ひと皿に自信がある表れともとれる。ソムリエでもあり、料飲支配人を務める鈴木良隆が少しだけ補足する。

「ここでは“非日常”を楽しんでいただきたい」

その言葉に、真冬の奥入瀬渓流ホテルのすべてを垣間見た。2月上旬は、氷瀑が最も大きく見応えのある時期と聞く。ぜいたくな時間はこれからだ。

星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル
青森県十和田市大字奥瀬字栃久保231
050-3134-8094(9:30〜18:00)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/oirasekeiryu/

Text:AERA STYLE MAGAZINE

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