週末の過ごし方

アンデス発・全く新しい料理の
アプローチを東京で体験
【センスの因数分解】

2023.02.15

アンデス発・全く新しい料理の<br>アプローチを東京で体験<br>【センスの因数分解】
MAZのフェルナンデスシェフ(左)とCentralのマルティネスシェフ(右)。

地球のほぼ裏側にあるペルーという国に、あなたはどんなイメージを持っていますか? アンデス山脈? アマゾン? インカ文明? 実は昨今、ペルーはレストランジャーナリズムの世界で最も注目されている国なのです。

そのムーブメントを牽引(けんいん)するレストランが、首都・リマにある『Central(セントラル)』です。シェフでありディレクターのヴィルヒリオ・マルティネスは2009年にオープンさせ、22年に世界のベストレストラン50で第2位、同21年の南米のベストレストラン50では1位を獲得。独創的な料理アプローチにより、ペルー料理は全く新しい価値を生み出したと言っていいでしょう。

その革新的アプローチが、地球の裏側ではなく、東京の真ん中で体感できる場所が生まれました。

レストラン『MAZ(マス)』は、Centralのマルティネスシェフが2年以上の準備期間を経て千代田区紀尾井町にオープンさせたレストラン。ここでは、彼がディレクターを務めるCentralと同じアプローチで、ペルーの土地が持つ多様性をコース料理として味わえるのです。

ではその独特のアプローチとはどんなものなのでしょうか。

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ペルーのクスコ高地の海抜3500mにもラボとレストランが。

「ペルーは、大西洋、アンデス山脈そしてアマゾンなどがあり、非常に多様な気候風土がある国です。特に標高は、海底、海岸そして6000メートルを超す山から大河とあらゆるレベルを内包しています。ヴィルヒリオは、大地の恵みを料理へと昇華する際、このペルーならではと言える海抜の差に注目したのです」

そう語るのは、マルティネスシェフの右腕としてCentralで研鑽(けんさん)を積んだMAZのサンティアゴ・フェルナンデスヘッドシェフ。彼はクシャクシャに丸めた紙を少し広げ、そこにできた凹凸を使ってこう説明してくれました。

「ペルーという国は、この紙のように非常に起伏が激しく、それぞれで生育する生き物が全く異なります。ヴィルヒリオや私たちは、研究者と共に各地でリサーチを行い、生態系を調査しました。そしてその海抜に生息する動植物ごとに料理を展開することで、非常に多様な気候風土を持つペルーという国を表現しているのです。ですからMAZのコース料理自体が、ペルーの起伏と気候、生態系を表していることになります」

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メニューには料理名や食材と海抜が書かれ、その地で採れる作物が何か、どんな生態であるか思いをはせる一助に。写真はアンデス原産のジャガイモを蒸し焼きにした「アンデスの森」海抜3260m。
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    タコ、スピルナなどの「海霧」海抜−14m、デザートの「アマゾニア」。
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    海抜750mで採れるチュンチョカカオを使用。

南米の雄・Centralのアプローチを東京で表現するMAZは、大地や海、川を面ではなく立体、つまり3Dでとらえポイントごとに料理にします。そうすることで地球の裏側にいるゲストにも、ペルーという土地が立体的に浮き上がってくるというわけです。

今の時代、世界的に影響力を持つレストランは、社会性と無縁ではありません。その筆頭と言えるのが、作物に乏しいと言われていたデンマークのコペンハーゲンにて、地元食材を使った料理の開発をしたnomaでしょう。このレストランの出現は、食のイメージの希薄だったコペンハーゲンの経済を変えたと言われており、〝ノマノミクス〟なる言葉も生まれました。一方ペルーでは、比較的暮らしやすい海岸エリアにはヨーロッパからの移民が、厳しい気候で限られた作物以外は採れにくいアンデス山脈エリアには先住民族が多く暮らし、双方の貧富の差は開き、分断されていたと言います。しかしCentralの料理アプローチが、この分断をつなげるきっかけとなり、アンデスの食材を使用することで低所得だった先住民族を救う一助にもなっているそうです。

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マス 東京都千代田区紀尾井町1-3 東京ガーデンテラス紀尾井町3F
プリミティブな器は、Central同様リマの作家によるもの。木目が印象的なテーブルが並ぶ店内は、数寄屋大工の巨匠・中村外二が手掛けた。和とペルーが見事に融合している。

新しい解釈を料理に用いるだけでなく、社会の仕組みを考え改善する機会をもたらすレストラン。今、その世界観を味わえるのがリマと、東京なのです。

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「アエラスタイルマガジンVOL.53 AUTUMN / WINTER 2022」より転載

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