週末の過ごし方
『ダーク/DARK』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #40
2023.01.26
「現在・過去・未来の区別は幻想に過ぎない――」
A・アインシュタインの言葉を引用した意味を知るのに、そう時間はかからなかった。
Netflixにて配信中のドイツ発ドラマ『DARK』は、難解すぎるがゆえに離脱者が多いことで有名な新感覚SFミステリードラマ。しかし、すべて観終えた者から言わせてもらえば、とてももったいない……。完結したシーズン3が配信された後には賞賛の嵐、世界中の批評家たちの評価もかなり高いスコアがでている。
2019年、原子力発電所のある小さな町ヴィンデンでは、子どもの連続失踪事件が起き、住人たちは不安に包まれていた。そしてまた一人、原子力発電所の近くの森で子どもが行方不明に。果たしてこれは事件なのか? 事故なのか? そんななか町の住人たちは、33年前に起きた似たような事件を思い出すのだった。
地元警察と共に行方不明者を捜索していると、身元不明の少年の遺体が。この町では何かが起きている。ことの真相に迫るうちに、4つの家族の秘密が次々と明かされてゆく……。
このドラマが難解と言われている理由は、4つの家族の物語が3世代にわたり描かれているため、相関図が手元にないと混乱してしまいそうという点だ。しかも作中、いつの時代の描写なのかわからない不可解な映像たちは“伏線”なのだから、少しの見落としも許されない。じつに緊張感のある作品なのだ。
なにより、ユーモアがない。くすりと笑える場面など、ひとつも出てこない。タイトルどおり“ダーク”な世界観が永遠に続くのだ。しかしそれは美しくもある。冷たい空気を感じ取れるような映像美は、息をのむ美しさ。そしてその世界観に“立体感”を生み出す美しい音楽に感動を覚える。