スーツ
礼服とスーツの違いがわからない人必見!
冠婚葬祭での礼服マナーと着こなし
2023.01.30
スーツは確かにフォーマルウェアですが、正式な礼服とは異なります。もともとは欧米の貴族社会でのドレスコードを機能的にカスタマイズし、使いやすくしたものが現在のビジネススーツです。
そのため、冠婚葬祭に立場がある状況で参加するのであれば、よりオーセンティックな礼服を着用するのがベターです。注意したいのが、この礼服にもさまざまな種類があるということ。間違ったものを着用すること自体、非礼となる可能性があります。
今回は正しい礼服の選び方をレクチャーいたします。
礼服とは? スーツを代わりに着るのはNG?
礼服とは儀礼、すなわち儀式・礼服に着る服装です。現代の私たちの暮らしでは、結婚式や葬式の冠婚葬祭、入学式、式典などのハレの場で着るフォーマルウェアを指します。同じスーツとはいえ、ビジネスで着ることはありません。
礼服(喪服)とダークスーツの違いは色・生地・デザイン
同じ濃色ですが、ダークスーツが礼服に使われるわけではありません。シルエットや発色によって少なからず違いがあります。間違えて失礼にあたらないよう、注意しましょう。
礼服とダークスーツの色の違い
冠婚葬祭に使われる礼服は黒が基本となります。特にお葬式の場合、ビジネス用のダークスーツで代用は出来ますが、色がミックスされた生地、また光沢のあるものは適していません。お葬式では弔意を示すことが主目的となるため、より濃い黒の礼服がマストです。
礼服とブラックスーツの生地の違い
お葬式のような厳粛な場では光沢のある生地はNG。礼服にはマットな生地が使われ、控えめな印象となっています。ビジネススーツには軽量さ、また強度を高めるためにポリエステルが含まれていることが多いですが、フォーマルな場での礼服では避けるべきです。同様の理由で、タキシードなどに使われる華やかなサテン地も向きません。
礼服とダークスーツのデザインの違い
礼服もサイズに合ったものを着るのが鉄則ですが、ビジネススーツに比べると圧倒的に着用の頻度は低く、また着る時期が長い傾向があります。そのため、ぴったり過ぎるサイズを着るのは避けたほうが無難です。体形の変化やシルエットの流行り廃りも考慮に入れ、余裕のあるデザインのものを選びましょう。また、ラペル、ベントなどのディテールにも違いがあります。
ジャケットのラペル
フォーマルの目安として、製法の跡をなるべく見せないことがあります。通常のスーツではラペルの縁に沿ったステッチの跡は残っていますが、これはドレスダウンの証左。礼服ではありません。また、シングルでもラペルの下襟の先が上を向いているピークドラペルが使われることがあります。ただこれはドレッシーな装いとなるため、葬祭で着ることはNGです。
ジャケットのベント(切れ込み)
ジャケットのセンターベント(切り込み)は馬に乗ることから生まれたと言われます。鞍に腰かけた際、裾が左右に分かれたほうがきれいに見えるのがその理由です。また左右に入るサイドベントは、剣を腰に差す際に便利なことからという説が有力です。どちらかが機能性が要求される現在のビジネススーツの大半にこのどちらかが入っています。一方、フォーマルウェアではノーベントが基本。機能以上に礼式が要求された名残です。
礼服はシーンと立場によって使い分けるのがマナー
礼服はただブラックスーツだけではありません。TPOに合わせてさまざまなヴァリエーションがあります。
お葬式での礼服
葬儀の喪服は光沢のないブラックスーツが基本です。いつ着る機会が訪れるかわかりませんから、社会人であれば夏・冬用を各一着そろえておきたいところ。それぞれウールですが、生地の厚さや裏地の有無といった違いがあります。
仕事関係の相手の葬儀に参列する際、仕事へ戻ることも考え、ビジネススーツでも許容されます。ただし、明るいトーンは避け、ダーク系を選んでください。一般的にネイビーよりグレーが好まれます。
モーニングコートは日中に着る最上位の制服【正礼装】
モーニングコートは乗馬用に前裾を大きく斜め後ろに切った形状で、上着のみを指します。カッタウェイフロックコートという呼び名もあります。もともと貴族の習慣だった朝の乗馬からそのまま宮廷に上がる際に着用されていたもので、昼間に着用する正装でした。
合わせるのは共地のベスト(慶事はグレーも可)、縞柄のスラックス、ウィングカラーのドレスシャツ、シルバーの無地か縞柄のアスコットタイ、手袋を持つのが正しい着こなしとなります。
冠婚葬祭でもこれが正式なフォーマルウェアです。ただし、着用するのは主賓と親族、つまり結婚式であれば新郎新婦の父親、葬式では喪主に限られています。訪問する側は控えるようにしましょう。
モーニングコートに次ぐディレクターズスーツ【準礼装】
日中の準礼装はディレクターズスーツとなります。スーツと言いつつジャケットスタイルになり、組み合わせはモーニングコートに近いですが、ジャケットは通常のウエスト位置のタイプ、ネクタイを着用します。スラックスはハウンドトゥースやグレンチェックでも可。結婚式であれば新郎新婦の親族、喪服では近親の葬儀参列者が着用します。
友人・知人としての参列の場合はダークスーツ【略礼装(略礼服)】
近親者でなければ、ダークスーツが適しています。ただしビジネススーツとは異なり、襟にステッチが入らない、ノーベントのジャケットになります。さらにスラックスはシングル、または踵にかけて斜めに長くなったモーニングカットが正式。靴と靴下は黒になります。
結婚式とお葬式、シーン別の着こなし方
上記は冠婚葬祭ともかなりフォーマルな場合の着こなしです。結婚式や葬儀・告別式への列席も、友人同士や仕事関係の付き合いではここまで厳密でなくても大丈夫です。以下により応用しやすい着こなしを紹介します。
結婚式
結婚式の主役は、当然ながら新郎新婦。参列する場合、ふたりより目立たないコーディネートを選ぶのは常識です。スーツの色は濃く控えめに、明るい色柄のタイやチーフで華やかな色柄を選んで祝福の意を表すのがおすすめ。タイはよくシルバーグレーが使われます。
葬儀・告別式
スーツは光沢のない黒の上下が鉄則。ジャケットスタイルはNGです。シャツは白無地、タイや靴下は黒に統一してください。靴はストレートチップやプレーントゥでエナメル、金具などの光沢感のある素材、パーツは避けましょう。もちろん、パンツの裾はシングルです。
お通夜
平日であれば、お通夜は職場から向かうことも多いでしょう。また喪服だと「事前に故人の逝去に備えて準備していたのでは」という誤解を受けることを避けるため、通常のビジネススーツでも差し支えありません。ただし、目立つチェックやストライプのものは自粛し、濃いネイビーやグレーの無地で。シャツ、タイ、靴は喪服に準じます。社会人であれば、不意の弔事に備えて黒のタイをロッカーに常備しておくように心がけてください。
礼服(喪服)のクリーニング料金相場と頻度
礼服を着る機会は少ないですから、そのまましまうと虫食いやカビの危険があります。着用後、折を見て適度にクリーニングに出すようにしましょう。
スーツは上下合わせて1,500~2,500円程度、ジャケット単品であれば900~1,000円程度、
スラックスは700~800円程度が目安となります。礼服はテカリが出ないよう、機械より手仕上げがメインとなるため、ビジネススーツの約1.5倍~2倍程度の料金設定となるようです。
礼服(喪服)とスーツは違いに注意して着こなそう
通夜、告別式とも葬儀は厳粛なシチュエーションです。目立たないことを念頭に、哀悼の意を示さなければなりません。結婚指輪以外のアクセサリーのほか、殺生を連想させる革の小物もなるべく避けるのがマナーです。
Text:Mitsuhide Sako(KATANA)